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        ソムリエの追言 ⑦
        「ワインの保存 その2」 
        ________________________________________
        ワインの保存と振動 
        振動によりワインがゆれると中のワインがゆれ、静止状態よりも酸素がワインに溶け込んで酸化を促進し、成熟を早めます。 成熟を早めると言う事は、より酸化が促進されているという事です。 
        
        ワインを長期保存しようと思ったら、あまり酸化しないようにしてあげれば良い訳です。 ワインは酸化するとお酢に近い状態になります。お酢は水より軽いから、ワインより上に来ます。そうなると、一番上の部分はお酢でふたをされた状態になる訳です。 
        
        お水に少量の油をまぜてしばらくほうって置くと上の方に油があがってきますが、同じ様な状態になります。 本当に薄い膜ですがふたをされた状態になり、その分ワインが空気にふれないので、ワインの酸化が遅くなります。 
        
        ワイナリーにあるような振動の無い地下ワインセラーで静かに休ませておいたワインが先に出荷されたワインよりも若々しく感じる時があるのは、振動がほとんど無く、薄いお酢の層でしっかりとふたをされたため、ワインの酸化が進まなかったためなのかも知れません。 
        
        振動があるとそのお酢に近い成分がワインに混ざっているためふたができず、より酸化しやすい状態になります。場所が無い事や、コルクの乾燥があるので、横にして保管するのが当たり前になっていますが、十分な湿度の場所で立てて保管した方が赤ワインの場合、澱も沈むので、良い保管だと思います。 
        ボトルを開けてからもお酢の層ができている事を実感できるお酒があります。 
        ワインバーであまり注文する人がいない、長期熟成のポートワインやマデイラを頼んだ時に一杯目があまり状態が良くない時があります。上の方にお酢の層ができてしまっているためです。 
        
        そのおかげでワインの酸化が遅くなっていたりするのですが、
        それを飲んでも美味しくはありません。 
        
        ワインバーで、長期熟成して美味しそうなポートやマデイラを注文して酸っぱく感じた時に2杯目を頼むとひょっとすると味が違っているかもしれません。 
        
        ワインの輸送
        保存する時だけでなく、買ってきたワインを飲む時も気をつけなければいけません。
        

         
        ワインショップで自分で買ってきたワインを大事に運んできた時は良いのですが、ネットショッピングで買って宅急便屋さんが運んできてくれたワインは、数日休ませてあげた方が美味しく飲めます。 
        
        長旅をさせたワインは休ませた方が美味しく飲めると言われていますが、それは振動によってワインが疲れてしまっているからです。 
        
        長旅と言うほどの距離ではありませんが、ワインの保管庫から運ばれてきたワインは多かれ少なかれ疲れています。 
        
        例えば、毎年11月第3木曜日に解禁されるボジョレー・ヌーボー、解禁その日に飲むより、数日休ませてから飲んだ方が美味しく飲めます。ガメイ種のブドウを使ったフルーティーな味わいが楽しめるワインですが、飛行機でゆられて日本にやってきて、しかも車に乗せられて運ばれてくるため、いかにも疲れたトゲトゲとした味わいで甘さをあまり感じません。
        
        数日後に飲むとそのトゲトゲが無くなってワインの甘さを感じるようになります。解禁当日に開けたワインの残りを次の日に飲んでも美味しくなっている時があります。 若いワインでも疲れるんです。それが少し熟成されたワインであれば、なおさらだと思います。 
        
        光(紫外線)
        ワインの大敵とされているものに、光もあります。
        女性は紫外線を気にされている方が多いと思いますが、お肌へのダメージ以上にワインにとって紫外線は大敵です。 
        
        少し難しい話になりますがワインが紫外線にあたるとビタミンや有機酸の分解が進み、酸化していきます。何よりも光があたる事によって、ワイン自体が温まってしまいます。
        
        特に紫外線をそのまま通してしまう透明なボトルは要注意です。
        色のついたワインボトルは少しでも紫外線の影響を受けないように色がついています。
        ワインを熟成させる必要が無い時は透明なボトルが選ばれているようです。
        熟成をさせる必要が無いワインであれば、紫外線の影響を受ける前にワインが消費されてしまうので、色のついたボトルを使う必要がありません。 
        
        具体的に紫外線でワインの味がどう変わるかと言うと、前回に引き続きビールの話になってしまいますが、少し古くなってしまった瓶ビール飲んだ事はありませんか。瓶ビールも紫外線にあたってもできるだけ悪くならないように、色のついたボトルを使っています。(日本のビールは100%ですし、輸入ビールも透明なボトルはほとんどありません) 
        
        日光にさらされたビールは変に酸っぱくなって、ぼけたリンゴの様な味になってしまっています。屋外で放置されて太陽にさらされたビールは賞味期限が切れる前に飲んでも美味しくありません。ワインでも同じ事がおきてしまいます。 
        
        日本酒も実は
        日本が世界に誇る日本酒も紫外線にはかなり弱いです。
        デパートに行くと多くのワインがセラーで厳重そうに管理されていますが、日本酒はほとんど表に出しっぱなしになっています。
        日本酒はワインよりも傷みやすいのですが、あまりその事実は知られていません。 
        
        ワインの原料はブドウで、日本酒の原料はお米です。ブドウはフルーツでお米は穀物です。
        フルーツには酸味がありますが穀物には酸味がありません。 
        
        ワインが世界中で普及したのはブドウが世界中でつくられていたのはもちろんですが、酸味があることによって少なからず防腐作用があったことがあります。
        ワインのアルコール度数は13度ほどですが日本酒は15~16度位です。 
        ほんのわずかな違いですがとても重要で、日本酒は酸味が無いので、アルコール度数が高くないとあっという間に痛んでしまいます。保存するためには、そのアルコール度数まで上げる必要がありました。
        アルコール度数が高ければ保存に向いていますが、高すぎると味わいのバランスが壊れてしまいます。バランスの良い所が15度~16度だった訳です。
        
        ワインよりもアルコール度数を上げて保存する必要があった日本酒ですので、温度はもとより紫外線にも気をつけなければなりません。 日本酒を買う時は、是非きちんと管理された日本酒の保管庫がある酒屋さんで買う事をおすすめします。
        ワインよりもよっぽど気をつけなければなりません。 
        
        先週に引き続き長々とワインの保存について書かせていただきましたが、高級ワインの保存なら別ですが、数ヶ月程度のワインの保存では意外とそこまで難しく考える事はないのかも知れません。
        
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