奥 義久の映画鑑賞記
2024年3月
*私自身の評価を☆にしました。☆5つが満点です。(★は☆の1/2)
2024/03/04「ポーカー・フェイス 裏切りのカード」☆☆☆★
名優ラッセル・クロウの監督第2作。冒頭は「スタンド・バイ・ミー」を思わせる少年時代の友情を描き、現代では主人公の億万長者となったジェイドが疎遠になった幼なじみを自宅に招待し、ポーカーゲームと昔話が始まる。そこに招待しない侵入者が現われ、予測不能のサスペンス・スリラーの展開となる。本作品を見る限り、俳優兼名監督となったクリント・イーストウッドに近づける片鱗を見せている。ラッセル・クロウの今後は俳優だけでなく監督としても注目したいと思わせる出来である。
2024/03/06「犯罪都市 NO WAY OUT」☆☆☆
マ・ドンソク主演の怪物刑事マ・ソクトが帰って来た。シリーズ第3作の相手は新種薬物事件で暗躍する日本のやくざと汚職刑事。ソクトのワンパンチアクションが今回も炸裂し、痛快アクションが楽しめる。汚職刑事にイ・ジュニョク、やくざの最恐の殺し屋に青木崇高が扮している。マ・ドンソクのオファーで國村隼がやくざの親分役でゲスト出演して存在感を示している。
2024/03/08「アーガイル」☆☆☆☆
「キングスマン」のマシュー・ヴォーンが仕掛ける最高のスパイ・アクション。凄腕エージェント・アーガイルは最高の人気スパイ小説で大ベストセラー。原作者の女性作家エリーは愛猫と暮らす平和主義だが、実家を訪ねる列車の中で命を狙われる。救ったのは本物のスパイ・エイダン。空想と現実が交差して、超ド派手なアクションエンターテイメントの世界に観客を引き込んでいく。面白さでは本年NO1といえる作品。主人公エリーには名匠ロン・ハワードの娘で「ジュラシックワールド」シリーズのクレア役を演じたブライス・ダラス・ハワード、エイダンに「スリー・ビルボード」でアカデミー賞助演男優賞を獲得したサム・ロックウェル、空想の中のスパイ・アーガイルには「マン・オブ・スティール」でスーパーマンを演じたヘンリー・カヴィル、サミュエル・L・ジャクソンがエイダンのボス役で出演している。
2024/03/10「52ヘルツのクジラたち」☆☆☆★
2021年本屋大賞を受賞した町田そのこの小説を映画化。タイトルの52ヘルツのクジラとは、鳴き声があまりに高音で他のクジラたちには聞こえない、そんな孤独なクジラに物語の主人公たちの姿を置き換えて命名している。主人公の貴瑚は唯一の理解者安吾を失い、かつて祖母が住んでいた海辺の街に引越してくる。そこで虐待を受けている少年と知り合い、かつての自分の姿と重ね見過ごすことが出来なくなる。貴瑚には実力派若手女優の杉咲花が演じ、共演者も志尊淳、宮沢氷魚、小野花梨等の若手演技派、さらにはベテランの倍賞美津子、余貴美子、真飛聖といった多彩なメンバーであり、監督も成島出となると見逃せない作品といえる。派手さやエンタメ性は低いが、良質な愛の物語である。
2024/03/15「デューン 砂の惑星 PART2」☆☆☆☆★
フランク・ハーバードのSF小説を2021年(1984年にデヴィッド・リンチが映画化)にドゥニ・ヴィルヌーヴが再映画化。今作はその続編。PART1では惑星デューンをめぐる宇宙戦争が起こり、ハルコンネン家の陰謀でアトレデス家は全滅する。今作(PART2)では生きていたアトレデス家の後継者ポールが砂漠の民の協力を得て復讐をするところまでを描いている。美しい砂漠の映像は名作「アラビアのロレンス」の砂漠のシーンの美しさと甲乙つけがたく、スケールでもアカデミー賞6部門を受賞した前作を超えている。SFアクションエンターテイメントの傑作が誕生した。主人公ポールにはティモシー・シャラメ、砂漠の民で運命の女性チャニにゼンデイヤ、ポールの義母にレベッカ・ファーガソン、その他にハビエル・バルデム、レア・セドゥ、オースティン・バトラー、フローレンス・ピユー、クリストファー・ウォーケン、ジョジュ・ブローリン等の主演級クラスのスターが脇を固めている。大画面でこそ見ごたえのある作品なので、映画館で楽しんで欲しい。また、冒頭ふれたデヴィッド・リンチ版も4Kリマスター版として8月2日にリバイバル公開されるので見比べてみるのも一興の価値あり、と思います。
2024/03/17「DOGMAN」☆☆☆★
「レオン」の名匠リュック・ベッソンが実際の事件を基に脚本・監督を務めた最新作。ヴェネツィア国際映画祭ではベッソンの最高傑作と絶賛された。犬小屋で育てられた男は人間よりも犬との愛に助けられ、数十匹の犬を養うため犯罪に手を染める。一方では弱き人を助けるためにギャングたちに立ち向かうが、その結果命を狙われることになる。ダグラスことDOGMANを演じたのは、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、「スリー・ビルボード」「ゲットアウト」でアカデミー賞にノミネートされたバイブレーヤーがこの難役の主人公を見事に演じた。本作の特筆すべきは一番手はマチルド・ドゥ・カグニーを中心としたドッグトレーナー・チームの活躍といえよう。その結果が異色のアクション・エンターテインメント作品を生み出した。
2024/03/22「四月になれば彼女は」☆☆☆★
川村元気のベストセラー小説の映画化。精神科医の藤代のもとに大学時代の恋人春から便りが届く。10年前に藤代と春が一緒に行こうとした場所、ウユニ塩湖、プラハ、アイスランド等。春は何故手紙を書いてきたのか?時を同じくして結婚間近の婚約者弥生が失踪する。「愛を終わらせない方法、それは何でしょう」の謎を残して・・・。藤代に佐藤健、弥生に長澤まさみ、春に森七菜。若手のBIG3の共演で描く本格的ラブストーリーが楽しめます。
2024/03/23「流転の地球」☆☆☆★
ヒューゴ賞(SF界のノーベル文学賞)受賞小説「三体」原作者による同名短編小説を基に映画化。近未来、太陽の消滅を備え地球連合政府は地球を動かすエンジンの開発を進めている。そんな時に月が軌道を外れ地球ぶつかる方向に進んで来る。宇宙飛行士,量子科学研究者達が力を合わせて月を爆破させる計画をたてる。素晴らしい映像美と人間ドラマを組み合わせ、中国映画界がハリウッド作品を圧倒するSF超大作を生み出した。主演はウー・ジン、アンディ・ラウ、リー・シュエチェン。
2024/03/26「ブリックレイヤー」☆☆☆★
90年代に「クリフハンガー」「ダイ・ハード2」「ディープ・ブルー」等のアクション大作を送り出したレニー・ハリソン監督がポール・リンゼイ原作の傑作サスペンス小説を映画化。米国の諜報活動を非難するジャーナリストが殺された。CIAの仕業と見せかける犯人を追って元凄腕エージェントのレンガ職人スティーヴが犯人を追い詰める。主人公スティーヴにはアーロン・エッカート、相棒の女性エージェントにニーナ・ドブレフ、役者レベルはB級映画だが、レニーの老いを感じさせないノンストップアクションは大変楽しめる作品に仕上がっている。ただ、題名になっているレンガ職人は、なんの意味もなかったのは残念。
2024/03/31「オッペンハイマー」☆☆☆☆☆
世界の運命を変えたという天才科学者オッペンハイマーの栄光と没落を描いた作品。原作の伝記は2006年にピューリッツアー賞に輝いている。映像化はバットマンの新解釈「ダークナイト」シリーズ3部作で大成功を収め、「インターステラー」「ダンケルク」で名匠の地位を確立したクリストファー・ノーランが監督・脚本・製作で作りあげた。本作は本年度のアカデミー賞最多7部門を獲得した。作品賞、監督賞はもちろん、オッペンハイマー役のキリアン・マーフィー、宿敵となる原子力委員会の委員長ストローズ役のロバート・ダウニー・jrが助演男優賞を受賞した。女優陣は賞こそ逃がしたが、妻キティ役のエミリー・ブラント、かつての恋人で結婚後も関係を持つジーン役のフローレンス・ピューも素晴らしい。他では、ケネス・ブラナー、マット・デイモン、ラミ・マレック、ジョシュ・ハーネットなど多彩な共演者が顔をそろえている。ちょい役だがトールマン大統領役に名優ゲーリー・オールドマンが演じているのは嬉しいかぎりだ。これだけのメンバーを揃えて激動の時代の人間ドラマを丁寧に描いているが、登場人物が多いいので人物関係を知ってないと難解かもしれない。(可能ならば映画鑑賞
前にパンフレットを購入して読んだ方が判りやすい)また、本作はカラーとモノクロのシーンがある。カラーはオッペンハイマーの視点、モノクロはストローズの視点で描かれている。この点も事前に知っているほうが理解しやすいと思える。☆☆☆☆☆の価値ある作品なので、映画館の大きな画面で楽しんでもらいたい。
「ゴーストバスターズ フローズン・サマー」☆☆☆★
1984年全米年間興行収入NO1の大ヒット作は4年後に続編が製作された。そして、2021年スペングラー博士の孫娘フィービーが主人公の新ゴーストバスターズが誕生した。本作はその2年後ニューヨークに移り済んだスペングラー一家と母親の恋人ゲイリーの2代目ゴーストバスターズの前に、すべてを一瞬に凍らせる最恐のゴースト・ガラッカが現れる。かつての初代ゴーストバスターズの協力を得てガラッカとゴーストバスターズの死闘が始まる。前作の出演者マッケナ・グレイス、ポール・ラッド、キャリー・クーン、フィン・ウルフバードと初代ゴーストバスターズのビル・マーレイ、ダン・エイクロイドが競演。ゴーストバスターズを楽しんだ私たち世代から孫世代までが楽しめるエンターテインメント作品である。