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        ソムリエの追言 103

         

        「ワインのスタイルを決める気候と雨」

         

        ________________________________________

         

        暑い日が続きますね。

         

         

        厳しい環境は人間にとっても、ブドウにとっても つらいです。

        ブドウも30℃以上では、光合成(こうごうせい)の働きが悪くなるようです。

        呼吸の方が多くなるようなんです。ちなみに 5℃以下では

        光合成がおこなわれないそうな。

         

        ところで、植物の活動のリズムは、我々とは違います。

        暦(こよみ)や時間なんて、人間だけのものですからね。

        光も活動リズムにとっては大事なんですが、

        根の成長、芽吹き、開花や実をつけるなど、

        そういった植物の成長に関わってくるのが温度・気温なんです。

        その気温は、各地の気候によって様々です。

        フランスでも、ボルドーとブルゴーニュでは、気候が違います。

         

        ご存知ボルドーは、大西洋のすぐ近く。

        この地は、海洋性気候の恩恵を受けています。

        海の温まりにくく、さめにくいといった水の特徴によって、

        昼と夜、季節ごとの寒暖(かんだん)の差が激しくありません。

        また、暖流(だんりゅう)の影響で、比較的、緯度(いど)が

        高い地域ながらもあまり寒くならないようです。

        大陸性気候のブルゴーニュ地方が、冬に氷点下になることを考えれば、ボルドーの海洋性気候は、ブドウの樹にとって過ごし易い気候・場所であるといえます。

        海洋性気候のもう一つの特徴は雨です。

         

        低気圧によって、雨が多い時期と、晴れ間の多い

        安定した時期とが、不定期にやってきます。

        そうは、いっても、年間の降水量は、東京や日本のワイン生産地よりも少ないです。

        また、夏から秋にかけての雨が少ないのも、ワイン作りにとって

        最適です。

         

        実はこの雨の降り方が、できあがるワインに影響を与えるんです。

         

         

        ボルドーでは、ご覧の通り、ブドウの生育期4月から9月末までの

        降水量がだいたい400mmくらいです。

        一方、同じブドウ カベルネ メルローも使うカリフォルニアは

        全くというほど雨が降りません。

        同じ6ヶ月で、なんと50~60mm! ボルドーの8分の1です。

        ワイナリーによっては、水分がたらなくて、水を補給する設備を

        用意しているところもあるくらいですから。

        日照量の多さと温度も手伝って、どんどん、果実の成分だけが 濃くなっていく。

        だからこそ、ワインにあれほどの、果実の凝縮感(ぎょうしゅくかん)が生まれるんですね。

         

        また、反対に日本の気候では、できあがるワインは、その対極で、

        どうしても 水っぽさを感じてしまうんですね。

        特に赤ワインです。

        この頃はどうなんでしょうか、品質が上がってきていると聞いてますが・・・。

         

        そんな意味では、ボルドーの海洋性気候がもたらす雨の恵みは

        ボルドーワインのエレガントさを造り出す、重要なエッセンスなんですね。

        長い歴史の中で気温、雨、土壌 を含めてその地に最適なブドウが 根付き、その魅力を発揮してきたのがボルドーワインです。

         

         

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