2023年3月19日
今週の所感
村田光平(元駐スイス大使)
3月16日
中国外交部の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は14日の定例記者会見で、福島第一原子力発電所の放射能汚染水海洋放出問題について、日本の各界で連日にわたり反対集会が行われる中、岸田文雄首相が11日、放出は延期できないが、関係者の理解なしに放出は行わないと表明したことにコメントを求められ、次のように述べた。
<報道に留意している。12年が過ぎたが、日本政府は福島原発事故の痛ましい教訓をくみ取らず、放射能汚染水の海洋放出計画を独断専行で進め、放射能汚染のリスクを全人類に押しつけようとしている。これは責任ある国家の行為では決してなく、日本が果たすべき国際義務にも反している。>
日本政府の放射能汚染水の海洋放出計画対する内外からの批判は強まる一方で「国際社会における名誉ある地位」は深刻に脅かされるに至っております。
こうした危機感から14日、東電の小早川智明社長に対して放射性汚染水の海洋投棄の国連海洋法条約違反の可能性に言及した別添の
2月21日付岸田総理宛メッセージを秘書を通じて送付いたしました。
国連海洋法条約85条は排他的経済水域における他国の権利行使を妨げないよう適切に配慮することを求めております。先週英連邦に属するフィジ―が緊急事態宣言を発出したことが報じられました(未確認)。
フィジーをはじめパプアニューギニア、ソロモン諸島、バヌアツ(メラネシア)、サモア、トンガ王国、クック諸島、ツバル、
ニウエ(ポリネシア)、ミクロネシア連邦、キリバス、マーシャル諸島、パラオ、ナウル(ミクロネシア)の14か国の太平洋島諸国もこの動きに影響を受けることが予見されます。
放射性汚染水の海洋投棄が強行される場合にはこれに強硬に反対する国々が日本の海洋法条約違反を糾弾する挙にでる可能性は排除されません。
東電の小早川社長がこうした深刻な可能性を示唆する上記岸田総理宛メッセージを踏まえていかなる判断をされるかが注目されます。
以下岸田総理宛メッセージ
岸田文雄内閣総理大臣殿
令和5年2月21日
村田光平
(元駐スイス大使)
拝啓
ご健勝のことと拝察申し上げます。
私が顧問を務める日本インテリジェンス協会(中川十郎理事長)の32周年記念研究会で2月16日に国会議員会館で行った講演の
骨子を別添お届けいたします。
私からは下記諸点を強調致しました。
1.原発稼働期間の40年から60年への延長を5名中1名の委員の反対にもかかわらず決定したことは残念であり,原子力に関しては市民社会の直観の方が専門家の知見よりも信頼に値することがまたもや立証された。
2.福島事故の放射性汚染水の海洋放出は海洋法条約85条違反の可能性があることが判明し、日本が排他的経済水域を失うことになる可能性が表面化したこともあり、その可能性はないとおもわれる。
3.福島事故及びウクライナ危機の教訓(原発の危険性)を無視する原発回帰は不道徳であり、東京五輪が放射能の危険性を全く無視した責任は重大である。
4.世界が求める脱原発及び核廃絶の進展を図るには新たなアプローチが不可欠であり、この見地から脱原発を核廃絶に不可欠の前提条件として新たに位置付けることが望まれる。
5.権力とは無縁の市民社会の支えとなるのは哲学であり、特に日本の情勢との関連で注目され出しているのは下記の哲学の教えの
三原則である。
イ 地球と人類を守りぬいてきた天地の摂理
ロ 不道徳の永続を許さない歴史の法則
ハ 悪事を暴き天罰を下す老子の天網(天網恢恢疎にして漏らさず)
6.日本一新、世界一新の見地から新たな文明を求める動きが見られる中で国連倫理サミットの意義が新たな視点から注目されます。特に旧知のフランスの経済学者ジャック・アタリ氏の見解は今後の世界は利己主義と利他主義の対立となると予見しております。この対立の核心は感性の有無であり、国連倫理サミットの3三位一体の目標(地球倫理の確立、2.父性文明から母性文明への転換 3.核廃絶)の中で母性文明はこのアタリ氏の見解に沿うものと思われる。(アタリ氏の見解に関する資料は私の公式サイト
http://kurionet.web.fc2.com/murata.html
「近況報告」に掲載)
最近の天災の激甚化は地震、森林火災等々自然からの悲鳴に聞こえます。市民社会からも日本の平和国家の基盤の短期日内での喪失を嘆く悲鳴と合致するが如くです。
貴総理の御理解と御支援を御願い申し上げます。
敬具
追伸 先程流された下記のネット報道は衝撃的です。
<ロシア軍が占拠を続ける南部ザポリージャ原子力発電所に新たに600人以上の兵士を送り込んだとウクライナの国営原子力企業エネルゴアトムが20日、発表した。ニュースサイト「ウクライナ・プラウダ」などが報じた。侵略1年を前に露軍による原発の軍事拠点化を図る動きが改めて浮き彫りになった>