奥 義久の映画鑑賞記
2021年2月
*私自身の評価を☆にしました。☆5つが満点です。(★は☆の1/2)
2021/02/06「名も無き世界のエンドロール」☆☆☆
小説すばる新人賞の行成薫の小説を映画化。幼馴染のキダとマコトは表と裏の社会でのし上がり、マコトは10年後のX‘masイブにキダの協力を得て、政治家令嬢で人気モデルのリサにプロポーズ作戦を実行する。その作戦の本当の狙いは、ある壮大な計画だった。キダ役に岩田剛典、マコト役に新田真剣佑の若手人気スターが初共演、物語の鍵を握る二人のヒロインに山田杏奈と中村アン。4人の中ではTVドラマ「スーツ」の有能な秘書役でブレイクした中村アンが、今回は高慢ちきな嫌な女を演じているが、演技力も際立っていた。ほかに柄本明、大友康平、石丸謙二郎のベテラン陣が共演し、画面を引き締めている。
「哀愁しんでれら」☆☆☆★
TSUTAYA CREATORS’PROGRAM FILMで2016年のグランプリに輝いた渡部亮平のオリジナル脚本を自ら監督した作品。不幸のどん底の小春は出会って間もない開業医の大悟と幸せな結婚生活をおくれるはじだったが、大悟の娘のひかりの嘘、狂暴さに気づき、一旦は実家にもどろうとする。でも、自分の居場所は大悟とひかりのところと考え、ある決断をする。幸せのシンデレラになれなかったシンデレラストーリーの主人公には土屋大鳳、大悟に田中圭、映画デビューとは考えられない存在感を示したCOCOがひかりを演じる。他に小春の父に石橋凌、妹に山田杏奈が扮している。
2021/02/07「樹海村」☆☆★
「犬鳴村」に続く恐怖の村シリーズ第2弾ということだが、ホラー映画嫌いの私は「犬鳴村」も見てないし、本作も見るつもりがなかったが、5日公開の新作で見たいという作品がなかった。しいて言うと昨日鑑賞した「哀愁しんでれら」だけ。その中で鑑賞した理由は二つ①チラシのイラストで樹海への興味がわいた②山田杏奈がまた出ている。ファンではないが、「名も無き世界のエンドロール」のヒロイン役、「哀愁しんでれら」の主人公の妹役、そして今回の主人公と立て続けに映画主演しているので、演技比較をしてみようと思った。それぞれ違った味を出しているのでいい役者になれると思いましたが、主人公役の顔ではないのでこれからは演技派の準主役があっていると思います。さて、前段が長くなりましたが青木ヶ原の呪いの詰まった箱が仲間の新居で見つかり、呪いの中に呼び込まれて行くというストーリーです。主人公の姉妹に山口まゆと山田杏奈、共演者は、樹海監視員役の國村準、祖母役の原日出子、霊として出てくる母役の安達祐実、ほかに高橋和也、塚地武雄。國村以外は二流キャストのB級作品です。ホラー好きな方もあまり怖くないので本当にお暇でしたらどうぞという感じです。
2021/02/11「すばらしき世界」☆☆☆☆
シカゴ国際映画祭2冠(観客賞・最優秀演技賞)に輝く傑作。「ヤクザと家族」に続きヤクザを主人公にした実話を基に佐木隆三の「身分長」を原案を西川美和が脚本・監督をしている。主人公三上は人生の大半を塀の中で暮らしてきた男。13年ぶりの帰ってきた娑婆で堅気として再出発を誓うが、生きづらい社会だった。三上には今や名優と言ってもいい役所広司、三上を取材対象と考え近づくが、いつしか三上をリスペクトする津乃田に仲野大賀、他に六角精児、北村有起哉、白竜、キムラ緑子といった個性派演技人が共演。長澤まさみもTV局の人間で特別出演している。すばらしき世界は素晴らしき映画である。
「ファースト ラヴ」☆☆☆☆
第159回直木賞を受賞した島本理生の小説を監督堤幸彦が映画化。父親を刺殺した女子大生環菜は罪は認めるものの「動機はそちらで見つけてください」と挑発的な言葉で世間を騒がしている。取材対象としてかかわった公認心理士・真壁由紀は義弟の弁護士庵野迦葉とともに、真相を追求していく。主人公由紀には北川景子、義弟の弁護士に中村倫也、容疑者環菜に芳根京子、由紀の夫に窪塚洋介が扮している。サスペンスの傑作が誕生した。
2021/02/13「マーメイドインパリ」☆☆☆★
恋の街パリ、セーヌ川のほとりで傷ついた人魚ルラを救ったガスパール。ルラの歌声は男性を虜にして命を奪うことができるが、過去の失恋でガスパールは恋する感情がなくなっていた。ガスパールとルラも二人は、徐々に惹かれ合っていくが・・・。大人のおとぎ話のような映画。コロナ渦を忘れさせる優しい愛の物語を楽しめるフランス映画。主演はガスパールにニコラ・デュヴォシェル、ルラには注目の若手マリリン・リマが扮している。
2021/02/14「秘密への招待状」☆☆☆★
2006年アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたスザンネ・ピア監督の「アフター・ウェディング」のリメイク。この作品を気に入りリメイク権を取得した女優ジュリアン・ムーアは自ら主演するとともにプロデューサーも兼務している。インドで孤児院の救援活動を行うイザベルにニューヨークのメディア経営者テレザから融資の話が来る。ニューヨークに向かったイザベルはテレサから週末の娘の結婚式に招待される。そこにいた花嫁の父は、かつてイザベルが愛した男オスカーだった。そして、娘は養子に出したはずのグレースに違いないと確信する。オスカーとグレースをめぐる二人の女は、それぞれの思いを胸に真実と向かい合い、さらに新たな秘密の告白が待っていた。主人公テレサを演じるのはジュリアン・ムーア、W主演のイザベルにはミッシェル・ウィリアムズ、テレサの夫にビーリー・クラダップ、娘グレースはアビー・クイン。二人の演技派女優が見せる迫力と大きな愛の世界を描く感動を味えるヒューマン・ドラマである。
2021/02/17「私は確信する」☆☆☆☆★
フランス全土で注目された未解決事件ヴィギエ事件を映画化。ヴィギエ事件とは38歳の女性スザンヌ・ヴィギエが3人の子供を残して失踪した。警察は大学教授の夫を殺人犯として逮捕、一審は無罪になるも検察は面子を懸けて有罪へと追い込もうとする。敏腕弁護士デュポン=モレッティ(実在の人物で現法務大臣)と無実を確信する容疑者の娘の知人ノラは真実を追求していく。この作品を見る限りではスザンヌの愛人が真犯人に感じるが、未だ解決はしてない。日本の警察なら、法廷での食い違う証言や250時間の通話記録から浮かびあがる疑惑で、謎を解き明かしているのではないか?本作の最高の見せ場は、ラストの弁護士の最終弁論。迫力は圧巻で法廷映画の名シーンとして語り継がれるだろう。そのモレッティ弁護士を演じるのは、仏の名優オリヴィエ・グルメ、ノラにはマリーナ・フォイスが扮している。
2021/02/20「ベイビーティース」☆☆☆☆★
2012年シドニーで初演された舞台劇の映像化権を買った製作者アレックス・ホワイトとジャン・チャプマンがシャノン・マーフィーに監督を依頼。脚本は戯曲を書いたリタ・カルネジェイスが自ら担当した。本作は余命僅かな少女が偶然出会った不良少年に恋をして、成長していく物語。主演の少女ミラ役は次世代スター10人に選ばれ、「ストーリー・オブ・マイライフ」でも三女役を好演したエリザ・スカンレン、不良少年モーゼス役のトビー・ウォレスは本作でヴェネチア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人賞)を獲得した。二人の注目の若手が誕生した本作では、監督のシャノンもサンパウロ国際映画祭とパームスプリングス国際映画祭で新人監督賞(今までは舞台演出と短編映画しか実績がなく、本作が長編第1作)を受賞し、Vaiiety誌の2020年の注目すべき10人の監督に選ばれるなど話題がつきない作品である。作品としてもトランシルヴァニア国際映画祭とブリュッセル国際映画祭でグランプリを獲得している。
2021/02/21「藁にもすがる獣たち」☆☆☆☆
原作は11年前講談社の文芸誌に連載された曽根圭介の同名小説。日本での映画化はならなかったが、韓国の一流スター競演で見事なサスペンスエンターテインメントとして甦った。物語は大金の入ったバッグが人を狂わせていく集団劇。バッグを勤務先のロッカーから発見したジュンマンが、持ち主として現れた女ヨンヒと刑事に落しものは知らないと嘘をつく、そのバッグを手にするためヨンヒは殺人を犯していた。主人公ヨンヒには、カンヌで主演女優賞のキャリアがある名優チョン・ドヨン、ヨンヒの愛人で借金に苦しむ税関職員をチョン・ウソン、バックを拾ったジュンマンにぺ・ソンウが演じている。本の一気読みのように楽しめる作品である。
2021/02/22「ある人質 生還までの398日」☆☆☆★
若いアシスタントカメラマンのダニエルは戦争の中の日常を撮り、世界に伝えたいとの思いからシリアの国境近くの町を訪ねるが、そこは安全地帯ではなくIS(イスラム国)の支配地になっており、ISの兵士に誘拐される。この映画は、ダニエルが体験した地獄とダニエルを救うために奮闘した家族の実話である。人質専門の救出家、テロリストとの交渉はしないが、アドバイザーとして参加する政府の人間等が登場してくるのも実話がベースならではの面白さといえる。主演のダニエル役はデンマークの若手実力派エスベン・スメド、本作でロバート賞(デンマーク・アカデミー賞)の主演男優賞を獲得した。同じく助演女優賞に姉役のソフィー・トルプが受賞した。
2021/02/23「世界で一番しあわせな食堂」☆☆☆☆
フィンランドの名匠ミカ・カウリスマキ監督が異文化との交流を異国の料理人と地元の人々を通して描いたハートフルな感動作。
フィンランドに人探しに来た中国料理のプロにチュー・バック・ホング、主人公の食堂経営者にアンナ=マイヤ・トゥオッコが扮している。最近は重たいテーマの洋画が多かった中で本当に心温まる作品に巡り合えたのは最高だと思う。
2021/02/27「リーサル・ストーム」☆☆☆★
巨大ハリケーンが襲ってくるため住民に避難命令が出ていた。地元の警官コルディーロは避難拒否の住民を立ち退かせるために立ち寄ったマンションで武装した強盗団と遭遇する。居残った住民の元警察署長の協力を得て強盗団と対決する。コルディーロ役のエミール・ハーシュが主役だが、画面を引き付けるのはメル・ギブソン。「マッドマックス」「リーサル・ウェポン」でハリウッドの
トップスターと君臨し、近年では監督として評価が高いメルが準主役といえ、活躍する姿を見れたことは嬉しいかぎりといえる。
「ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日」☆☆☆
南アフリカの社会問題“缶詰狩り”をテーマを縦軸とし、少女ミアとホワイトライオンのチャーリーの友情を横軸に描いている。ライオンの成長があり、3年以上の歳月をかけて撮影された。ドキュメンタリー映画出身のジル・ド・メストル監督ならではの作品といえる。ミア役は300人以上のオーディションから抜擢されたダニア・デ・ヴィラーズが意志の強い少女を見事に演じている。ミアの母親役で名女優メラニー・ロランが出演している。
2021/02/28「カポネ」☆☆☆★
禁酒法時代の悪名高いギャング、アル・カポネはTVと映画でお馴染みの「アンタッチャブル」の敵役である。そのカポネを主人公に、しかも晩年の認知症を患う姿を描いた異色作である。カポネを演じるのはトム・ハーディ。マット・ディロン、カイル・マクラクランらが脇を固めた注目作だが、私自身はFBIのエリオット・ネスが活躍する「アンタッチャブル」の方が好きである。ネス役は映画のケヴィン・コスナーよりも、TVドラマのロバート・スタックがはまり役で、吹替の今は亡き日下武史の渋い低音も魅力だった。