奥 義久の映画鑑賞記
2024年11月
*私自身の評価を☆にしました。☆5つが満点です。(★は☆の1/2)
2024/11/01「十一人の賊軍」☆☆☆☆
日本全土を巻き込んだ戊辰戦争の中、東北の奥羽越列藩同盟と新政府軍の争いを舞台にして書かれた名脚本家・笠原和夫(「仁義なき戦い」等)の原案を新たなSTAFFで制作した時代劇エンターテインメント作品。列藩同盟に属する新発田藩は新政府軍に寝返ろうとしていたが、同盟軍が城に逗留しており、新政府軍を迎え入れる事が出来なかった。新政府軍の到着を遅らせる為に犯罪者たちによる決死隊は砦を死守することになる。自由と引き換えに壮絶な死闘が繰り広げる。決死隊メンバーに山田孝之と仲野太賀、新発田藩家老に阿部サダヲ、新政府軍の参謀に玉木宏が扮している。久々にスケール感のある時代劇が楽しめた。
2024/11/02「ヴェノム ザ・ラストダンス」☆☆☆★
マーベルコミックでスパイダーマンの宿敵となるダークヒーローを主人公にしたヴェノム・シリーズの最終作。本作ではヴェノムと一心同体になったエディがヴェノムの隠された秘密を知り、最強のシンビオートと壮絶な戦いが始まる。二人の最後の共闘を描いたアクションエンターテイメント。もちろん主人公エディを演じるのはトム・ハーディ、最悪の最後を熱演している。
2024/11/08「ACMA:GAME 最後の鍵」☆☆☆
大ヒットコミックがTVドラマ化し、その最終編が映画化された。99本の悪魔の鍵を賭けたデス・ゲームは最終局面を迎えていた。人類の存亡をかけて、すべての鍵を破壊しようとする織田照朝とその仲間達と悪魔との最終決戦を描いているが、映画化するほどのスケール感もなく悪魔の風貌もTV向きで映画館に足を運ぶような作品とは言えない。
2024/11/12「動物界」☆☆☆★
本年の第49回セザール賞最多12部門ノミネート作品。残念ながら受賞は11部門ノミネートの「落下の解剖学」が主要6部門を受賞したため、作品賞等は受賞に至らなかったが音楽賞、撮影賞、音響賞、視聴効果賞、衣装デザイン賞の5部門を受賞した。従来のフランス映画らしからぬ作品だが、本国では100万人超えの大ヒット作品となった。舞台は近未来。人類は原因不明の突然変異による身体が動物化する奇病に見舞われていた。凶暴性のため施設に隔離されていたが事故のため新生物は森に逃げ出した。フランソワの妻もその一人で、フランソワは16歳の息子エミールとラナの行方を捜していたがエミールにも体の変調が起きて来た。人間と新生物の分断化する中で親子はどのような未来を選択するのか?本作は近未来スリラーであるが、家族の愛のドラマでもある。一見の価値がある。
2024/11/17「室井慎次 生き続ける者」☆☆☆★
先月公開の「室井慎次 敗れざる者」の続編。本作では、室井家の近くで発見された死体遺棄事件の解決、里親室井と子供たちの信頼関係が描かれている。特に日向杏との関係修復とリクの父親による問題で室井家の転機が訪れる。室井慎次が最後まで守ろうとする家族への思いが伝わる感動作である。
2024/11/22「アングリースクワッド」☆☆☆
「カメラを止めるな」の上田慎一郎監督の最新作。「カメラを止めるな」は無名俳優を使った自主作品だったが、社会現象を巻き起こした大ヒット作となり、新作には内野聖陽、岡田将生、小澤征悦等が集まり痛快なクライムエンターテインメント作品が仕上がった。まじめな公務員と天才詐欺師がタッグを組み、脱税王から10億円の税金徴収をする奇想天外な騙しあいバトルが面白い。
2024/11/23「海の沈黙」☆☆☆☆
「北の国から」「やすらぎの郷」の名脚本家・倉本聰の原作・脚本で日本映画の名作が誕生した。美を追求する孤高の天才画家の半生を通して、人間にとって至高の美と至高の愛を描く作品。世界的画家・田村修三の展覧会で代表作が贋作と判明した。田村は本物以上の作品を観て真相を求めて、若き日に姿を消した天才画家・津村竜次を探し求める。天才画家の津村に本木雅弘、日本画の大家・田村に石坂浩二、田村の妻でかつての津村の恋人に小泉今日子が扮している。中井貴一、仲村トオル、清水美沙らが脇を固めている。
本年度の日本映画ナンバー1に推す作品といえる。
「六人の嘘つきな大学生」☆☆☆★
大手エンターテインメント企業の新卒採用で最終選考に残った6人の大学生。最後の課題は六人のグループディスカッションとなり、全員で内定獲得を目指すが、勝ち残るのは1名だけと通達される。会議室と言う密室でライバル追い落としが始まる。ユニークな着想で描かれるエンターテインメント、最後まで見逃せない作品。六人の学生には、浜辺美波、赤楚衛二、佐野勇斗、山下美月、倉悠貴、西垣匠が扮している。
2024/11/25「対外秘」☆☆☆★
「悪人伝」の鬼才イ・ウォンテ監督の最新作。90年代の釜山を舞台に与党公認候補を約束された政治家へウンが公認を外される。与党の黒幕スンテが自分の言いなりになる男に候補を変えたのだ。ヘウンは無所属で出馬し、圧倒的有利に見えたがスンテの策略で落選となる。清廉潔白だったヘウンは政治の裏世界を知り、権力を掴むため悪の世界に踏み込む。ここまでやるのかと言うくらいの醜い争いを展開するのは映画の世界だけとは言えないと思う。本作を観ると選挙の投票に行くのも嫌になってしまう。本年の韓国映画初登場第1位になった作品だけに、予測不能なサスペンスの問題作1位と言える作品。チョ・ジヌンの演技も素晴らしい。
2024/11/29「山逢いのホテルで」☆☆☆★
名優ジャンヌ・バリバール主演の最新作。スイスの実在するホテルを舞台に主人公のクローディーヌは週に1度一人旅の男を選んで女になる。普段は障害のある息子に献身的な愛を注ぐ良き母であるが、つかの間現実逃避がクローディーヌの支えとなっていた。ある日出会った男との間で再びクローディーヌが女として目覚め始める。男と息子の間で悩むクローディーヌの最後の決断は・・・。難役を演じるバリバールは2017年に「バルバラ セーヌの黒いバラ」でセザール賞主演女優賞を獲得、前作の「ボレロ 永遠の旋律」では圧巻のダンスシーンを見せている。今回も素晴らしい演技で適役のはずが、大人のラブロマンスを演じるのにはもう少し美人の女優を使って欲しかったと思うのは私だけだろうか?
2024/11/30「JAWAN ジャワーン」☆☆☆★
インド映画の歴代5位の興収200億円の大ヒットアクションエンターテイメント。“キング・オブ・ボリウッド“のシャー・ルク・カーン演じるダークヒーロー。地下鉄ハイジャックで政府から身代金を奪い、そのお金を貧民に配る。謎の男と6人の女性部下が逃亡先に選んだのは女子刑務所。その目的は?痛快なノンストップ・アクションが観客を満足させる。
「ザ・バイクライダーズ」☆☆☆★
1960年代のアメリカ・シカゴ。バイクに夢中な若者たちの青春の輝きと破滅を描いている。実在したモーターサイクルクラブをモデルにした作品。主人公ベニーには「エルヴィス」のオースティン・バトラー、その愛妻に「最後の決闘裁判」のジョディ・カマー、グループのリーダーには「ヴェノム」シリーズのトム・ハーディという豪華スターの競演で、バイク映画史の名作「イージーライダー」に匹敵する作品を作りあげた。