新型コロナウイルスについて思う事
東京山手メディカルセンター 井上博睦 (医学博士)
人と人の交流が増えてゆくことは今の時代に仕方ないことですが、一方でそうした社会に「適応」したウイルスも、やはり出てくるものなんですね。
太古から病原体は人類もしくはそのほかの生命体に巧みに寄生してきました。
人と人は、どうしてもつながりがあるもの。
この切っても切れない関係に、病原体がうまく入り込んでいるといえばそうですね。
古い歴史でいえば、性病などもまさにそうですね。
命をつなぐ行為を「密」だからと回避できるかといえばそうではない。
であるからこそ、HIVはおろか、まだ人類は淋病や梅毒さえ完全に駆逐できていません。
しかし、人に親和性のある病原体はたいして強い毒性をもっていない、ともいえます。
もし強い致死性があれば、人から人へ、とうつす前に、ウイルス自分自身を増やすことができませんので。
その意味でこのコロナウイルス、かなり巧みだなと思ってしまいます。多くの人の命は取らない。
けれども、低い頻度ですが、重症化することもある・・。
厄介ですね。
仮に人類がこのウイルスに対しての特効薬を作り出せても、第二、第三の新興感染症が起きてくるのかも。
そう考えると、ちょっと憂鬱になってしまいます。
しかしこの感染症が明けたあとは、少なくとも世の中が少し変わっているのかもとも思います。
それが、願わくばよい方向であってほしいと切に願うばかりです。