2018/03/09発行
世界の最新トレンドとビジネスチャンス
第103回
過去最大の宇宙ゴミが地上に落下予定!2018年3月は要注意!
(後編)
浜田和幸
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「天宮1号」の重さは8.5トンほど。宇宙船としては小型な部類に入る。過去、ロシアのMIRが2001年に落下したが、重さは120トンであった。しかし、これはロシアが完全にコントロールし、安全な海域に落下誘導させた。また、アメリカのNASAが打ち上げたSKYLABは74トンで一部制御不能となり1979年に落下した。しかし、こちらもアメリカがなんとか誘導に漕ぎ着け、被害をもたらすことはなかった。
間近に迫った「天宮1号」は確かにロシアやアメリカの宇宙船と比べれば8.5トンの重さで軽い。それでも、地上10階建てほどの高さである。ということは850キロから3400キロ程度の機体の一部が地上に衝突するという計算になる。確かに人に当たる確率は少ないだろうが、必ず落下してくるわけで、不幸な2人目にならない保証はない。その意味では、来る3月から4月は特に注意する必要があるだろう。東京のような大都市に落下すれば、その被害は甚大となる。うかうか花見に興じていられない。
しかも、「天空1号」が使っているロケット燃料は「ヒドラジン」と呼ばれており、人体には極めて有害と言われる危険な代物である。なぜなら、これは発がん物質に他ならないからだ。アメリカのNASAをはじめ、各国政府の宇宙関連機関では「万が一、落下物を発見した場合には、絶対に近寄らないこと。そして噴霧物を吸わないこと」といった注意勧告を発令している。こうした有害物質を燃料として使っているため、地上からの迎撃ミサイルで打ち落とすことはできない。ヒドラジンを拡散させることになるからだ。秒速7キロという猛スピードで落下することも迎撃を難しくしている。
これまで過去50年間に各国が打ち上げたロケットや衛星の数は膨大で、現在、地球の軌道上には約50万個と目される「宇宙ゴミ」がさまよっている。こうした宇宙ゴミは年間500個近くが地球に落下しているのである。ということは毎日1個ないし2個のロケットの破片が落下している計算になる。これほど危険なゴミはない。
幸いなことに、大半は大気圏に再突入する際に燃え尽きている。大きなものは地上からの誘導で南太平洋の「宇宙ゴミの墓場」と称される「ポイント・ネモ」に落下するようになっている。周辺には人の住む島もないため安全な場所とされる。というのも、宇宙開発に関する国際条約で、ロケットや衛星を打ち上げた国が責任をもって、耐用年数を過ぎた自国の飛行物体を安全な場所へ落下誘導させることを義務付けられているからだ。アメリカもロシアもこの墓場を活用していることは言うまでもない。
その点、今回の「天宮1号」のケースは例外的と言えよう。しかし、今後も宇宙開発が加速することを念頭に置けば、巨大な宇宙船や宇宙ステーションの使用後の処理をどうするかは大きな課題となるだろう。欧米の宇宙関連企業では宇宙空間での老朽化した飛行隊の回収ビジネスも視野に入れ始めた。何しろ衛星は高額であり、希少金属も多く使われている。回収すれば、「都市鉱山」と同じで、新たなリサイクル産業になりうる。そのために巨大なネットを使って回収する方法が試験的に行われているほど。とはいえ、まだ実用化には至っていない。その意味では、GPS用の通信衛星を筆頭に、地球の軌道は渋滞が加速する一方で、交通整理と不要物の回収が欠かせない時代に突入したといえるだろう。
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