今週のお薦め作品 5月24日公開「バティモン5」「関心領域」
「バティモン5」は前作「レ・ミゼラブル」(ヴィクトル・ユゴーの名作とは同名の異なる作品)でカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞したラジ・リ監督の最新作。前作は監督のルーツであるパリ郊外の犯罪多発地域モンフェルメイユ(ユゴー作品と同じ場所)を舞台に警官と少年たちの対立を描いたが、本作では同地区でのもう一つ再開発問題をテーマに市政と住民の対立を描いている。華やかなパリの都と違う知らざるパリの姿を描いた問題作である。
「関心領域」は本年度アカデミー国際長編映画賞と音響賞を受賞した傑作である。アウシュヴィッツ収容所の隣に住むヘス家族の日常を描いている。収容所の出来事とは無縁の生活は一般人と変わらずアウシュヴィッツは対岸の火事ということである。本作の意図は平和に暮らす人々がパレスチナ問題、ウクライナ問題を対岸の出来事と捉えている事への警鐘である。本2作は、平和な暮らしをしている私たちが見るべき作品であり、世界の情勢を再認識して、私たちが出来る事を考えるべきと思う。