奥 義久の映画鑑賞記
2024年12月
*私自身の評価を☆にしました。☆5つが満点です。(★は☆の1/2)
2024/12/08「ホワイトバード はじまりのワンダー」☆☆☆★
大ヒット作「ワンダー 君は太陽」のスピンオフドラマ。いじめっ子のジュリアンの6年後の再生を描いている。再生のきっかけとなる祖母の経験談を話すのは名女優ヘレン・ミレン。祖母が経験したユダヤ人への迫害、命がけで救ってくれた少年とその両親。「勇気ある行為のすばらしさ」を教えてくれる感動作。ヘレン・ミレンが演じる祖母役の若き日を演じているアリエラ・グレイザーの好演は注目に値する。
「ふたりで終わらせる」☆☆☆★
コーリン・フーヴァーのベストセラー小説の映画化。フラワーショップを開く夢を実現させるためボストンにやって来たリリーはクールなイケメンな脳神経外科医のライルと出会い恋に落ちる。二人の熱烈な愛はライルの独占欲となり、暴力まで振るうようになる。そんな時初恋の相手と再会して人生の岐路に立つが・・・。
主演のブレイク・ライリーはプロデューサーを務め、ライル役のジャスティン・バルトーニも監督を兼務している。二人の熱い気持ちが世界的大ヒット作を誕生させたと言っても過言でないだろう。
2024/12/14「クレイヴン ザ・ハンター」☆☆☆★
クレイヴンはマーベラスコミックでスパイダーマンの宿敵として描かれている。本作では悪の組織を容赦なく叩き潰すハンターとして登場する。過激なバイオレンスアクションが楽しめる作品です。主人公のクレイヴンには、アーロン・テイラー・ジョンソンが扮している。対立する冷酷な父親役にはラッセル・クロウが扮している。
「正体」☆☆☆☆★
染井為人の原作小説を「余命10年」の藤井道人監督が極上のサスペンス映画に仕立てた。一家惨殺犯として死刑宣告を受けた鏑木が移送中の護送車から脱走する。別人として生きながら逃走を繰り返す鏑木の目的は何なのか?鏑木を追い続ける刑事・又貴も真相に近づいていく。先月公開された「海の沈黙」が本年の日本映画ベスト1と書いた直後に素晴らしい作品が公開されて映画ファンとしては嬉しい限りである。横浜流星が一皮むけた好演をしている。吉岡里帆、山田孝之、田中哲司、原日出子、松重豊等が脇を固めている。
2024/12/19「エイミーのすべて」☆☆☆☆
2011年7月、27歳で早逝したエイミー・ワインハウス。歌手を夢見る少女時代から「バック・トゥ・ブラック」でグラミー賞5部門受賞という栄誉に輝いた半生を描いた音楽伝記映画。エイミー役にはマリサ・アベラが抜擢、本作の熱演により、スティーヴン・ソーダバーグ監督のスパイ映画でケイト・ブランシェットとの競演も決まった。
2024/12/20「ライオンキング:ムファサ」☆☆☆
2019年公開の超実写版(実写とCGの合成)「ライオンキング」はシンバの王への途が描かれていた。シンバの父で偉大な王ムファサは如何にして、この草原の偉大な王になれたのか?本作はムファサの幼い日の悲劇から王になるまでの苦難の途を描いている。
前作以上の素晴らしい映像と新曲で、あらたなディズニー映画の代表作が誕生した。
2024/12/21「お坊様と鉄砲」☆☆☆☆
デビュー作「ブータン 山の教室」が大ヒットしたパオ・チョニン・ドルジ監督の2作目。本作はブータンの民主化に伴い、実施される選挙による民衆の姿と高僧から銃を手に入れるように指示された若い僧が巻き込まれる騒動を通して幸せとは何かを問いかけています。各国の国際映画祭で観客賞を受賞した作品です。映画のマイナー国の作品ですが、一見の価値があります。
2024/12/22「太陽と桃の歌」☆☆☆★
ベルリン国際映画祭の最高賞である金熊賞受賞作。カタルーニャで三世代の大家族で桃農園を営むソレ家は例年通り桃の収穫を迎えようとした時に、地主からソーラーパネル設置のため土地を明け渡すように言われる。祖父の代の時の口約束のため反論できず、
家族の意見もバラバラになり、収穫は始まろうとする。土地再開発に戸惑う家族の物語を通して、農家の未来、世界の未来を問いかけている。カルラ・シモン監督は長編2作目にしてヒューマンドラマの傑作を作りあげた。
2024/12/25「Doctor-X FINAL」☆☆☆
フリーの天才外科医・大門未知子の活躍を描いたTVシリーズは2012年にスタートして7シリーズの長寿人気番組となった。シリーズの最後を飾るのは劇場版となり、大門未知子の誕生と神原晶の出会いも描かれている。本作では、その神原への復讐を誓う男が東帝医大の病院長として赴任してくる。一話完結型のTVシリーズが映画となると少し間延びした感じもあり、今回のファイナルはは出来としては今一だった。いつものレギュラーメンバーは全員参加だったが西田敏行の遺作となったのは残念である。合掌。
2024/12/29「占領都市」☆☆☆
「それでも夜は明ける」でアカデミー賞を受賞したスティーヴン・マックィーン監督の最新作。オランダの首都アムステルダムを舞台にホロコーストの悲劇を忘れないために4時間11分という長尺のドキュメンタリー映画を完成させた。今回のドキュメンタリー映画は斬新な手法で過去を振り返っていく。ユダヤ人の迫害の現場の現在の姿を35mmフィルムで納め、過去の出来事をナレーションで伝えていく。ホロコースト当時のフィルムは一切使われていない。現代のアムステルダムの風景だけでなく、時には制作時のコロナ問題やウクライナ難民問題の画像も使い、80年前の悲劇が型を変えて悲劇を生んでいる事を主張している。マックィーン監督のこの挑戦的な作品は、専門家の間では高評価されているが、私はここまでの長さで訴える必要性には疑問を感じざるを得ない。ホロコーストを忘れてはいけないが映画が持つエンターテイメント性がなく面白さが無い作品である。
2024/12/31「ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い」☆☆☆★
アカデミー賞の最多受賞作「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン監督が中つ国の200年前の話を制作総指揮として完成させた。本作はアニメ映画として作成され、監督は日本の神山健治である。偉大な王ヘルムが統治するローハンがウルフから攻撃される。ローハンの運命を託されたのはヘルム王の娘ヘラ王女だった。壮大なスケールのアニメーション映画でファミリーが揃って楽しめる作品。同時期公開の「ライオンキング:ムファサ」より見ごたえがある。