ソムリエの追言 73
「なぜ、日本のワインは値段が高いの?」
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「やや、香りに青さを感じるのと、
酸味が果実味よりも、主張している部分がある」
「・・・ブドウは、カベルネ・ソーヴィニヨンだが、
産地はニュージーランドあたり?」
20年前、よく通っていたレストランへ ソムリエ試験学科合格祝いを兼ねて食事に行った夜。 その店のソムリエが 2次試験のブラインド・テスト用に用意してくれた赤ワイン。 サプライズのプレゼント、しかもブラインド・テイスティングとなったわけです。
残念ながら、その場では正解できませんでしたが、 銀のアルミホイルを剥がしてでてきたのは 「城の平 カベルネ・ソーヴィニヨン」! 1997年当時で既に¥10,000していた 高額ワインです。 味わいはというと、確かに品質の高さを感じる バランスのとれた味わいではありましたが、 色々な国々のワインを飲みはじめた時期で、 正直、優しすぎる味わい、物足りなさを感じてました。
今よりも、ワインのこと全然わかっていないのもあります。
「自分なら¥10,000出して、買えない、いや買わない」 と勝手に仕分けていました。
プレゼントでもらっておきながら、ホント失礼ですね。
国産ワインの品質が向上してきていると聞いて久しいです。 2002年の長野県や 山梨県甲州市の原産地呼称制度を取り入れはじめた動きもあり、 ホテルや高級レストランでも、国産ワインを取り扱いはじめていると聞いています。
でも、常に感じるのは、コスト・パフォーマンスの悪さ。
最近でこそ、 ¥1000を切る国産ワインらしきもの(?)が多くありますが、 まだまだその多くが、濃縮(のうしゅく)した原料ブドウを海外から輸入したものを使って日本国内で醸造しているものです。
(一昔前よりも、こういったやり方は減っているらしいですが)
純粋に、日本のブドウで、日本で醸造されたワインで 海外のワインの低価格に対抗できるものは少ないです。 輸入ワインには送料はもちろん関税がかかる。 なのに、輸入ワインの方が安い。 しかも、同程度の価格なら国産より質がよい。 これは、何故なんでしょうか。
まず、生産原価が高い。 人件費が高い。そして、土地が高い。 輸送費用も高い。 特に生産原価についてです。 数多くある大手ワイナリーも 実のところ、 ブドウ栽培からワインの生産まで 全部引き受けてやっているところは 少ない。 つまり、ブドウの栽培に限って見たら 契約しているブドウ栽培農家との取引が関わってくる。
【かつては、ワイナリーから農家へのブドウの支払が現金ではなく、 ワインだったそうです。
そう、現物支給!今はさすがにないと思いますが】
生食用のブドウの方が高く売れるため、 ワイン用のブドウを作るところが少ないのが現状です。 なにしろ、歴史的には、生食用のブドウが売れ残ったものを ワインにしていたという産地もあります。 結果、大手ワイナリーも原料としてのブドウを買い付ける価格が高くなる。
どうしても、ワインに仕上げる価格に反映されてしまうわけです。
多くのワイナリーはビジネスとして成り立つよう、生産を計画していきます。 つまり、造る量があらかじめ決まっているわけです。
ワインに関しては、1年に1回しか造れない。たとえ、その年の出来が良かったり、マスメディアに取り上げられ話題になって、売切れになっても急な増産はできません。
極端な話では、来年分は既に仕込まれているので、
倍増するなんてことも出来ないわけです。
一方で、天候などによって、ブドウの生育が悪い年もあります。 これはこれで、収量が少なくなるのと同時に、 悪い年はそれだけケアも必要となるのでコストが掛かります。
本当は、高く売りたいところですが、そうもいかないわけで・・・。
こういった、リスクマネジメントから大手でも増産に踏み込めない。
もっと売れれば、いや、拡大生産をしていけばコストも下がるのでしょうが。
一方、大手もふくめて、多くのワイナリーが今は、 収量を落とし、質を高めて好評価を得たいという方向性があります。
作る量が少なければ、その少ない量でワイナリーを賄っていかなければならないのでどうしても、価格は割高になっていきます。
国産の大手有名ワイナリーのトップ・ブランドの生産量は、1000本強。 このあたりのブランド化戦略も全体の価格上昇に影響がある気がします。 希少性によって、その価値を高める戦略も大事ですが、 広告宣伝ができる大手ワイナリーが、この戦略では拡大生産も望めるわけもなく、 国産ワインにスポットが当っているにも関わらず、生産量は一定のままです。
しばらくは、この現状が続くと思われます・・・。
【道上の追言】
もう既に8~9年に成りますでしょうか?
南アのワイナリーで、従業員の日当が10ドルを超えたと嘆いて居ました。
10ドル×25日だとしても月250ドル これだと日本のワイナリーはかないません
相当良い品質の物を作らない限りです。
葡萄園は1200ヘククタール、これではフランスの生産者も敵いません。
インド洋、大西洋からの風を受けると言う好立地でした。
【 道上 雄峰 】
幼年時代フランス・ボルドーで育つ。
当時日本のワインが余りにもコストパフォーマンスが悪く憤りを感じ、自身での輸入販売を開始。
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