BIS論壇No.492『コロンビア大学セミナー』中川十郎25.81
恒例の米コロンビア大学ビジネススクール・日本経済経営研究所夏季講座が7月28日東京都内で開催された。今回は17回目の研究会だったが、国内外から100名以上が参加、盛況だった。筆者は2002~3年度、訪問学者、在外客員研究員として本研究所に留学。
国際ビジネス、マーケテイング、ビジネスインテリジェンスを研究。以来、毎年この夏季セミナーに参加。当時の留学仲間と旧交を温めている。
本年の主題は『激動する世界経済における日本の役割』~「金融」「安全保障」「資本市場」~で活発な討論が行われ、得るところ大なるものがあった。
開会あいさつでデイビッド・ワインシュタイン所長は中國に対する日米連携の現状、及び1990年代の世界経済での2位の日本は自動車の自主規制などで対応。今回も25%の高関税が15%に削減され、日米貿易の動向をWatchすることが肝要との見解を表明された。
基調講演は加藤勝信 財務大臣兼金融担当大臣が行い、若い人のNISAへの投資が活発なること。2040年にむけてGDP1000兆円を目指すと表明。今後は日本の人口減少社会での対応が肝心と力説された。15%への日米関税合意はJABIC,ほか政府金融機関も活用し、投資、融資にも注力すると発言在り。パネル討論では「日米およびグローバル資本市場の課題」、「AI」、「ブロックチェイン」、「暗号資産」から読み説くデジタル経済の最前線と題し、今川拓郎・総務省審議官、松本大・マネックスグループ会長、Digital Assetユバル・ルーズ最高経営責任者などの討論が有益であった。また小池百合子・東京都知事からは今後、国連機関の東京都誘致。ベンチャー企業誘致にも力を注ぎたいとの話があった。
筆者が興味を持つた対談『国際貿易の将来』に関してはメリット・ジェイノ-コロンビア大学国際関係公共政策大学院名誉学院長、兵頭誠之・住友商事会長、デビッド・ワインシュタイン・コロンビア大学日本経済経営研究所所長などの熱のこもった討論がおこなわれた。鉄鋼、アルミ、銅などへの50%の高関税の影響。米国の中国からの輸入が2017年 24%、24年14%、25年5か月で⒑%に縮小しつつあり、中國は第三国経由の対米輸出に注力している実情も注意すべきである。対米貿易については中国、EU,メキシコ、カナダ、日本、韓国、ベトナムの動向をWatchすべきこと。特に中国、EU, カナダ、メキシコ、アジアの対米貿易動向を注目すことが肝要との意見が大勢を占めた。WTO上級委員も務めたことのあるジエイノー教授は長期的な視点からのSupply Chainの変容、政治経済的な観点からの考究、グローバリゼーションの変容について注目することが肝要と強調された。
なを7月29日にIMF発表の最新世界経済見通しでは25年の世界全体の成長は3.0%。
米国1.9%、EU1.0%、中國4.8%、好調のインドは6.4%。これに対し日本は最低の0.7%でトランプの自動車高関税などで日本の25年の成長率のさらなる悪化が憂慮される次第だ。