2024年5月14日
今週の所感
村田光平(元駐スイス大使)
能登半島地震後の原子力政策
皆様
このたびの能登半島地震が今後の日本の原子力政策に及ぼす影響に関する所感をお届けいたします。
これまでも度重ねて示されてきておりますが、原子力に関しては専門家の知見よりは市民社会の直観の方が信頼できることが、
能登地震の震源地近くに建設予定だった珠洲原発を2003年に阻止した市民運動が決定的に立証いたしました。このため悲惨な結末が回避されたことに日本国民は関係者の皆様に心から感謝しております。
能登半島地震は我が国の原子力政策に下記の諸点を踏まえて根底から見直しを行うことを迫るに至っております。
- 原発はその所在国に向けられた原爆であることがウクライナの
ザボリ―ジャ原発に加えられている軍事攻撃により立証されております。平和外交の重要性が改めて痛感されます。
2.日本における原発の安全については総理大臣を含め責任の所在が不明のまま放置されております。原子力委員会もその責任を負わないことを明言しております。
驚くべき無責任体制が放置されているのが現状です。
これは許されることではありません。
- 福島原発事故の教訓は十分生かされておりません。東京五輪は
放射能の恐ろしさを軽視させることに利用されたことすら指摘されております。このような動きに対処するためには、脱原発を核廃絶の前提条件とすることが望まれます。これにより両市民運動に傾注されている膨大なエネルギーの合体が可能となります。
4.原発事故の再発が深刻に憂慮されます。稼働中の基準地震動は600ガルから1000ガル程度で、能登半島地震では最大で2828ガルが観測されております。
これまでも度重ねて基準地震動が低すぎることが指摘されてきましたが、旧態依然です。南海トラフ地震の接近を前になすすべがないのが現状です。
5.能登半島地震は改めて再稼働が不道徳・無責任であることを想起させます。原発回帰政策、そしてこれを支えるGX政策は当然修正が求められます。
6.人間の力に限界があることから、地球と人間を守ってきた
「天地の摂理」に全てを委ねることとしたいと考えております。
(了)