そしてバイトの咲はいつしか屈に恋心を抱くようになるのだった。
しかし咲はその想いを屈に告げることがどうしても出来なかった。
二人はあまりにも違い過ぎた。
なるべく祖国の両親には迷惑の掛からないようにと、勝手の違う外国で、必死に働きながら勉強する劉や屈、一方で田舎の父親からいい加減年金を自分で払えと説教される咲。
咲はただただひたすらに自分が情けなかった。
自分だけではなく、日本の若者たちも情けなく思えてくるのだった。
やがて劉と屈は国立大学に合格、奨学金も得て、勉強に集中できる環境を手に入れる。
それは決して平坦な道のりではなかった。
劉はその喜びを中国の両親に伝えようと電話をする。
そして劉の父親が半年前に心臓発作で亡くなっていたことを初めて知る。
日本で頑張る娘に心配をかけまいとする母親の配慮だったが、そのことで深く傷ついた劉は帰国を決意、そのことを五十嵐に告げるのだった。
誰にも知られたくない、劉はそう五十嵐に告げる。
自分が帰国することは誰にも言わないでくれ、と。五十嵐は頑張って日本に留まって勉強することを勧めたが、最後には劉の想いを受け入れ、日記を大事に抱える劉を成田から見送るのだった。
劉が密かに帰国してしまったことにショックを受ける屈、そして咲。
このままで良いのか?
屈に疑問を投げかける咲。仕方ない、自分にはどうすることも出来ない、と答える屈。
しかし咲は納得できない。屈に更に問いかける。
ここで諦めてしまっては何にもならないではないか。
咲は中国まで劉に会いに行こうと提案するが、現実的な話ではなかった。
それに使えるお金の余裕などないのである。