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        世界の最新トレンドとビジネスチャンス

        第92回

         

          シリコンバレーも注目!日本のロボット技術(後編)

         

        浜田和幸

         

        ウェブで読む:http://foomii.com/00096/2017121510000042810

        EPUBダウンロード:http://foomii.com/00096-43374.epub

        ──────────────────────────

         現在、産業用ロボットの分野では、日本の企業が世界市場でシェア第一位を確保している。

        2015年の世界のロボット関連の市場規模は710憶ドル。2019年には、その2倍近い1354憶ドルにまで拡大するとの予測も。安川電機、ファナック、川崎重工業、ヤマハ発動機、不二越など日本のメーカーが世界市場を席巻してきたが、近年、中国のロボットメーカーが日本を猛追中である。

        何しろ、自ら設計した理想のロボットと正式に結婚するエンジニアが現れたりするのが今の中国。

        これからは、ロボットの開発レースにおいて、これまで以上に熾烈な開発競争が展開されることは間違いないと思われる。

         

         そうなると、人間とロボットの合体が時間の問題となるに違いない。

        いわゆる「サイボーグ」が普通に世の中に登場するのも間近なことだろうから。

        人間の感情や記憶を除き、臓器や筋肉など、マシーンで新しいものに入れ替えることは難しい話ではない。

        遅かれ早かれ、サイボーグ化することで、人間は半永久的な寿命を手に入れる時代になるだろう。

         

         その初期段階の試みとして、1979年に開発されたマイクロチップを体内に埋め込む実験が急ピッチで進んでいる。

        1991年頃から、各地の動物園では園内の動物にマイクロチップを埋め込み、健康管理や行動監視に利用し始めた。

        アメリカでは2000年から家庭用のペットにチップの埋め込みが義務付けられるようになり、多くの州で実施が広まっている。

        もちろん、ニワトリやアヒル、ハムスターやネズミは例外扱いだ。

         

         いずれにせよ、動物実験で得られたデータをもとに、人体への埋め込みが最も進んでいるのは軍隊と病院である。

        米軍の場合は、「バイオチップ」と呼ばれているが、兵士の血圧、呼吸など体調に関する情報を24時間モニターしており、指揮官が部下のストレスを把握し、作戦遂行能力を高めるために役立っているという。

        こうしたチップは手や腕に埋め込まれているが、近い将来、心臓や脳の近くに埋め込み、臓器の機能強化に結び付けようとする研究も進んでいる。

         

         当然のことだが、民間企業でもさまざまな実験が繰り返されるようになった。

        具体的には、飲料の自動販売機メーカーでは手に埋め込んだチップで決済ができる仕組みを構築中だ。

        また、セキュリティ会社ではオフィスへの入退室の際やコンピュータへのアクセスの認証に埋め込みチップを使うという。

        既に病院では入院患者の体調管理に効果を発揮している。

        開発者によれば、「これほど個人認証で安全な仕掛けはない。

        盗まれる恐れがないからだ」。とはいえ、本人がチップごと誘拐されたり、最悪の場合、手や腕を切り取られたりすれば、悪用される可能性は否定できない。

         いずれにせよ、人間とマシーンの一体化は加速する一方である。自分が人間なのか、マシーンなのか、識別が難しい時代に突入し始めていることは論を待たない。

        ということは、今こそ、「主役は人間である」ことを強く意識することが重要だ。グーグルではAIが別のAIを設計する実験に成功したと発表。

        人間の設計するAIよりはるかに高性能なAIが誕生したというではないか。

         こうした流れは加速する一方であろう。日本のメディアでも「あと10年であなたの仕事はなくなる」といった特集が目白押しだ。確かに、碁でもチェスでも、人間のチャンピオンをロボットが次々と打ち負かしている。ましてや単純労働などは、文句も言わず、休まず働いてくれるロボットに任せた方が効率が上がるのは当然のこと。

         既に、世界中でロボットが知的作業の分野でも人間を追い抜き始めている。アメリカでは初のロボット弁護士が誕生し、弁護士登録が完了した。

        過去の判例など、ロボット弁護士はたちどころに正確に探し出してくれる。人間の弁護士が20人かかっても太刀打ちできないという。

         また、中国ではロボット新聞記者が健筆を振るっているようだ。スポーツ記事などは人間の記者が1時間かけて書くような原稿をたった数分で仕上げてくれるというから頼もしい。

        誤字脱字もまったくないらしい。

        今後は、ますます人間の肉体労働から知的作業までロボットが代行してくれるようになるに違いない。

        中東のドバイでは「市民権を獲得した初のロボット市民」が誕生したという。

         

         そうした近未来を想定し、欧州議会ではどこまで人間社会でロボットの仕事を認めるべきか、法的な規制を準備する作業が始まった。というのも、記憶力抜群のロボットがこれからは、人間と同じように感情をもつような進化もありうるからだ。

        そうなれば、ロボットは単なる機械の延長ではなく、機械化した人間と同じになる可能性を秘めているわけだ。

         

         わが国の経産省でも「次世代ロボットの導入に関するガイドライン」を作成し、2030年までに到来する人間とロボットの共生社会に備える動きを加速させている。

        果たして、どこまでロボットの人間化が進むのか。それとも、どこまでわれわれ人間がロボット化するのか。

        難しい問題ゆえに、人工知能にでも客観的答えを出してもらうとするか。

        次号「第93回」もどうぞお楽しみに!

         

          

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        著者:浜田和幸

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