奥　義久の映画鑑賞記

2024年9月

 

＊私自身の評価を☆にしました。☆5つが満点です。(★は☆の1/2)

 

2024/09/05「ボストン1947」☆☆☆★

名作「シュリ」の監督カン・ジェギュの最新作。1936年ベルリンオリンピックのマラソン金メダリストと銅メダリストは韓国人でありながら日の丸を付けて走った。二人の祖国は日本から独立したが、国際的には難民国家のためオリンピック出場のためには国際レースでの記録が必要だった。金メダリストのソン・ギジョンは監督として若い有望な選手ソ・ユンボクにボストンマラソンで祖国の記録を取り戻すために指導するが・・・。ソン・ギジョン役は韓国のトップ俳優ハ・ジョンウ、ユンボクには注目の若手イム・シワンが演じている。祖国の国旗をつけて走る目標を描いたヒューマンドラマであり、マラソンシーンも迫力がある傑作だが、日本人が悪役的存在なのは、どこかスッキリしない感じがある。

 

2024/09/07「ランサム 非公式作戦」☆☆☆★

本作は史実に基づくアクションエンターテイメント。「ボストン1947」同様にハ・ジョンウが主人公を演じている。物語は1980年代のレバノンで韓国の外交官が拉致された。1年8ヶ月後に外交官が生きている事が判明したが、確証が得られないために外務部長官は非公式作戦として外交官イ・ミンジュンが派遣される。ベイルートで知り合った韓国人のタクシードライバー、キム・パンスと仲介人カリムの協力を得て外交官の救出は成功するが、韓国側から残金の支払いが届かない。ミンジョンたちは無事韓国に戻る事は出来るか？

 

2024/09/08「エイリアン ロムルス」☆☆☆☆

「エイリアン」1作目のリドリー・スコット監督が1作目のその後の物語を制作。ジャクソン星で働く6人の若者は、過酷な環境から逃れようと脱出を試みるが、目的までの燃料不足のため廃棄された宇宙ステーションに立ち寄る。そこは20年前にエイリアンとの死闘の場で人間は死体だけで生命力の強いエイリアンが生き延びていた。主人公のレインを演じるのは「プリシラ」でヴェネツィア国際映画祭の女優賞を獲得したケイリー・スピーニー、第1作のリプリー役同様にエイリアンとの新たな戦いに身を置くことになる。さすがにリドリー・スコット制作だけあり、出来ばえの良い作品に仕上がっている。「エイリアン」を見たことのない人達も楽しめる作品。

 

「夏目アラタの結婚」☆☆☆★

ビックコミックスペリオール連載のベストセラーコミックの実写映画化。連続バラバラ事件の犯人・品川ピエロこと品川真珠は3人の被害者の一部のみを隠した。頭部が見つからない知り合いの子供のために児童相談員の夏目アラタは真珠と獄中結婚する。アラタと真珠の駆け引きが始まる。アラタ役は若手実力派の柳楽優弥が演じる。真珠役は黒島結菜が熱演。見ごたえのある獄中サスペンスである。

 

2024/09/13「スオミの話をしよう」☆☆☆★

三谷幸喜の脚本・監督最新作。大富豪の妻スオミが姿を消した。やがてスオミが誘拐されたと知り、スオミの夫は元夫たちの協力を得て救出に乗り出す。スオミを語る夫たちのスオミは全く違う性格のスオミだったが・・・。5変化ともいうべき5つの性格のスオミを演じるのは長澤まさみ。5人の夫たちに遠藤憲一、松坂桃季、小林隆、西島秀俊、坂東彌十郎の芸達者な曲者が揃っている。他に瀬戸康史、宮澤エマ、戸塚純貴が共演。三谷ワールドが存分に楽しめます。

 

2024/09/16「シサム」☆☆☆★

アイヌ和人との確執を描いた時代劇。舞台は江戸時代前期、蝦夷地と呼ばれる北の大地は松前藩の領地で、アイヌとの交易で松前藩は利益を得ていた。この不平等取引に不満を抱いたアイヌの村長たちは反乱を起こす計画を立てていた。松前藩の高坂考二郎はアイヌの村長に命を救われたこともあり、反乱を考えないコタン（村）であり、何とか救いたいと和平の道を探っていた。主演に寛一郎、共演に三浦貴大、和田正人、要潤、緒方直人、古川琴音等の多才なメンバーである。大物スターの出演こそないが、良質な時代劇で観る価値はある。

 

「アビゲイル」☆☆☆★

大富豪の娘で12歳のバレリーナを誘拐した犯人グループは、一晩を郊外の豪邸で監視すれば翌日に5000万ドルの身代金が入るはずだった。しかし、これは誘拐された少女たちが仕掛けた罠だった。少女の本当の姿は吸血鬼であり、犯人グループは過去に因縁があるメンバーであり、吸血鬼が彼らの命を奪うためだった。犯人グループは生き残りをかけて吸血鬼に戦いを挑む。吸血鬼アビゲイル役には天才子役のアリーシャ・ウィアーが抜擢された。犯人グループたちは、メリッサ・バレラ、キャスリン・ニュートン、ダン・スティーヴンス、ケヴィン・デューランドと本作が遺作となったアンガス・クラウドが演じている。ノンストップの新感覚サバイバルミステリーです。

 

2024/09/17「チャイコフスキーの妻」☆☆★

三大バレエ音楽・ピアノ協奏曲第1番等の名曲で知られる天才作曲家チャイコフスキーの妻アントニーナを主人公にした作品。史実を基にしながら大胆な解釈でキリル・セレブレンニコフが脚本・監督を務めている。同性愛者の噂を消すためアントニーナと結婚するが、その生活はすぐに破綻する。夫に拒絶されるアントニーナの孤独な日々が続いていく。物語だけでなく、映像全体も暗く重苦しい映画である。チャイコフスキーの音楽もあまり出てこないので、チャイコフスキーファンの方も残念な映画である。

 

2024/09/19「アシッド」☆☆☆

地球温暖化が原因で致死率100%の酸性雨が降り注ぐ中を逃げ惑う親子を主人公としたパニック・ムービー。セザール賞視覚効果賞にノミネートされたフランス映画。ギヨーム・カネが父親役を演じている。地球温暖化に関しての警鐘の思いで制作されたと思うが、ラストに未来を考えさせることもなく中途半端な感じが否めない。

 

2024/09/29「犯罪都市 PUNISHMENT」☆☆☆

マ・ドンソク主演の怪物刑事シリーズ第4弾。今度の相手は元傭兵ペク・チャンギ率いる国際オンラインカジノ組織の撲滅。マ刑事のパンチ力が売りとはいえ、相手が傭兵なら激しい銃撃戦が展開されても可笑しくないのに拳を武器に戦うのは、現実離れしている。ラストのチャンギとの対決は怒りの鉄拳制裁でも、激しい撃ち合いがあるほうがリアルと思う。