┌┬───────────────────────────2019年9月
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│└┼┐ 資産家のための資産税ニュース 第93号
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■□ 賃貸不動産購入の相続税対策で納税者敗訴 ■□
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多額の借入金で評価圧縮率の高い賃貸不動産を購入し、相続税をゼロにしたことについて、課税庁が「圧縮」を認めず更正処分をした事案で、8月27日に東京地裁で納税者が敗訴しました。
【1.事案の概要】
・賃貸不動産Aを相続開始3年5か月前に購入(購入金額8.3憶円、相続税評価通達2億円)
・賃貸不動産Bを相続開始2年6か月前に購入(購入金額5.5憶円、相続税評価通達1.3憶円)
→相続開始9か月後に第三者へ5.1憶円で売却
・賃貸不動産購入時の被相続人の年齢はそれぞれ90歳、91歳
・いずれも多額の借入れにより取得していたため、相続税計算上10憶円を債務控除
・相続税対策のための借入れである旨が、銀行の貸出稟議書にも記載されてい
た
・その他の財産が6億円あったが、賃貸不動産の評価圧縮と債務控除により
相続税ゼロで申告
・課税庁は、相続税評価通達による評価を認めず更正処分 (H28.4)
・納税者は不服申し立てをするも、国税不服審判所で棄却 (H29.5)
・東京地裁でも納税者敗訴 (今回の判決)
【2.なぜ相続税評価通達が使えない?】
相続で取得した財産は、相続税の申告にあたって時価で評価することと相続税法では定められていますが、時価鑑定を出すのは納税者も大変ですし、検証する課税庁側も大変です。
そこで、別途評価通達が定められており、土地は路線価、建物は固定資産税評価額で形式的に評価することになっています。
ところが、同じ評価通達の中に「通達通りに評価することが著しく不適当と
認められるときは、国税庁長官の指示を受けて評価する」旨の定めがあり、
課税庁はこの「著しく不適当」を根拠に更正処分をし、東京地裁もこれを認めました。
【3.学ぶべきこと】
本件は、評価圧縮率が高い賃貸不動産を、近い将来相続が予想される時期に、多額の借入により取得したなど、一連の行為が相続税減少を企図して実行されたもので、著しく不適当と判断する特別の事情があると認定されました。相続直後に買値と近似値で売却していたことも影響していると思われます。
相続時の不動産評価は通常、路線価や固定資産税評価額を用いて計算しますが、相続税法の原則はあくまで時価、という点を意識した相続対策が必要です。
※参考資料:週刊税務通信3570号
(担当:税理士 鈴木 淳)
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