BIS論壇No.485『BIS―AI・半導体研究部会』中川十郎 25・6・12
首記部会の6月12日の第2回研究会開催に関し,若干の見解と情報を下記紹介したい。
米国競争情報専門家協会(Society of Competitive Intelligence Professionals-SCIP)幹部で1988年以来37年情報研究で交流しているEllen Naylorさんは 名著“Win Loss Analysis-How to Capture and Keep the Business You Want―でも有名だ。日本でも競争情報について講演されたこともある。米国で長年インテリジェンス研究、講演で活躍しておられる。
そのEllenさんから最近AI(人工知能)について興味ある見解をメールでいただいた。
彼女の意見によると「AI活用も大切だが、その際、人と人との会話による情報交換、すなはち「人的情報」(Human Intelligence-HUMINT)の交換の重要性を認識すべきであるとの貴重なアドバイスを頂いた。AIでは瞬時に情報を入手できるが、その情報は多くのデーターから分析した有用な情報だが、片道通行の概略情報であることは否めない。
それらのAI情報に人的情報を加味することの重要性を指摘されている。長年、ビジネスインテリジェンス研究に従事している筆者としてはEllenさんの意見に同感である。
かってBIS名誉顧問としてご指導を頂いた中野陸軍諜報学校出身の小野田寛郎・元陸軍情報将校は「情報を提供した人物、情報源の信頼性を十二分にCheckすること」を強調された。 AI時代においてもAIが提供する情報源に十二分に留意することが肝要だと痛感する次第だ。
それにしても最近のAIブームには驚いている。筆者には情報研究関連のメールが毎日国内外から60~80通届く。ジャンクメールも10~20通あるが、それでもこのところAI関係情報がセミナー案内を含めて国内外から毎日10通近くもある。
4月3日に開催のBIS第192回情報研究会でご講演いただいた米大統領選挙に緑の党から出馬されたエマニュエル・パストリッチ元エール大学客員研究員は米国ではイーロン・マスク氏がAI Governance-AI行政で公務員をAIサービスに代行させ、メデイア、仕事、政府、教育、芸能、交通、通貨、医療すべての面でAIを強制使用させる動きを紹介いただいた。7月28日に東京で開催の恒例の米コロンビア大学講演会でも『「AI」、「ブロックチェイン」、「暗号資産」から読みとくデジタル経済の最前線』と題してパネル討論が行われる。AI研究で有名な東京大学松尾研究室の今井翔太氏は著書『生成AIで世界はこう変わる』(SB新書)で「生成AIの登場で我々の価値観が大きく変わり、仕事やビジネスのありかた、人々の生活スタイルも変革期にあることを力説しておられる。5月10~17日号の『週刊東洋経済』は「対話型エージェントへすすむAI進化の最前線」、「AIバブル」に関し特集を組んだ。「日経」6月11日夕刊はメタのザッカーバーグCEOがこのほど汎用人工知能(AGI)を開発する新しい専門チームを立ち上げたと報じている。注目が肝心だ。