BIS論壇No.481『ASEANの動向』中川十郎 25年6月3日
アジアの時代に躍進しつつあるASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国は、トランプ高関税が発動される中、このほど中東・中国との初の首脳会議を5月27日にマレーシアの首都クアランプールで開催した。
サウジアラビアなど中東湾岸諸国で構成し、石油資源を基に発展しつつある湾岸協力会議(GCC)と中国も招待し、今後貿易や投資拡大で関係を強化するものとみられる。
トランプ米政権の高関税策を受け、米国抜きの国際秩序の到来を見据えた動きが加速するとみられる。議長を務めたマレーシア・アンワル首相は『連携を深め、繁栄を実現する。
多極化というパートナー網の再構築に成功した』と述べた由。(5月28日朝日新聞)
参加国はASEAN10カ国と中国、サウジ、カタールなどGCC6カ国の有力17国が初参加。将来発展するこれらアジア、中東諸国が経済連携枠組みを発足させることで同意したという。
ASEANとGCCは2023年、サウジで初の首脳会議を開催。アンワル首相はASEANとGCCの自由貿易協定を提唱した。4月には中国の習近平国家主席をクアランプールに迎え、地域横断の経済連携枠組みの発足につなげた。
GCCは中東湾岸諸国のサウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーン、カタール、バーレーン、、クエートで構成されている。GCCと中国、ASEANを合わせると世界のGDPの4分の1、域内人口は21億人に達する巨大市場となる。
今後これらの国で「米国抜き」で連携し、貿易や投資を促進し、製品供給網の強化がさらに進むと思われる。
わが日本としても、その動向に十分留意することがトランプ高関税策対応のためのグローバルマーケテイング戦略上も肝要であろう。
ASEANと中国・GCCの貿易額は対米国の2倍に達する。GCCの人口は5760万人。GDP2.1兆ドル。中国の人口14億1000万人。GDP17.8兆ドル、ASEANは人口6億7000万人、GDP3.7兆ドル。
これに対し、米国は人口3億3000万人、GDP27.7兆ドル。ASEANのGCC及び中国向け輸出は9439億ドル。これに対し米国向けは半分の4727億ドルだ。
ASEAN諸国はトランプ関税緩和のために中國、中東への接近を強化しつつある。こ
のままでは日本のASEANに対する影響力低下の恐れがある、日本の対応策が望まれる。