ソムリエの追言 102
「日本のワインについて」
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今回はお客様から聞かれることも多い、
日本のワインの事について書かせていただきます。
【日本のワインづくりの歴史】
日本のワイン造りの歴史は明治になってからです。
明治政府になってからの新産業の1つとして始まりました。
意外かもしれませんが、日本のビール造りも同じ時期から行われており、それまで日本でお酒と言えば日本酒でしたが、1959年(昭和34)に出荷量でビールが日本酒を追い抜き、日本では100年と少しの歴史しかないビールが日本の国民酒の位置を占めています。
居酒屋さんでは定番の「とりあえずビール」も元々は日本酒の熱燗をつけるまで飲まれていたのが始まりだとか。
日本酒を熱燗で飲む習慣がなければ、ビールはここまでの国民酒にならなかったかもしれません。
【国内のワインの消費】
国内でワイン造りが始まりはしたものの普及せず、
飲みやすくワインに甘みを加えた甘味葡萄酒が普及していきました。「○○ポートワインです」今でこそあまり見なくなりましたが、
当時ワインと言えばこの事を言っていたのは驚きです。
意外なつながりですが、この「○○ポートワイン」を造った後の
ブドウの皮は国民的な炭酸ジュース「○ァンタ・グレープ」の原材料としても使われていました。
日本でワインが普及し始めたのは、東京オリンピック(1964年)の頃からと言われています。その頃から食生活が洋風化になってきたので、ワインの消費量が伸びてきました。その後1980年代後半の
ボジョレー・ヌーボーや、1995年に田崎真也さんが世界のソムリエ大会で1位に輝いた後の赤ワインブームがあり、今日に至っています。
それでも日本国内のワイン消費量は年間1人あたり、約3.7本と言われており、フランスの約50本に比べると、10分の1にも
及びません。イタリアが約45本、スペインが約30本ですので、ヨーロッパの国に比べて日本がいかに少ないかが分かります。
【日本ワインと国産ワイン?】
さて、「日本”の”ワイン」には「日本ワイン」と「国産ワイン」があります。一見同じに思えるこの2つですが、国産ブドウ100%を使用して国内で製造されたワインを「日本ワイン」、海外からブドウや濃縮した果汁を輸入して国内製造したワインを「国産ワイン」といいます。このように区別されたのは比較的最近の話です。
【日本で栽培しているブドウ品種】
例外はありますが、世界のブドウ生育地は北緯30~50度、南緯20~40度と言われています。日照量や気候、気温の関係で大体この範囲がブドウの栽培に適しているわけです。
北半球ですと、フランス、イタリア、スペイン、ドイツ、オーストリア、アメリカ、カナダ南部、中国、日本、南半球ですと、オーストラリア、ニュージーランド、アフリカ、アルゼンチン、チリなどがあてはまります。
日本地図を見ると北は北海道から南は 九州までこの範囲に入っていて、北海道から九州まで330以上のワイナリーを数えます(2019年4月時)。冬に北海道のワイナリーへ行くとあまりの雪深さに驚かされます。
以前ゴールデンウィーク前に北海道の友人のワイナリーを訪れた時にはまだ雪が残っており、友人は作業の遅れを心配していました。雪と寒さが厳しいワイン産地はドイツが有名ですが、近年では北海道も負けていないかもしれません。
明治時代、ワイン造りが始まったころ輸入されたブドウの苗木はヨーロッパの気候と違い、なかなか上手く栽培ができませんでした。
近年ではブドウ栽培の技術が進み、ヨーロッパ系のブドウ品種、
カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、シャルドネも多く栽培、
醸造されています。日本で栽培が成功しているヨーロッパ系の
ブドウ品種はなんといっても黒ブドウのメルローでしょうか。
長野県の塩尻ではヨーロッパのコンクールでも賞を取るワインがいくつもあります。長野県の塩尻は米どころとして、名をはせた地域です。元々は休耕田だった所にブドウの木を植えて栽培と醸造が上手くいったそうです。お米を植えるのは田んぼですが、田んぼのような土壌でメルローは良く育ちます。
雨が降った次の日に塩尻のワイナリーに行ってみてください。ぬかるんでいます。元々は田んぼだった所です。水はけがいいとは決して言えません。それまではブドウの木は水はけが良くないと育たないと思っていたので、当時の私には衝撃的な光景でした。
メルローの栽培に適している条件が整っていたので、長野県は今や世界に誇るワイン産地になりました。あまり知られていませんが、数年前のヨーロッパのワイン品評会では、フランスの農務省担当官が長野県の有名ワイナリーのメルローを試飲して、「今後のフランスの競争相手は、イタリアでもカリフォルニアでもなく、日本の長野だ」とコメントしています。
余談ですが、長野県の塩尻も山梨県の勝沼も、日本を代表するワイン産地ですが、ブドウ収穫の時期になるとその地域の小学校のクラスでは、自分の家のブドウが1番だと自慢大会が始まるらしいです。親の育てたブドウをクラスで自慢する、なんとも微笑ましい光景がブドウ産地では毎年繰り返されるらしいです。
【長野県原産地呼称管理制度】
長野県原産地呼称管理制度について皆様ご存知でしょうか。2002年に長野県では田中康夫さんが知事在任中、ヨーロッパの原産地呼称管理制度(より高い品質の農産物や農産物加工品のブランド認定制度)を見習って始まったのものです。
私は運良く呼称管理制度発足 後すぐに、長野県の主催する長野県産ワインの試飲会に参加する機会に恵まれました。
ヨーロッパのワインと比較しながらの試飲会だったのですが、どちらがヨーロッパのワインか間違えてしまいそうな出来の良さでした。中でもしっかりと樽を使って造られた「シャルドネ・バレルエイジング、2005年」はあまりの出来の良さに、フランス・ブルゴーニュの白ワインと間違えてしまいました。
【日本ワインのコストパフォーマンス】
コストパフォーマンスだけは決して良くありません。日本国内で造っていて輸入コストがかからないにもかかわらず、価格は輸入ワインの2倍から3倍と言われています。
日本ですと人件費や材料費が高いので仕方がないのかもしれません。
生産量も少なく、2018年度で国内市場におけるワインの流通量の構成比では日本ワインは4.6%。消費量がまだまだ少ない為、品質は高いものの希少で価格が少々お高い、と言ったところでしょうか。
しかしながら、国際的なコンクールで受賞をするような高品質日本ワインや、輸出量の増加など、前述の通り海外からの評価も高く、また大手メーカーや国も日本ワインの可能性に注目しており今後拡大の余地は大いに期待されています。
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