┌┬───────────────────────────2023年9月
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│└┼┐ 資産家のための資産税ニュース 第141号
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└──┴┴────── 辻・本郷 税理士法人 www.ht-tax.or.jp/
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■□ 上場株式等の物納が便利になる!? ■□
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各府省庁が取りまとめた令和6年度税制改正要望が、8月末までに出揃いました。
相続税関係では、中小企業庁より、「法人版及び個人版事業承継税制」について
特例承継計画の提出期限延長などの要望があったほか、金融庁においては、
「上場株式等の相続税に係る物納要件等の見直し」として、換金性の高い上場
株式等について、物納の特例を措置することを求めました。
【1.活用されていない「物納」】
国税庁が発表している「相続税の物納処理状況等」によれば、直近の令和4年度における物納許可件数は54件で、平成29年度以降は2桁で推移しています。
令和3年相続(令和4年10月31日までに提出された相続税申告)に係る申告件数が13万4千人ですので、利用割合は僅か0.04%という事になります。
この要因としては、平成18年度の税制改正により物納の要件が厳しくなった点が挙げられます。従来は被相続人の現預金が無い場合には比較的すんなり物納が認められていましたが、改正後は現預金のほか、換価の容易な財産と相続人の固有財産をも求められることとなったのです。
【2.物納はハードルが高い】
そもそも「物納」は納税者の選択により簡単にできるものではなく、一定の要件
をクリアした後に認められます。
相続税は金銭一括納付が原則ですが、納期限までに一時に納付することが困難である場合、年賦延納による最長20年の分割払いが可能です。さらに、延納にしても金銭で納付することが困難である場合に限って、物納申請をすることができます。
しかも、物納に充てることができる財産の価額は、納付すべき相続税額から
①納期限までに納付することができる金額と②延納によって納付することができる金額を控除した金額を限度とされます。
①の金額は、現預金及び換価の容易な財産から固定の生活費(本人:10万円、
親族:4.5万円)の3ヶ月分などをマイナスして算定しますが、これは相続財産のみならず、相続人の固有財産も合算されてしまいます。
②の金額は、相続人の経常収入から生活費等をマイナスした金額を基準として、
延納可能期間の合計額を算定します。これは生活を切り詰めるくらいの負担に
なると想定されます。
相続人の中には「納税資金が足りなければ物納すればいいや」と軽くお考えの
方も少なからずいらっしゃいますが、これだけの条件を満たした後でなければ
物納は認められないのです。
【3.上場株式等の物納に活路を見出せるか?】
物納財産の収納価額は、原則として相続税の課税価格計算の基礎となったその
財産の相続開始時点の価額によりますので、相続後に上場株式等の市場価格が下落した場合、売却して納税するよりも物納をした方が高い金額で収納されることから、納税者にとって有利になります。また、物納をした際は、納付困難金額を限度として、譲渡所得税が免除されます。このように、上場株式等の物納にはメリットが多くあるのです。
平成29年度税制改正において、それまでは第2順位であった上場株式等の物納
順位が第1順位に変更され、上場株式等の物納が利用しやすくなるものと思われました。しかし、物納制度そのものの使い勝手が良くならなければ、実際の利用は難しく、効果は限定的にならざるを得ません。今般の税制改正要望が実現し、上場株式等の物納が利用しやすくなる事を期待しております。
なお、物納のご利用を検討する際は、ぜひ辻・本郷 相続センターへご相談ください。
(担当:清水 一史)
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