除たち中国からの留学生との交流を深めるにつれ、八百屋の商売そっちのけで中国人たちを支援し始める五十嵐。
そのせいで家庭がうまくいかなくなる。
フミと喧嘩になるといつだって五十嵐が言うのは正論である。
五十嵐の言っていること、やっていることは正しいのだ。
その正しさのせいで余計に家庭はギクシャクし始める。
それでも五十嵐は中国人留学生たちへの全力の支援を止めない。
手を抜くということを知らないのだ。
いよいよ追い詰められる五十嵐。
猶予も消え、万策が尽きる。
そして追い詰められているのは屈や劉も同じだった。
劉も何とかバイトを見つけなければと焦るのだが、日本語もまだそんなに喋れない。
バイトはなかなか見つからない。
そんな時に手数料を10万支払えばバイトを紹介するという日本人に騙されてしまう。
一方、屈はバイトを探している時に偶然街中で失踪した親友を見つける。
しかしその親友は以前の親友ではなくなっていた。
いかがわしい仲間とつるんで、雀荘に入り浸っていた。
劉が騙された、屈が親友を見つけた、という二人の話を聞いて、よし俺に任せとけ、と五十嵐は自分のことはそっちのけで外に飛び出してしまうのである。
まずは劉を騙した日本人の所へ行き、金を取り返す。
そして屈の親友がいるという雀荘へ乗り込むのだった。
貸した金が惜しいのではない。
そんな所で変な連中と付き合って流されていたら人生は取り返しのつかないことになってしまう、何とかしてやりたい一心だった。
雀荘で屈の親友は五十嵐に言う。五十嵐さんには感謝している、と。
しかしどうしようもない。
日本は金が掛かる。
しかしバイトは見つからない。
借金が増える。
借金を返す為に何でもするようになる。
すると日本語学校での単位が足りなくなり、退学になる。
退学になれば不法滞在になる。
かといってこのまま中国に帰ることも出来ない。
みんな好きでこうなった訳ではない、と。
五十嵐には返す言葉が見つからないのだった。
日本も悪い。
一方的に彼らを責めることは出来ない。
悔し涙が五十嵐の頬をつたう。
無力だ・・・。いや、そうじゃない、もっともっと何かしてやれた筈だ。
どこかでもう自分は充分やっていると傲慢なことを思っていなかっただろうか?
五十嵐は自分を責め、屈や親友、劉、雀荘にいる中国人たちに涙を流して謝罪するのだった。
まだ諦めない。
まだ何かやれる筈だ、そう熱く語る。
しかし何をどうやれるのか、その答えはどこにも見つからないのである。
五十嵐はまだ知らないのだ。
翌日に載るある新聞の記事が全てを変えてしまうことを・・・。
その新聞の記事の見出しはこう。
『中国留学生の宿消える』