BIS論壇No.465『G20首脳会議』中川十郎24.11.26
南米ブラジルのリオ・デジヤネイロで11月18~19日、G20サミツト(主要20カ国・地域首脳会議)が11月15~16日のぺルーリマでのAPEC会議に引き続き開催された。
APEC加盟21カ国・地域の世界に占めるGDP(国内総生産)は60%であるが、G20では世界のGDPの実に85%を占め、その影響力は大きく、その意味でG20会議の内容を検討することは今後の世界の政治・経済の動向を判断するうえで重要であると思われる。
筆者は1970年代後半、商社駐在員としてブラジルのリオ・サンパウロに5年間勤務したのでブラジルは曾遊の地として思い出深い国である。ミナイスジエライス電力公社向け世銀融資によるNECマイクロウエーブ通信設備、電子交換機の初の南米向け輸出。チリ向け日本製乗用車4万台、500億円の南米向け初の大量輸出に成功したことなど思い出す。
G20サミットは2008年の金融危機をきっかけに世界経済の安定をめざして始まった。国際通貨基金(IMF)はG20の成長見通しをこの数十年で最も弱いと予測。24年のG20の経済成長率は3.4%、25年は3.2%に下がる。コロナ禍直前の19年の3.7%を下回る。これは新興国経済の減速が大きいことに起因する。なかでも中国の成長率は24年の4.8%から29年3.3%に落ち込む見通しである。
先進国の米国は2.8%から2.1%に減速。ドイツや日本は29年にそれぞれ0.5%、0.7%と落ち込みが目立つ。先進国を中心に生産性が伸び悩み、特に日本では少子高齢化が深刻になると予測している。
25年1月20日に大統領就任式を迎えるトランプ氏は全輸入品への一律関税、不法移民の強制送還などとなえており、世界貿易の混乱や物価高などで世界経済はさらに低迷するとみられている。このような動きは26年の世界GDPをさらに1.3%押し下げると予想される。世界貿易機関(WTO)はG20の貿易に関し、「内向きで一方的な政策決定の証拠が増えている」と批判。
閉会式で議長のブラジル・ルラ大統領は「最富裕層への課税強化や、2030年までに世界の再生可能エネルギ―を3倍にすること」などを確認した。
25年のG20議長国はグローバルサウス代表国の一つ南アフリカが務める。G20議長国は過去、インドネシア、インド、ブラジルと続き、25年はBRICSの雄、南アが活躍することが期待されている。ルラ大統領は「安保理を21世紀の現実と要求に合致させる」と要求した。G20としては、自由で開かれた貿易や投資を推進し、トランプ次期米大統領の保護主義的政策に対抗すべく、「保護主義に抵抗する」方針を強く打ち出した。