2022年6月19日
今週の所感
村田光平(元駐スイス大使)
6月17日 汚染水の海洋放出(原子力規制庁に対する意見具申
皆様
グリーンピースなどからの要望を踏まえて福島汚染水の海洋放出を思いとどまるよう下記の通り意見具申を行いましたのでご報告いたします。10年ほど前から指摘してきた日本の排他的経済水域の
存否にかかわる重大な問題提起を初めて政府に対して行いました。
皆様の御理解と御支援をお願い申し上げます。
記
原子力規制委員会御中
ご高承の通り東京電力による福島放射性汚染水の海洋放出の動きに対しては内外の市民社会は強く反対の声を挙げつつあります。
5月13日と25日、海洋放出に反対する市民グループとグリーンピースは、原子力規制委員会・東京電力・福島県に対し、汚染水の海洋放出の中止を求める要望書を提出しました。
グリーンピースは、汚染水は陸上で長期保管し、並行してトリチウムを含む放射性核種の分離・回収技術を開発・適用するのが現段階での最善の解決策として提案していると承知しております。
陸上の長期保管についても某鉱山会社が広大な発掘の跡地の活用を申し出ているなど現実に保管場所の存在も複数確認されております。
これまで表面化していない重大な問題につき指摘させていただきます。それは経済水域を持つ国は、その海域にある生物や鉱物など様々な資源を調査、開発、保存する権利を持つとともに、これらの資源や環境を適切に管理する義務を担うということです。
市民社会では10年以上も前からこの問題が取り上げられておりましたが、来年から海洋放出が始まるとの決定が伝えられるに至り、今後ますます内外で表面化することが予見されます。
特に下記の指摘が注目されます。
* 国会事故調査委員会は東電福島第一原発事故を「人災」と
している。汚染水の海洋放出も人災だが、防ぐことができる。
* 国連の人権特別報告者は、汚染水の海洋放出は人権侵害と
している。
* 太平洋の島々や市民社会、政府が汚染水の海洋放出に反対して
いる。
* 炭素14、ストロンチウム90、プルトニウム、トリチウムなど、
汚染水に含まれる多くの放射性物質の拡散の環境や人体への影響が無視されている。
どうかよろしく海洋放出につきご再考をお願い申し上げます。
村田光平(元駐スイス大使)