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        2020年4月3日発行
        世界の最新トレンドとビジネスチャンス
        第197回
        パンデミックとなった新型コロナウィルスの破壊力:トランプ大統領も危うい(後編)

         

        浜田和幸

         

        ウェブで読む:https://foomii.com/00096/2020040310000064525
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        一方、同じヨーロッパでも日本と同じ島国のイギリスも
        大変な状況に陥っている。イギリスのジョンソン首相は
        「英国版トランプ」と呼ばれるが、3人目の奥さんとの間に子供ができたという。その点でもトランプ大統領と張り合っていることは間違いない。ダウニング街10番地の首相官邸に未婚の相手と同居するという前代未聞ぶりだった。しかし、妊娠が判明し、二番目の夫人との離婚調停も終わったため、ようやく晴れて正式に結婚となるようだ。

         

        しかし、めでたいことばかりではないのが今のイギリスだ。何しろ、あの無敵のジェームズ・ボンドの『007』が立ち往生してしまっているくらいだから。初の日系人監督ジョージ・フクナガの下での脚本の書き直し、撮影と編集に時間がかかり、4年ぶりの新作「ノー・タイム・トゥ・ダイ」がようやく完成したにもかかわらず、公開上映の目途がたたない。その理由はCOVID-19の蔓延だ。イギリス政府は5000人以上の集会を禁止した。

         

        実は、4月に予定されていた映画『007』シリーズ最新作の北京でのプレミアム上映も中止となった。ボンド役のダニエル・クレイグにとっては5作目となるのだが、彼が主役を演じるのは最後になるといわれている。最後の強面ボンドということで、中国でのプレミアム上映にはクレイグ本人はもちろん主要キャストが勢揃いし、中国主要都市を回る予定だった。すべてがキャンセルというわけだ。

         

        当初4月3日にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで予定されていたプレミアム上映会であったが、ジェームズ・ボンドのファンクラブ「MI6-HQ」は「夏以降への延期」を申し入れた。その理由は「ファンの健康と安全を最優先すべき」というもの。また、ハリウッドを抱えるカリフォルニア州やエンターテインメントの中心地ニューヨーク州での感染拡大を受け、アメリカでの『007』の公開も11月に延期が決まった。日本での公開時期も未定である。

         

        いずれにせよ、イギリスではスコットランドを含めて、感染が拡大を続けており、ジョンソン首相の指揮の下、医療と安全保障の専門家で構成する緊急事態対応の「ウォールーム」が設置された。その背景には保健省がまとめた「COVID-19:理性的な最悪のシナリオ」と題する衝撃的な内容の報告書がある。それによれば、「最悪の場合、イギリス国民の8割が感染し、国民50万人が死亡する」というから驚く。「大半の感染者は軽症で終わるだろうが、致死率は3%程度が想定される」。

         

        「感染は雪だるま式に拡大する可能性があり、現時点は初期段階に過ぎず、今後2、3か月以内に爆発的に広まる恐れがある」とのこと。そのため、保健省は「全国11か所の指定病院と100か所の診療所で万単位の検体採取を行い、
        感染拡大の予防に努める」とも表明。

         

        ロンドン王室カレッジのファーガソン医学博士曰く「未知の病原菌の発生であり、最も恐るべき事態が進行中だ。イギリス人が50万人死んでも不思議ではない」。ジョンソン首相は「緊急事態に対応するため、最近引退した医師や看護師など医療従事経験者と軍に対してスタンバイを指示できるよう、新たな法を整備する。警察にも余程の重大犯罪でなければ、感染防止を優先するように」とまで発言。「ささいな軽犯罪は無視してもいい」と言うことだ。

         

        その上で、「体調不良を訴える国民は年齢や地域を問わず速やかに診察が受けられる体制を作らねばならない。事態は切迫している。しかし、保健省はじめ政府機関は対応に余念がないので、安心してほしい」と付け加えている。

         

        こうしたイギリスでの緊急事態対応を見ると、同じ島国でありながら、日本の対応は危機意識が欠落しているように思える。現下の状況はまさに戦時態勢そのものである。「COVID-19」という姿の見えない敵に対処するには非常事態に取り組む覚悟と感染遮断のための徹底的な行動規制対策が求められる。安倍政権の下、緊急事態宣言が相次ぎ、学校の休校や大人数の集会の自粛などが要請されている。とはいえ、強制力が伴わないため、「ザル法」状態と言っても過言ではない。

         

        現在、夏場にありウィルスが自然に弱まることが期待されていた南半球に位置するオーストラリアやニュージーランドでも、感染者が拡大している。ということは、気温が上がればインフルエンザのように感染力が弱まるという保証はないのである。オーストラリア国立大学がまとめた最新分析によれば、「最善の場合でも、世界では1500万人が死亡し、世界のGDPは2.4兆ドル減少する」とのこと。

         

        「最悪」ではなく、「最善」の場合で、これである。肝に銘じたい。目には見えないウィルスという世界共通の敵に打ち勝つには、個人レベルでは免疫力を高める努力と、国家レベルでは国際的な協力体制の下での封じ込め対策が欠かせない。そして、企業レベルではITやAIを駆使した感染経路の把握アプリやテレワークに必要なソフト開発が早急に求められる。

         

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