北京から成田へ向かう飛行機の機内。期待と不安で緊張した面持ちで窓の外を眺めている劉暢の姿があった。
北京空港で見送ってくれた両親の姿が思い出される。頑張るんだぞ、頑張るんだぞ、そう言って送り出してくれた両親。決して裕福な訳ではないことを劉は知っている。
それなのに何とかお金を工面して、日本へと送り出してくれたのである。
そして劉暢は将来への期待を胸に成田へ降り立つのだった。
美人だが、まだどこかあどけなさが残る20代。
五十嵐が迎えに来ることになっていた。
しかしその肝心の五十嵐が見当たらない。
やがて入国ゲート前から人は消え、劉ひとりだけになってしまい、不安に目を潤ませる。