奥 義久 の 映画鑑賞記
2020年1月
*私自身の評価を☆にしました。☆5つが満点です。(★は☆の1/2)
2020/1/04 「ロング・ショット」☆☆☆☆
大統領候補の美人政治家と失業中のさえないジャーナリストのありえない恋の行方を描くロマンチックコメディ。主人公の国務長官にオスカー女優シャーリーズ・セロン、相手役のジャーナリストのフレッド役には人気コメディ俳優のセス・ローゲン。新年早々楽しく笑えるハッピーエンド作品を観て、良い年始めに!
「マニカルニカ ジャーンシーの女王」☆☆☆★
1857年のインド大反乱で英国の植民地支配に反旗を翻した女王マニカルニカの半生を描いた歴史活劇。アクション、歌・踊りと三拍子揃ったインド映画だけに楽しめる作品。
2020/01/10「パラサイト 半地下の家族」☆☆☆☆☆
第72回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。さすが、ポン・ジュノ監督作品、前年のパルムドール受賞作「万引き家族」が同じ年度なら受賞出来なかったと思うほどの出来。半地下に暮らす失業中の家族が長男の友人の紹介で大豪邸の娘の家庭教師として入り込む。長男は妹も小学生の息子の家庭教師、父親を運転手、母親を家政婦と一家で豪邸家族から雇われる身分となるが、その豪邸には家主の知らない秘密が隠されていた。予測不可能な展開と面白さの超一級エンターテインメント作品。
2020/01/11「フォードVSフェラーリ」☆☆☆☆★
ル・マン24時間レースを題材にした映画で思い出すのはスティーヴ・マックィーン主演の「栄光のル・マン」で、一人のレーサーを主人公にしたフィクション。今作は実話に基づいた作品だけに、レースだけでなく、男たちのプライド・友情・家族愛そしてタイトルのフォードとフェラーリの企業同士の意地といった人間ドラマも描かれています。主演もマット・デイモンとクリスチャンベイルの実力派スターの競演も見ごたえがあります。
「ダウントン・アビー」☆☆☆★
英国の大ヒットテレビシリーズ(6シーズン全56話)の映画化。今回の物語は、英国国王夫妻のダウントン・アビー訪問という一大事に対応するグランサム伯爵家の人々を描く。スキャンダル・ロマンス・陰謀・王室のしきたり・華やかな舞踊会等の見せ場たっぷりの群像劇。キャストはアカデミー賞受賞の大ベテラン、マギー・スミス以外はあまり知られていない俳優だが、テレビドラマのメンバーが揃い息の合った好演をしている。スカパーでは1話からのレギュラー放送が1月22日(吹替版は27日)からスタートするそうですので、興味ある方はご覧ください。
2020/01/12「ティーンスピリット」☆☆☆★
アカデミー賞受賞のミュージカル「ラ・ラ・ランド」のスタッフが再結集して製作した青春音楽映画。イギリスの田舎町に住む高校生が歌のオーデション番組にチャレンジする物語。夢を求める女子高校生役は「マレフィセント」でオーロラ姫を演じたエル・ファニング。今回エルは吹替えを使わず見事な歌唱力を披露している。
これからは、ミュージカルや歌の世界にも活動が拡がると思える本格的なパフオーマンスを披露しているので、期待したい。今作はエル・ファニング以外に有名スターが出演してないので、小品のイメージがあり「ラ・ラ・ランド」や「ボヘミアン・ラプソディ」のような興行的成功はしないかもしれないが青春音楽映画の秀作であり、楽しめるので万人に観て欲しい作品。
「カイジ ファイナルゲーム」☆☆☆
「ヤングマガジン」連載の人気コミック映画第3弾。今回の9年ぶりの新作は原作者による映画のための完全オリジナル。今回は国の国民をないがしろにする政策阻止のためにギャンブルに挑戦するカイジの活躍を描く。もちろんカイジ役は前2作同様藤原竜也、対する敵役に福士蒼汰と吉田鋼太郎が演じている。普通に楽しめるので時間のある方はどうぞ、という感じ。
「アパレル・デザイナー」☆☆☆
老舗のアパレルメーカーが時代の波に乗れず経営危機に陥る。復活を賭けて対立する2代目社長とその弟の専務。専務は社長と喧嘩別れしたデザイナー藤村を呼び戻して新しいブランドを立ち上げようとする。主役のデザイナーに高嶋政伸、高島礼子、西村まさ彦、堀田茜らが共演。新しいブランド立ち上げの裏舞台も見られ、アパレルに興味ある方には面白い作品。
2020/01/13「だれもが愛しいチャンピオン」☆☆☆☆★
2018年スペイン映画興行収入第1位、ゴヤ賞3部門獲得の作品。プロバスケットチームのサブコーチ・マルコは有能だが短期な性格のため問題を起こしチームを解雇。マルコは裁判所命令で障害者のバスケチームを指導することになる。障害者チームアミーゴズとの出会いがマルコの新しい人生への扉を開く事になる。障害者チームのメンバーには障害を持つ600人のオーデションから選ばれた10人が演じており、その中の一人がゴヤ賞史上初めての障害者の新人男優賞の栄冠に輝いた。心温まる感動作を新年早々に観れた事は、今年も良い映画にたくさん巡り合える前兆といえる。
2020/01/14「フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて」
☆☆☆★
現役漁師バンド“フィッシャーマンズ・フレンズ”の奇跡のメジャーデビューの実話を基に描いた作品。レコード会社のマネージャーのダニーが浜辺のライブで聞きほれた漁師バンド。ダニーはこの素晴らしい歌声をメジャーデビューさせようと活動する。ダニー役にダニエル・メイズ、バンドのリーダージムにジェームズ・ピュアフォイ、ジムの娘でダニーと恋に落ちるシングルマザー役には映画版「ダウントン・アビー」のルーシー役で注目をあびたタペンス・ミドルトンが出演している。音楽ファンには、最高に楽しめる映画です。
2020/01/17「ジョジョ・ラビット」☆☆☆☆☆
トロント国際映画祭観客賞受賞。アカデミー賞6部門ノミネートが決った作品。ヒトラーを尊敬するヒトラーユーゲントの少年ジョジョは心優しい少年で動物を傷つけることも出来ない。ある日屋根裏部屋に隠れているユダヤの少女と知り合う。子供の目を通して異常なヒトラーの時代を描き、人種差別反対のメッセージを出している。重たいテ-マだが、映画の面白さが重たさをふきとばしている。ジョジョ役はオーデションを勝ち抜いた少年だが、母親役にスカーレット・ヨハンソン、ナチの教官にサム・ロックウェルとレベル・ウィルソンの芸達者たちが顔をそろえている。
2020/01/18「ダンス・ウィズ・ウルブス」1990年作品
旧作なので評価欄にはつけませんが、☆5つの満点の作品。壮大な荒野でのバッファローの暴走シーンの迫力も凄いの一言だが、先住民のスー族と心を通わせ共に生きて行く主人公の姿は現在の移民に対するトランプの政策と比べると面白い。今作は午前10時の映画祭の上映なので短期間の上映だが、ぜひ映画ファンだけでなく多くの人に観て欲しいと思う。(関東地区は日本橋、横浜等で23日まで、24日~2月6日まで新宿、錦糸町、上大岡で上映)本作は1990年のアカデミー賞を作品賞、監督賞等7部門の栄冠に輝いている。初監督でアカデミー監督賞を受賞したケヴィン・コスナーは、この映画の中で話されるのは、スー族のラコタ語のため大手映画会社が出資しなかったので私財をすべて投資して創り上げたという。もちろん主演もコスナー自身である。
「記憶屋 あなたを忘れない」☆☆☆
シリーズ50万部の角川ホラー文庫「記憶屋」の映画化。映画を観た限りはホラーでなくファンタジーロマンの作品。ある日突然恋人杏子に自分の事を忘れられた遼一は、都市伝説と言われている記憶を消せる“記憶屋”に記憶を消されたのではないかと“記憶屋”を探し始める。そこには15年前の幼馴染真希の事件も関わっていた。遼一役はHey!Say!JUMPの山田涼介、事件の鍵を握る幼馴染に実力派若手女優芳根京子、記憶を消された年上の恋人に蓮佛美沙子、遼一の良き協力者に佐々木蔵之介、他に田中泯、杉本哲太、櫻井淳子、戸田菜穂、佐々木すみ江が脇を固めている。ラストの優しさと切なさの交差したシーンは明るい未来があると信じたい。
「太陽の家」☆☆☆
長渕剛の20年ぶりの主演映画。長渕演じる大工の棟梁はいっぽんぎでお人よし、さらに女性には優しい。家族のことも考えずに人の子の世話をやく男。今時こんなおとこはいないと思う泥臭い映画。長渕ファンには怒られるが個人的にはあまり好きでは映画だ。それでもしっかりものの女房役の飯島直子、長男役の瑛太の好演もあり、家族の絆の素晴らしさを思い出させる作品に仕上がっている。
「ラストレター」☆☆☆☆
同日に3本の日本映画を観たのははじめてかもしれない。この日は午前10時の映画祭の3時間の大作も見たので5本分の映画を鑑賞した。最後が本作だが鑑賞疲れを忘れさす、物語に引き込む秀作であった。さすがにラブストーリーの名監督岩井俊二の作品である。監督の出身地宮城を舞台に手紙に託した純愛の感動作を創り上げた。松たか子、福山雅治のW主演に広瀬すず、神木隆之介、森七菜、庵野秀明、中山美穂、豊川悦司ら豪華メンバーで過去(初恋)と現在(心の再生)が描かれる。
2020/01/19「私の知らないわたしの素顔」☆☆☆★
フランスを代表する女優ジュリエット・ビノシュは「真実」で母との確執、「冬時間のパリ」では友達のご主人との不倫、そして本作では50代の大学教授が24歳クララとしてSNSで出会った男と疑似SEXをする。立て続けに難役に挑戦している。今回は一番アクティブな女性を演じており、ラストシーンは女の怖さを見せている。本作はヒッチコック・サスペンスを思わせる上質なサスペンス映画といえる。
「マザーレス・ブルックリン」☆☆☆★
俳優エドワード・ノートンが原作を気に入り映画化、主演とプロデューサーだけでなく監督(2作目)と脚本も担当している。それだけにジョナサン・レセムの原作を気に入ったと思うが、レセム自身の同意を取り付けて時代背景を変え、改変している。原作の1999年を1957年まで過去にもどしており、敵役も日本企業から都市開発業者に変更している。主人公は障害を持つが抜群の記憶力のある私立探偵で恩師の死の真相を探ろうと行動する。今は懐かしいハードボイルド探偵ものであり、ノートンは50年代のニューヨークこそがハードボイルド小説(映画)に向いていると感じたのだと思う。主人公を演じるエドワード・ノートンと共演するのが、ブルース・ウィリス(恩師フランク)、アレック・ボールドウィン(敵役のボス)、ウィレム・デフォー(事件の鍵を握る男)といった大物。ハードボイルド映画といえばハンフリー・ボガードだが、ボガート映画の再来の雰囲気が楽しめる作品。
2020/01/20「ナイト・オブ・シャドー 魔法拳」☆☆★
コメディタッチのカンフー映画は初期の「酔拳」のジャンルに入るり、ジャッキー・チェンの原点とも言える。今回は少女失踪事件にからむ妖怪退治の話である。少しハチャメチャすぎるのと孫悟空に出てくる猪八戒のような弟子がいたりして子供向けとしては楽しめる。ラストの地獄での争いはさすがにジャッキー映画の本領発揮もあり、ファミリーで楽しむ事も出来る。さらに特殊メークでなく65歳のジャッキーを20代の顔にしているVFX技術は必見!ジャッキーファンには見て欲しい。
2020/01/21「ペット・セメタリー」☆☆☆★
昨年秋から「IT/イットTHE END」「ドクター・スリープ」と立て続けにスティーヴン・キングの小説の映画化が公開されている。現役作家の中で映像化310本という人気作家である。その要因はストーリー展開と状況描写と言われている。もちろんホラー作家として有名だが「グリーンマイル」「スタンドバイミー」等のヒューマンドラマも執筆している。前段が長くなったが、本作は1983年の発表作品で、キングの初期作品になる。映画化も3度目?と思う。キング自身が一度はお倉入りさせようとした死者の蘇りをテーマにしており、怖い映画である。私の嫌いなジャンルだが、キング作品だけはいつも見るようにしている。それは前述したようにストーリー展開の面白さによる。今作も事故死した娘を先住民の死者の蘇りの地に埋めた事から起こる惨劇の物語である。父親役はジェイソン・クラーク、母親役にエイミー・サイメッツ、隣人役には個性派の名優ジョン・リスゴーが扮しているが娘役のジェテ・ローレンスが見せる演技には大人たちの熱演もかすんでみえる。娘エリーの愛らしさと蘇ったエリーの怖さ、まさしく異質な二人を演じる怪演は必見の価値あり。(この演技は★一つ加算)最近の映画の中では、本当に怖いと感じた映画で目をつぶってしまった(情けない)ところもある。
2020/01/22「リチャード・ジュエル」☆☆☆★
1996年アトランタ爆破事件の実話の映画化。名匠クリント・イーストウッドがメディア報道の在り方、SNSの中傷へ警鐘を鳴らす。爆弾を発見し事件を防いだ警備員リチャードがFBIの第一発見者を疑えのセオリーから容疑者にされ、それを地元の新聞社が書き立てたため、ヒーローから最重要容疑者とされる。無実を信じる弁護士ワトソンが立ち上がる。弁護士ワトソンを演じるサム・ロックウエルと母親役キャシー・ベイツは共にアカデミー賞受賞経験がある。二人の名演と主人公を演じるポール・ウォルター・ハウザーの熱演、そして歯切れのいいイーストウッドの演出が観るものを惹きつける。
2020/01/23「イントゥ・ザ・スカイ」☆☆☆★
「博士と彼女のセオリー」で共演したエディ・レッドメインとフェリシティ・ジョーンズが再共演。人生のパートナー役から今作で はビジネスパートナーを演じる。主人公の天文学者ジェームズ・グレーシャーは気象学者として天気を予測する精度を高められると高度7000mの世界に挑もうと考え、気球操縦士アメリアに協力を求める。美しい雲の世界と蝶の群れ等驚かされる場面もあるが、何より嵐の巻き込まれた時のシーンは観るものも一緒に気球に乗っている臨場感があり、迫力ある作品である。ラストも見逃せない!
2020/01/24「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」☆☆☆☆
世界で大ベストセラーになった「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズ4作目「インフェルノ」出版時に原稿流出を防ぐために出版社は翻訳者を地下に隔離したという。そのエピソードを基に作られた本格ミステリー作品。物語は世界同時発売のため、9か国の翻訳者が地下室に閉じ込められて作業を進めるが、Net上に冒頭20ページが流出する。犯人からは出版社に500万ユーロを支払わなければ次の100ページを公開するという強迫が届く。犯人は誰か?隔離された場所からの流出方法は?本格的は推理サスペンスを堪能できる秀作。出版社社長にランベール・ウィルソン、翻訳家の一人にオルガ・キュリレンコが演じている。