第59回
独裁者3代目キム・ジョンウンの命運:迫りくる火山大噴火の予兆(前編)
浜田和幸
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────────────────────────────── 北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)には様々なミステリーが付きまとっている。その多くは根拠がはっきりしないものである。
とはいえ、北朝鮮に関する情報はなかなか外部からはうかがい知れないため、噂に尾ひれが付きやすい。
検証するのが難しいため、世界のメディアが好き勝手に誇張した独裁的指導者の姿を撒き散らしているのが現実である。
いわば、言った者勝ち、に近い状態が続いている。
例えば、自分の伯父のあたるチャン・ソンテクが中国との貿易で私腹を肥やしていたことが判明したため、彼とその一族をマシンガンで皆殺しにしたとか、生きたまま犬の餌食にした、といった話がまことしやかに伝えられたものである。
しかし、これは噂に過ぎない。
大きく報道されたチャン・ソンテクの処刑に関するおどろおどろしい出来事は中国のイエローペーパーが冗談として掲載したものだった。
こうした冗談やウソも繰り返し報道されると、世界中に「何をするか分からない恐ろしい独裁者」として、キム・ジョンウンのイメージが定着するのも致し方ないだろう。
当の本人にしても、若さゆえにそうした近寄りがたいイメージもプラスと受け止めているのかも知れない。
いずれにしても、キム・ジョンウンは世界の国家指導者の中で
最年少の地位を占めていることは間違いないだろう。
その生年月日すらはっきりとは証明されていない。
何しろ、北朝鮮にとっては、自国の最高指導者の生年月日すら極秘扱いされてきているのである。なにもキム・ジョンウンが例外というわけではない。
金日成が「建国の父」と言われているが、その出生地も生年月日も巷間言われているものとは実際は大きな違いがあるといのが定説だ。同様に、キム・ジョンウンの父親であった金正日に関しても同じことが言われてきた。
しかし、2017年時点で33歳と目されているキム・ジョンウンは、国内の圧倒的な支持を得るために、自らの祖父に当たる金日成の立ち振る舞いから、容姿にいたるまで、見事なまでに吸収している。
体重は100キロをゆうに超しているが、時に杖を使いながらゆっくりと歩く姿、独特の髪型、そして声色。あらゆる身体的特徴を自らの祖父に近づけようとしているのである。
これはすべて神格化されている金日成の威光を借りて統治しようとする努力の一環に他ならない。
元々、スイスの国際スクールに学んだ経験があるため、キム・ジョンウンは祖父や父親と比べれば外の世界を直接体験しているため、西側の国々との間で交渉の余地が多分にあると期待されていたものである。
スイスの学生時代には、スキーをはじめ北朝鮮ではほとんど知られていないスポーツや文化、そして食事にも馴染んでいたと言われている。
キム・ジョンウンが建設した北朝鮮のスキー場にはヨーロッパのスキー客が多数押し掛けている。
また、幼いころから皇帝のような特殊な環境で育てられたため、自らがリスクを取ることには躊躇をしないという性格が身についているようだ。
国家の最高指導者に就任してからも核開発やミサイルの発射実験など世界の批判を浴びながらも一向に動じる気配を見せていない。
北朝鮮は世界で最も貧しい国の1つとされている。にもかかわらず、キム・ジョンウン自身は美食家で知られている。
世界中から高価な食べ物やアルコール類を調達し、自国産のタバコのヘビースモーカーでもある。
20代から、糖尿や肥満の傾向が明らかに見てとれるが、これは何とかして祖父、金日成の最盛期の体格に近づけようとする努力のたまものとの見方もある。
また、キム・ジョンウンは、父親とはうって変わって周りの人々に対し、何かにつけて冗談を飛ばすことも有名だ。
自分で自分のことを「何も知らない未経験な人間だ」ということを、手振り身振りで大げさに表現する。
そうすることによって、国民の間で、あまり敬愛されていなかった父親と比べ、はるかに国民受けが勝っていると思われる。
そんなキム・ジョンウンはマレーシアの空港で異母兄の金正男を猛毒のVXガスを使って殺したとの報道が世界を震撼とさせたものである。
その真相は依然として闇の中であるが、度重なるミサイル発射や核開発疑惑の影響で、アメリカも堪忍袋の緒が切れたとばかり、「あらゆる手段を駆使して北朝鮮を罰する」と強硬な姿勢を見せている。
最悪の場合はキム・ジョンウンの首を狙ったドローン攻撃も検討しているようだ。
そうしたアメリカの強硬姿勢に対して、北朝鮮は「在日米軍基地に核ミサイルを撃ち込む」とか「アメリカ本土も焦土と化す」と、相変わらず言葉のミサイルを連発している。
どこかで、冗談が本気になる可能性も否定できない。
それこそが、北朝鮮の最大の武器なのだから。
ところで、北朝鮮にとって深刻な自然災害の恐れが迫っていることはあまり知られていない。
何かと言えば、火山の噴火である。北朝鮮と中国の国境にまたがる白頭山(中国名・長白山、高さ2750メートル)の状況は深刻度を増している。
3000万年もの間、噴火を繰り返している白頭山である。
歴史をひもとけば、約1100年前の平安時代に起こった過去最大の噴火の際には、北海道から東北地方に5~6センチの火山灰が降り注ぎ、わが国の農業は壊滅的被害を被った。
なにしろ、現在の分析では、当時の噴火は過去2000年間で世界最大級だったと見なされているほどだ。
そんな歴史をもつ白頭山で近年、群発地震が立て続きに起きている。また、地元では山麓でのヘビやカエルの異常な行動も話題となっているが、北朝鮮、中国、そして韓国の住民の間では「いつ大噴火が起きるのか」と不安の声が高まる一方である。
実は、2012年12月、現地を視察した故金正日総書記は噴火の可能性に言及し、「間もなく大噴火が起きる。備えを怠るな」と警告を発していた。
世界各国の地震、火山学者の間でも関心と警戒が高まっていることは論を待たない。
たとえば、中国の劉嘉麒教授は2005年の「北東アジア火山国際学術シンポジウム」において発表した論文で、「白頭山はアジア大陸周縁部に位置しており、東アジアのプレートとの関連で、太平洋プレートが大陸境界部分で沈降する際に、白頭山地域が隆起させられて火山の噴火が起きる」と解説。
また、東北大学の谷口宏充名誉教授によれば、「白頭山が近い将来、東日本大震災に関連して噴火する可能性がある。その可能性は2019年までに68%、2032年までに99%」とのこと。都市部では火山灰が1センチでも積もれば、陸上交通は麻痺するはずだ。となれば、白頭山の噴火は北朝鮮の最高指導者の警告を待つまでもなく、「今そこにある危機」といっても過言ではない。
以下、次号「第60回」(4月7日発行)に続く!
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