小林常雄博士著『今こそ知るべき ガンの真相と終焉』書評
中川十郎
名古屋市立大学22世紀研究所特任教授、国際伝統・新興医療融合協会理事長
小林常雄・医学博士、統合医療医師がこのほど創藝社から刊行された本書は長年のがん研究の成果を遺憾なく発揮されたがん予防の貴重な提言書、がん対策のバイブルだ。
約2万6000人以上の進行がん患者を治療。さらに多くの病院が治療をあきらめた6000人以上の患者の治療を行い、その成果、すなはちEvidence Based Medicine(証拠に基づいた医療)による理論とその実践の記録には強い説得力がある。
長年の国内外での研究の結果、「がんは遺伝子異常で生じるという悪性腫瘍塊ではなく、ミトコンドリアの呼吸代謝異常が原因で、生物学的に診断すべきだ。」との説を提唱。
「がん組織が画像診断で認識できる大きさに成長するまで待ってから治療を行うという愚かな対処療法をくりかえしてはならない」『現代最新といわれるがん治療の現場では、画像診断ができるくらいまでがんが大きくなるのを待って「切除手術」、「制ガン剤治療」、「放射線治療」という、いわゆる厚生省のがん標準治療』に小林常雄博士は疑問を呈しておられる。
「がんに対する認識があまりにも長い期間、画像診断と病理診断による天動説に固執してきた結果、がんの罹患とガン死が急増してきた。生化学的解析に基づいた機能診断学を始めないと、がんを新生物として減少させることはできない」と、多くの病院が治療をあきらめた6000人以上の患者を治療してきた実績がある、がん研究の第一人者たる小林先生は力説されている。さらに小林先生は免疫の重要性を強調。『「手術」、「放射線」、「制ガン剤」の標準治療はすべてのがんの大きな原因で、免疫低下を無視した治療法だ』と強く批判。
「免疫低下は制癌剤治療以上に悪い状況を長引かせる」と警告を発しておられる。
この点、「がんも膠原病もアトピーも潰瘍性大腸炎も、習慣病と呼ばれているあらゆる慢性病も免疫力を高めることで治せる」と唱えておられた世界的免疫学者の故安保 徹・新潟大学教授の見解とも一致する。小林博士は日本に於けるがん治療の主体が外科中心であることを批判。内科、心理学、栄養学などの専門家も交えたチーム医療の必要性を強調。さらに日本の医学部の講座に栄養学、漢方学がないことを問題視されている。全く同感である。
小林博士は日本人ががんになる食生活習慣を行っており、その食習慣の改善が必要だと力説しておられる。博士はさらに一般のがん検診とは比べ物にならない画期的TMCA検査法を開発。これによりがんの早期発見・早期治療が日本で進展することを強く期待したい。
10月5日現在の日本のコロナ感染者は170万人。死者数は1万7000人強だ。一方、日本のがん患者は一日1000人以上死亡。年間40万人強が死去。現在日本では男性3人に2人が、女性2人に1人ががんに侵され、3人に一人ががんで死亡。がんは国民病となっている。小林博士のこの名著が日本のがん死亡者軽減に役立つことを強く希望する次第である。