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        ソムリエの追言 91

        「スクリューキャップよりコルクにこだわるのは何故」

        ________________________________________

         

        スクリューキャップ式のワインを召し上がったことはありますか?

        残念ながら当店でのワインに取り扱いは今のところありません。

        (昨日セールのオーストラリアワインはスクリューキャップでしたが当店の輸入品ではなく、また、通常取扱品ではありません)

         

        |オー・ブリオンの真実

        シャトー・オー・ブリオン。 ボルドーで最も歴史のある偉大なシャトーで 1855年の格付けで唯一メドック以外の第1級格付け。 ラフィットやムートンなどと並ぶ、5大シャトーの一つ。 意外と知られていないのですが、 実は、このオー・ブリオンでスクリュー・キャップを導入したことがあるようです。

         

         

         

         

         

         

         

         

        1969年に実験的に行なったようですが、 ビンテージが良くなかったせいもあり、不評を買い 10年程で止めてしまったとのこと。 スクリューキャップ部分ではなく、その中の内蓋のプラスチックの部分が 酸化で傷んだとの報告もあります。 ただし、その間の10年間はスクリューキャップの味わいと コルクとの味わいの差はなかったと報じられています。

        これが、このまま続いていたら・・・

        「スクリューキャップ」と「コルク」の歴史は変わっていたと思います。

         

         

        |天然コルクの問題点

        「ブショネ」の発生の多さ それと天然ならではの、コルクの質のバラつき。

        特に、質のバラつきは、モノによって、急激な、予期しない酸化が起きるリスクがあります。

        その点、スクリューキャップは、「ブショネ」もほとんどなく、酸素の透過量も一定で急激な酸化などなく 安定しています。

        にも関わらず、多くのワイン生産者は コルクを使い続けます。

        それは、何故なんでしょう。

         

         

        |スクリューキャップの弱点

        先のオー・ブリオンの実験報告のほかにも スクリューキャップの品質保持効果は、様々なところで証明されています。 ただ、唯一 スクリューキャップについては、 長期保存への疑問、熟成に与える影響がまだ未知なのです。

         

         

        |ワイン生産者の言い分

        高級ワインをつくる生産者のほとんどが、ワインの長期的価値、熟成を意識しています。 そのため、「スクリューキャップは、使えない」と。 相変わらず、リスクを承知でコルクの使用を宣言しています。

        もちろん、何十年も先の熟成が楽しみなワインであるならば、その言い分は、わかります。 おそらく、そんなワインは、全ワインの一握り。 多くのワインは10年以内に飲まれてしまうはず。 高級ワインを、熟成タイプのワインを目指していないはずなのに、 多くのワイン生産者は、「右へ倣え」で、コルクにしがみついています。

         

         

         

        |高級感に欠けるイメージ

        これは、恐らくイメージの問題。

        私達に、特にワイン愛好者にとって、「ワイン = コルク」 が定着しています。

        「コルクを抜く」儀式がある特別な飲み物。 そんなイメージが長い間続いています。

        そんな中、 1980年代前半、オーストラリアでスクリューキャップが使用されます。 リーズナブルなワインからの導入となりました。 そのせいなのでしょうか。 「スクリューキャップ = 高級でないワイン」  のイメージが、出来上がってしまいました。

        今日まで、広がった多くのスクリューキャップのワインは 新興国のリーズナブルなワインです。 「スクリューキャップ = 高級でないワイン」のイメージを 強める結果となっていきました。 その後、スイスで大幅に取り入れられていくや、様々な産地で、取り入れられてきます。 ご存知の通り、今ではオーストラリアやニュージーランドで、 いわゆる高級ワインの価格帯にも、スクリューキャップが使われています。

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

        そして、遂にはフランスのシャブリのグラン・クリュ(特級)にも使われるようになりました。 しかし、まだフランスなどの、新興国以外の、特に長期熟成を要する赤ワインでの使用が見かけられません。

         

         

        ※道上の独り言

        コルクには、かつて、一本一本ボトルに打ち込んでいったこともあり、ワインに対する手作り感がある。そのイメージを大切にしている造り手も多くいるはず。やはり長期熟成を主としているカベルネ・ソーヴィニョンなどは難しいのでしょう!当店道上ワイン赤ラベルなどは最低10年、出来れば20年は寝かしたい所です。

         

         

        |消費者と生産者の認識のギャップ

        多くの生産者、造り手は、自分が造ったワインをまっとうに飲んでもらうことを望んでいる。 それは、今の「コルク」で十分、事足りている。 そんな、甘い認識が、まだまだあります。

        そして、「コルクでない栓 = 安いワイン=美味しくないワイン」の呪縛が、 甘い認識を改める機会を遠ざけています。 そう、つまりは 消費者からの誤ったイメージを、畏れて 「スクリューキャップ」へ踏み出せないのが現状でしょうか。

        確かに、今までのコルクから、切り替わるとなると瓶詰め機械の新設が必要で コストが掛かります。そういった理由もあると思います。 大事なことは、確かな品質のワインを提供すること。 今の、コルクの当り・ハズレで、造り手の思い描いていない欠陥ワインを飲んでもらうことを 欲していないはずです。そう信じます。 そのためのコストについては、割り切れるとおもうのですが・・・。

         

        ※道上の独り言

        ボルドーをはじめ、ほとんどの生産者は、自分のところでボトリングする設備を持っていない。 そして、コルク自体も生産量が少なくなり、近年価格が高騰して、コルクを使い続ける方がコストが掛かる。 一律に、スクリューキャップへの切り替えがコスト増になるとは言えない。

         

         

        |「栓」の流れに乗って

        コルクの代替栓も、スクリューキャップのほか、プラスチック樹脂製のコルクなど、多種多様の時代です。 天然コルクからスクリューキャップへ変えた生産者の多くは、 コルクによって、ワインの損失を受けたところです。 「もう、コルクは信じられない」といったところでしょうか。

        ですから、 もし、コルクによるワインの欠陥があれば、我々は、主張しなければなりません! こんな、欠陥のあるコルクを使ってるから、ワインが美味しくなかったと!

        この声が大きくなれば、生産者は考えざるを得ないはずです。

         

         

        そうそう、最後に。

        イタリアの有名ワイン生産者アンジェロ・ガヤ。

        彼は、長期熟成するバルバレスコというワインの為に、 5.5cmの特製コルクを使うこだわりよう。 その彼が、自家所蔵用のワインにスクリューキャップを使い出しているという話が。

        10年・20年後には、「栓」の流れが変わっているかも知れません。

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