┌┬───────────────────────────2020年9月
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│└┼┐ 資産家のための資産税ニュース 第105号
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■□ 借入金で取得した賃貸用不動産の評価に総則6項の適用認める! ■□
(このコラムは45秒で読めます)
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【1.東京高裁の下した判断とは・・・】
今年6月24日、東京高等裁判所は、被相続人が亡くなる前に借入金で取得し
た賃貸用不動産の相続税評価額について、いわゆる総則6項を適用する判断を
下しました。
財産評価基本通達の定めに則った評価ではなく、国税庁長官の指示による
評価を認める一審の判決を維持し、納税者の控訴を棄却したのです。
【2、 事件の概要 】
生前、被相続人は銀行から約10億円の借り入れをし、賃貸用不動産を二つ
購入しました。それぞれ亡くなる3年5ヵ月前と2年6ヵ月前に購入したとのこと。
被相続人が亡くなった際、相続人はこの不動産二つを財産評価基本通達に
基づいて評価。さらに借入金で債務控除をとり、結果的に相続税ゼロで申告を
しました。
そして相続開始の9か月後には、このうち一つの不動産を売却して
います。
これに対し、税務当局が総則6項に基づく鑑定評価額で更正処分をしたことで
訴訟に発展することとなったのです。
【3、通達による評価額と鑑定評価額との大きな乖離】
ちなみに、本件不動産の通達による評価額と鑑定評価額とは、約4倍の開きが
あったそうです。
一審でも二審でも、通達に則って評価した場合の評価額と鑑定評価額とが
大きく乖離することを前提に、相続税が大きく減免されることを期待して、
借入金で不動産を購入するなどの本件の経緯にも着目して、総則6項の適用を
認めたものと考えられます。
二審では、納税者は一連の不動産の購入や売却は、事業を続けていくための
ものであり、租税回避の目的ではないと主張しました。
しかし、東京高裁は、あくまで通達評価額と鑑定評価額に著しい乖離が
あったから総則6項を適用するのであって、租税回避の意図の有無は関係ない、
としたのです。
【 4、財産の評価額とは・・・】
相続税申告においては、一つ一つの財産について評価額を付しますが、あれは
そもそも相続開始時点の「時価」を評価額としたいのです(相続税法22条)。
しかし、モノの時価って多様な側面や価値観があって難しい。
そこで一定のルールとして「財産評価基本通達」を作り、相続税申告にあたって
モノを評価するときは、このルールに則って評価してください、そうすればそれを時価としますよ、ということになっています。
しかし、 「財産評価基本通達」で評価することが著しく不適当と認められる
場合には、国税庁長官の指示を受けて評価することとされており、この規定を
総則6項といいます。
本件では、「財産評価基本通達」の定める評価方法で評価した価額を「時価」と
することは、租税負担の公平性を害すると認められ、総則6項の適用を認めた
とのことです。
【5、今後の展望】
この事件は、相続開始が平成24年、更正処分が平成28年ということで、
タワーマンションなどの相続税節税ブームが到来する中で起こったため、
大変注目を集めました。
一審、二審のこの判決は、行き過ぎた節税対策に警鐘を鳴らすものとなるでしょう。
(担当:税理士 井口 麻里子)
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