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        ソムリエの追言 69
        「栗がワインに一役買う?-パリの森は栗がたわわ」
        収穫の秋ー。 
        森で秋の収穫といえば、やはり栗!
        

        ご存知ですか?ネゴシアンなどのフランスのワイン仕入れ担当者は 
        前に飲んだワインの味を消すために 栗をポケットに忍ばせているんですよ。 
        あちらでワインのプロ達が使うテクニックです。 
        
        さてさて、フランス人もマロンや小ぶりの栗のシャンティは大好き!
        街頭では焼き栗の匂いが香ばしく 
         
        

        パティスリーのショーウインドーにはマロングラッセが並びます。 
        フランスでクリスマスのご近所へのプレゼントといえば チョコレートかマロングラッセ!
         
        

        エヴァンだってチョコレート屋なのに、 
        クリスマス前のショーウィンドーはマロングラッセ一色です。
        
        クレープにも塗る栗ペーストなどは 大きな缶詰に入って売っているほど。
        

        母親は栗の缶詰と間違えて買ってきたことが2度もありました。
        開けてびっくり!!栗ご飯のはずが、ペースト!?
        1キロもどうするの?栗きんとんにしても多すぎる。。。
        
        失敗談はさておき、これだけ栗好きのフランス人ですが、
        栗拾いという習慣はあまりないようです。 
        これがフランス人だからなのか 見栄っぱりパリジャンだからなのかは正直わかりません。
        パリ近郊には森が広がっているので 実は栗の木が沢山あります。
        ワイン用語でいうところのsous-bois(スーブワ)=森の下生えは、 晩秋の森を示すので、
        少々早いですが それに近い森の匂いがしますよ。 
        

        さて、日本人家族はこの季節の週末、一度は森の民と化します。 
        我が家の場合は、アパルトマンの前を流れるセーヌ川を挟んで 目の前に広がる森。
        パリの東にあるサンクルーの森がテリトリーでした。
        実は、ここは意外に知られていない穴場。 
        なぜならば、一応れっきとした公園だからです。
        
        ほとんど一山という広大な敷地ですが、 
        ヴェルサイユ宮殿の正門のような豪華な柵で
        公道としきられており、 ところどころに芝や宮廷風の彫刻があるところです。 
        まさか、そんな庭園内で 栗がゴロゴロなんてなかなか想像できないでしょう。 
         
        

        お城や庭園の奥に広がる森で遊ぶというのは、 フランスではよくある風景ですが、
        今一度振り返れば、なんとも贅沢で、 少女心には宮殿を庭に遊ぶお姫様気分です。 
        
        栗の森の中で、振り返れば、 
        ふとロココ調の彫刻に噴水があったり、
        森を出て開けた広場は ヴェルサイユと同じ庭園設計士ルノートルの庭園。
        そんなお城のような森で栗を頂戴するなんて、
        ちょっとした泥棒気分です。
        
        「東京じゃこんな贅沢、ただ(無料)で出来ないよね~」とか
        「日本でこれだけの栗、買ったらいくらかな~」など
        生意気なことを子供同士話し合ったりしたものです。
        姫のつもりがやはり庶民。 親の会話の鸚鵡返しなのですから。
        
        幼稚園児の妹も大切な戦闘員。 
        午後にのんびりと出かけ、
        栗の棘や、毬栗の中から時々にょろっとでてくる芋虫と戦いながら、
        2時間くらいで大量に拾います。 
        
        これが栗ご飯や、焼き栗になる~♪
        と思うとワクワクが止まりません。
        だいたい家族で5キロの収穫です。 
        
        さて、日本人学校の行事でも栗拾いは一大イベントです。
        こちらは、さすがにちゃんとした森で行います。
        向かうところはパリの南西に広がるムードンの森。
        (フランス語だと「ムドン」という発音)
        

        マニアックな話ですが、マリーアントワネットの長男の 
        ルイ・ジョゼフ・グザヴィエ・フランソワが
        ヴェルサイユから離れて 脊椎カリエスの療養をしていた場所といえば
        かの有名なマンガでイメージが伝わる淑女も多いのでは?
        
        さて、森には小学校1年生から中学校3年生までの
        全校生徒が大集合! お弁当タイムを挟んで、かなり長い時間
        もくもくと拾いつづける生徒達。 
        家族の期待を一身に背負って、 どの子供も一生懸命なのです。
        
        結果、子供でも3-4キロは確実に拾えます。 
        少なく見積もっても、各学年30人×9学年×4キロとして 1080キロ!!
        つまり1トンを超える栗が
        森から日本人の子供によって ただで持ち出されているのです!
        時価にしたら一体如何ほど? 栗のキロ単価を覚えていないのですが、1,000円だったら100万円です! 
        おそらく事務局がムードンの街に事前に申請しているんでしょうね。
        でないと立派な窃盗団ですもの!
        
        翌日の学校のお弁当は栗ご飯一色、
        黄色い秋色に染まります!
        
        日本より一足早く、 パリの街路樹のマロニエの紅葉も真っ盛り。
        一番パリらしい季節が秋ともいえます。
        
        たわわに実った栗のように
        皆さんにとっても実り多き秋になりますように。 
        
        焼いた栗には貴腐ワインもぴったり♪
        栗ご飯には白ワイン♪
        秋の夜長に栗とワインのマリアージュもぜひお試しください。
        
        

        サンクルーの森からセーヌ川越しに見える ブローニュビヤンクール市とパリのパノラマ 
        
        
        
        

        【 道上 雄峰 】
        幼年時代フランス・ボルドーで育つ。 
        当時日本のワインが余りにもコストパフォーマンスが悪く憤りを感じ、自身での輸入販売を開始。
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