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        奥 義久の映画鑑賞記

        2022年2月

         

        *私自身の評価を☆にしました。☆5つが満点です。(★は☆の1/2)

         

        2022/02/01「フレンチ・ディスパッチ」☆☆☆☆★

        カンヌ国際映画祭上映後10分近いスタンディングオベーションで讃えられた、ウェス・アンダーソン監督の最新作。物語はフランスの架空都市にある“フレンチ・ディスパッチ”誌の編集部を舞台に記者たちが描く3つの記事の物語。編集部のメンバーにビル・マーレイ、フランシス・マクドーマンド、ジェフリー・ライト、オーウェン・ウィルソン、記事の物語には、ベニチオ・デル・トロ、レア・セドゥ、ティモシー・シャラメ、エドワード・ノートンらが出演している。いつもながらウェスの作品は解説で進行するところと映像がトーキー映画を観ているような感覚で作り上げ、映画の原点を思い出させてくれる。映画好きなら必見の作品。

         

        2022/02/2「バイオハザード ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」☆☆☆

        ミラ・ジョヴォヴィッチ主演の大人気シリーズ「バイオハザード」

        の原点を描く作品。製薬会社アンブレラ社の人体実験によるゾン

        ビの出現。今回からの新ヒーロー・クレアが真相を追求していく。

        クレアに扮するのは「メイズランナー」のテレサ役でブレイクし、

        「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」でヒロインを演じ

        たカヤ・スコデラリオ。監督も今までのポール・W・S・アンダー

        ソンは制作スタッフとなり、ヨハネス・ロバーツに代わっている。

        ホラー要素が強い作品になっている。

         

        2022/02/03「クレッシェンド 音楽の架け橋」☆☆☆☆

        紛争中のパレスチナとイスラエルの若者たちを集め、平和のため

        のコンサートを開く企画を指揮者スポルクが引き受ける。スポル

        クは対立する若者たちをアルプスの合宿で、少しづつ壁を取り除

        いていくが、思わぬ出来事が起こる。本作のモデルとなったのは

        巨匠ダニエル・バレンボイムが率いる「ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団」。現在も世界中でツアー活動を行っている。バレンボイムをモデルにした指揮者スポルク役をペーター・シモニシェック、パレスチナ人のバイオリスト・レイラ役サブリナ・アマーリ、イスラエル人のバイオリスト・ロンにダニエル・ドンスコイ。

        音楽の力が対立する若者たちの心を一つにする心温まる物語。世界中に感動を与える作品と思える。

         

        2022/02/05「355」☆☆☆★

        「ジェイソン・ボーン」シリーズの制作スタジオの本格スパイ・アクションというので、公開前から楽しみにしていた作品。“355”は18世紀アメリカの独立戦争時代の女スパイのコードネーム。

        各国の女性エージェントが協力して国際テロ組織から奪われたデバイスを奪還する。エージェント役は、ジェシカ・チャステイン、ペネロペ・クルス、ダイアン・クルーガー、ファン・ビンビン、ルピタ・ニョンゴという豪華メンバーが揃った。面白さでは、今年1番の映画。

         

        大怪獣のあとしまつ」☆☆★

        ある日巨大怪獣が死に、その死体がガス爆発の危険が迫っている

        という。国家をあげての死体処理プロジェクトが始まる。首相直属

        に特務隊の帯向一尉が任されるが、死体処理の方法で大臣同士の

        権力争い、利権、私情等がからみ複雑な様相になる。奇想天外なアイデアのSFエンターテインメント作品だが、主演の山田涼介はミスキャスト、共演の土屋太鳳、濱田岳、西田敏行、オダギリジョー、六角精児等の知名度のあるスターや個性派俳優たちも今回の演技は感心できない。演出、脚本の問題かもしれないが、「前科者」「ノイズ」といった良質な日本映画を見た後なので余計に評価が低くなる。

         

        宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 後章」☆☆☆

        昨年10月に公開された作品の続編。イスカンダル星の秘密が明らかになる完結編だが、「ヤマトよ永遠に3199」に引き継がれる。

        主人公は古代進の子孫なのか、全く新しいキャラクターか、今から楽しみ。本作は同盟を結んだガミラスの危機を救うためヤマトが地球を発信して新たな敵との戦闘を描いた前章から戦いが引き継がれる。その中で敵の本当の狙いはイスカンダルにあり、イスカンダルの秘密と最後が描かれている。

         

        2022/02/06「ゴーストバスターズ アフターライフ」☆☆☆★

        1984年「ゴーストバスターズ」1989年「ゴーストバスターズ2」

        は世界中で大ヒットした作品。過去2作の監督を務めたアイヴァン・ライトマンの息子ジェイソン・ライトマンが本作の監督を引き継ぐ。物語はゴーストバスターズの科学者の一人イゴン・スペングラーの死から始まる。イゴンの娘と二人の子供は祖父の残した古びた屋敷に住み始める。12歳の孫娘フィービーはイゴンのDNAを引き継ぎ天才科学者。フィービーは地下室で祖父の残したハイテク装備を見つけ、たびたび起こる地震もゴーストの仕業とつきとめる。フィービーは仲間とともにゴースト退治に挑む。フィービー

        役はマッケナ・グレイス、母親役にキャリー・クーン、教師役で「アントマン」のポール・ラッドが出演する。ラストに助太刀でビル・マーレイ、ダン・エイクロイドらの初代ゴーストバスターズの3人がゲスト出演している。残念ながらイゴン役のハロルド・ライミスは2014年に急逝し、本作のゲスト出演はかなわなかったが、エンドロールはハロルドに捧げると表示されている。カメオ出演でシガニー・ウィーバーも顔を見せている。

         

        鹿の王 ユナと約束の旅」☆☆☆★

        2015年本屋大賞を受賞した上橋菜穂子の小説を「千と千尋の神隠し」「君の名は。」のアニメーター安藤雅司が監督デビュー作として映画化。ツオル帝國とアカファ王国の対立とミッツファルという感染病をからませ抗体を持つ少女ユナと戦士ヴァンの活躍を描いたスケールの大きな作品。コロナウィルス蔓延の時期に感染症のからむ作品の公開ということも、因縁めいたものを感じるが大人も楽しめる上質な出来ばえになっている。家族で楽しんで欲しい作品です。

         

        2022/02/11「ウエスト・サイド・ストーリー」☆☆☆☆☆

        アカデミー賞11部門を受賞した名作「ウエスト・サイド物語」の完全リメイク。オリジナルはブロードウェイの大ヒットミュージカル、日本でもブロードウェイキャストで上演されたり、劇団四季が上演をしているので誰もが知っている作品。ミュージカルナンバー“トゥナイト”“マリア“”アメリカ“等の名曲が誕生し”マリア“は3大テノール歌手によるコンサートでも歌われている。作曲は当時のニューヨーク・フィルハーモニーの首席指揮者レナード・バーンスタイン。ベルリン・フィルのカラヤンと並び称される指揮者が作曲家としても才能を見せつけた作品でもある。その作品の映像化はロバート・ワイズ監督、ナタリー・ウッド、リチャード・ベイマー、ジョージ・チャキリス、リタ・モレノ主演で1961年に制作され同年のアカデミー最多受賞作で不朽の名作となった。

        それだけの名作でありながら無謀とも言えるリメイクを制作したのは、スティーブン・スピルバーグだからと言える。「E・T」「シンドラーのリスト」の巨匠スピルバーグの初ミュージカル作品は、舞台、映画、音楽等のそれぞれの版権継承者への交渉から始まった。そしてスピルバーグ版は前作以上に人物を掘り下げワイズ版とは異なる名作を作りあげた。オープニングの上空からのNYのシーンでも単なる高層ビルの姿だけでなく破壊されたビルの瓦礫を映しだしている。構成では決闘シーンのあとでジェット団のサブリーダーが仲間たちに対して歌う“クール”を決闘前にトニーがジェットのリーダー、リフに対して決闘を止めるための歌として使っている。マリアの職業もアニタの店のお針子でなく清掃のバイト勤め、アニタも店持ちでなく自宅での内職、ベルナルドをボクサーの設定にして、ベルナルドがマリアと結婚させようとしている同郷のチノはシャーク団の仲間でなく、平凡な会社勤めの青年としている。決闘場面も高速下でなく倉庫、トニーとマリアの踊るシーンもワイズも幻想的なシーンでなく、物陰でとリアルな形に変えている。キャストではドックの店主が男から女に設定変更し、ワイズ版でアニタ役を演じてアカデミー助演女優賞を獲得したリタ・モレノが演じている。リタはエグゼクティブ・プロデューサーも兼務している。このように数々の構成変更と台詞を変えてスピルバーグ版が誕生した。本作も7部門の本年度アカデミー賞ノミネート作品となっている。現代でのこれだけの複数ノミネートはめずらしい。スピルバーグの最高傑作との評価もうなづける。ワイズ版に劣るのはキャストの知名度だけだが、演技は負けてない。マリア役の新人レイチェル・ゼグラーも好演しているが、ワイズ版のナタリー・ウッドの輝きにはかなわない。「ウェスト・サイド物語」「ウェスト・サイド・ストーリー」どちらもミュージカル映画の名作と言っても過言ではない。ここまでの本年ナンバー1作品である。

         

        2022/02/17「ブルー・バイユー」☆☆☆☆

        本作が描くのは2001年以前に養子縁組をした市民権を持たない米国在住の移民の悲劇。1988年に養子縁組をしたアントニオは30年以上米国で暮らしており、愛する家族がいる。アントニオは警察官に抵抗したため囚われ、強制送還の命が下る。家族と暮らすために弁護士に相談するが、高額の弁護士費用を払うため犯罪に手を貸すことになる。アントニオ役は監督・脚本のジャスティン・チョンが自ら演じている。妻キャシーは「リリーのすべて」でアカデミー助演女優賞を獲得したアリシア・ヴィキロンデルが熱演している。家族を引くさく司法制度と戦う男とその家族を描いた感動作の誕生である。

         

        2022/02/18「国境の夜想曲」☆☆★

        本作は3年間以上かけ、イラク、シリア、レバノン等の国境地帯で撮影され、ヴェネチア国際映画祭で3冠を受賞したドキュメンタリー映画。大変評価の高い作品ですが、私には戦争の悲惨さ伝わって来なかった。冒頭の獄死した息子を思いやる母親やISの暴力を訴える少年のインタビュー等は作られた感じが強く、緊迫感がない。3冠受賞が信じられない作品です。唯一、エンドロールに流れる歌が哀愁を感じさせていた。

         

        2022/02/19「オペレーション・ミンスミート」☆☆☆★

        第2次世界大戦下、イギリス情報部はヨーロッパ戦線を好転させるため、シチリア島攻略の計画を立てていた。作戦成功のために英国情報部は死体に偽の機密文書を持たせて漂着させる奇策を考える。立案したイアン・フレミング少佐(007の原作者)と実行責任者モンタギュー少佐たちはこの計画成功のため邁進する。主人公のモンタギュー少佐を名優コリン・ファース、副官チャムリー大尉にマシュー・マクファディン、フレミング少佐にジョニー・フリン、作戦の鍵を握る海軍省の女性をケリー・マクドナルドが演じている。英国を代表する演技派のスター達と「恋におちたシェイクスピア」「マリーゴールドホテル」の名匠ジョン・マッデン監督が組んで1級のスパイ・サスペンス映画を作り上げた。

         

        2022/02/21「アンチャーテッド」☆☆☆

        世界的な人気ゲームの映画化。主人公ネイサン・ドレイクはトレジャーハンター。50億ドルの財宝を探し、世界中をかけめぐる痛快アクション作品。ネイサン役は「スパイダーマン」シリーズのトム・ホランド、相棒役には「トランスフォーマー」シリーズのマーク・ウォールバーグが扮している。財宝を狙う組織のボス役でアントニオ・バンデラス、女トレジャー・ハンター役でソフィア・アリが共演している。理屈抜きに楽しめる作品でシリーズ化が決定している。

         

        2022/02/23「白い牛のバラッド」☆☆☆

        第71回ベルリン国際映画祭で金熊賞と観客賞にノミネートされたイラン映画。批評家からの高評価を得たがイランの厳罰的法制度の批判作ととられ、イラン国内では正式な上映許可がおりず3回しか上映されていない。夫を死刑で失い、聾啞の娘を育てるシングルマザーのミナは工場で働き懸命に生きている。1年後に夫の無実を知らされ、賠償金が提示される。ミナは夫を死刑判決を出した判事の謝罪を求める。そんな時、夫の友人を名乗るレザが現れ、何かと手助けをしてくれる。レザの正体が謝罪を求める相手と知った時ミナはある決断をする。主人公のミナ役には監督のマリヤム・モガッダムが自ら演じている。秀作だがゆっくりとしたテンポ、BGMのほとんどない作りは地味すぎる作品といえる。個人的には好きな映画ではない。

         

        2022/02/24「ドリームプラン」☆☆☆☆★

        最強のテニスプレイヤー、ビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を育てた父リチャードの物語。テニス選手でもないリチャードは娘が生まれる前から書いた世界チャンピオンになる計画書。そのプランに沿って雨にもまけず、近所から子供の虐待を訴えられても信念をまげなかった。ビーナスはジュニアで63連勝するも、父の方針で3年間学業に専念し、その後14歳でプロデビューする。デビュートーナメント2回戦で当時の世界1のサンチェスと対戦する。第2ゲーム途中までリードするもプロの狡猾な作戦に敗戦するが、ビーナスの評価を高めた試合となった。本作ではこの敗戦までの姉妹と父の物語を描いている。父リチャードには名優ウィル・スミスが好演しており、3度目のアカデミー賞ノミネートをされ、本命とされている。今月の鑑賞作では「ウェスト・サイド・ストーリー」と甲乙つけがたい作品である。

         

        2022/02/25「シラノ」☆☆☆

        1897年のフランスでの初演以来、多くの上演、ミュージカル化、映画化をされた「シラノ・ド・ベルジュラック」を新たな視点から「プライドと偏見」のジョー・ライト監督がミュージカル映画として再映画化。シラノは鼻が大きすぎる悩みを抱えている騎士を今回は小人に設定している。シラノが思い焦がれるロクサーヌと同僚の青年クリスチャンとの恋の仲立ちをする純愛三角関係の物語は変わらない。シラノとロクサーヌは舞台版でも共演しているピーター・ディンクレイジとヘイリー・ベネットが演じているので息もピッタリ。惜しいのは歌曲が平凡なので、ミュージカル映画に必要な看板になる名曲が無かった事。

         

        2022/02/27「ナイル殺人事件」☆☆☆☆

        世界一の推理作家アガサ・クリスティの代表作「ナイルに死す」をケネス・ブラナーが映画化。美しいエジプトの観光地の舞台を堪能し、名探偵ポアロの推理を楽しむことが出来るミステリー大作。神秘のナイル川のクルーズ船で新婚旅行中の大富豪の娘リネットが殺される。容疑者はクルーズ船の乗客全員。犯人を目撃したメイドも殺され、深まる謎に名探偵が挑む。ポアロ役はもちろん前作「オリエント急行殺人事件」同様監督兼務のケネス・ブラナーが演じる。殺される大富豪の娘にガル・ガネット、新婚の夫サイモンにアーミー・ハマー、乗客たちにアネット・ベニング、トム・ベイトマン、エマ・マッキー、レティシャー・ライトらが演じている。

         

        2022/02/28「ゴヤの名画と優しい泥棒」☆☆☆★

        198年間の歴史のロンドン・ナショナル・ギャラリーで唯一起こった盗難事件の実話の映画化。世界屈指の美術館からゴヤの名画“ウェリントン公爵”が盗まれた。犯人の要求はTV受信料の無料化。捕まった犯人は60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントン。この事件の裁判も注目され、12人の陪審員の出した判決は?名優ジム・ブロードベントがケンプトン役、大女優のヘレン・ミレンが妻役、息子ジャッキーには「ダンケルク」のフィオン・ホワイトヘッドが演じている。この心温まる作品を監督したのは「ノッティングヒルの恋人」のロジャー・ミッシェル。遺作となったのは残念。

        制作協力企業

        • ACデザイン
        • 日本クラシックソムリエ協会
        • 草隆社
        •                 AOILO株式会社

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