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                                     2018/03/23発行

        世界の最新トレンドとビジネスチャンス

         

        105

        米朝首脳会談合意の裏で進むトランプ大統領と金正恩委員長の

        利権交渉(後編)

         

        浜田和幸

         

        ウェブで読む:http://foomii.com/00096/2018030210000044486

        EPUBダウンロード:http://foomii.com/00096-45028.epub

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         要は、アメリカも北朝鮮も本音では戦争を望んでいないのである。では、「戦争も辞さない」とする過激な発言を双方が繰り返した背景は何なのか。この点を抑えておかなければ、米朝関係の表面的な対立志向に翻弄されるだけで終わってしまう。今こそ、北朝鮮の核ミサイル開発によって一番得をしているのは誰か、ということを冷静に判断する必要がある。

         

         もちろん、最も得をしているのは北朝鮮だ。アメリカへの抑止力を確保した上で、韓国や中国に対しても強い立場で交渉できるカードを手に入れたといえるからだ。北朝鮮のミサイルの脅威に対応するためアメリカは韓国にTHAADと呼ばれる高高度の迎撃ミサイルシステムを配備したが、一連の米朝間の応酬を経て、更に追加配備が計画されることになった。この迎撃ミサイルシステムは北朝鮮のミサイルにはまったく無力であることは軍事関係者の間では周知の事実であるにもかかわらずである。

         

         ではなぜ配備が進んでいるかといえば、中国国内の軍事的動きを把握する強力なレーダー機能がある上に、中国からのミサイルを打ち落とすことが可能となるからだ。アメリカは北朝鮮ではなく、中国の将来的な脅威に対応する目的でTHAADの配備を進めているわけだ。しかし、表向きは「狂気の金正恩が何をするか分からないため」と、北朝鮮をTHAAD配備の言い訳に利用してきたに過ぎない。もちろん、アメリカの軍需産業にとっては実に美味しい話であり、トランプ政権万々歳である。

         

         しかも、注目すべきはTHAADの韓国内配備は北朝鮮にもメリットが大きい点だ。なぜならTHAADの配備は中国にとってはかつてない脅威となっているからだ。そのため、配備を容認し、追加配備にも前向きな韓国に対し、中国政府は猛反発。そのあおりを食って、中国内の韓国企業は次々と撤退を余儀なくされるようになった。また、韓国を訪問する中国人観光客は激減。中国と韓国の経済通商関係は悪化の一途である。韓国経済にとっては深刻な事態といえよう。

         

         結果的に中国との関係の冷え込む韓国は北朝鮮との関係改善に活路を見出さざるを得ない状況に追い込まれてしまった。これこそ、金正恩が大陸間弾道弾(ICBM)の開発によりアメリカを脅し、韓国へのTHAAD配備を進めさせた理由である。その狙いは中国を韓国、アメリカから引き離すことに他ならない。そうすれば、中国は否応なく、北朝鮮を支援することになるはずだ。

         こうした深慮遠謀を企てているのが金正恩なのである。決して一部のメディアが伝えるような「狂人」とか「3代目のボンボン」ではないだろう。それどころか、アメリカの大統領をも手玉に取る「天才」といっても過言ではないかも知れない。そうした背景を日本もアメリカも理解しようとしてこなかった。

         しかし、利権ビジネスに敏いトランプ大統領は「金正恩とディールできる」と確信したようである。その結果、5月には首脳会談が開催されることになったわけだ。現職のアメリカ大統領と北朝鮮の最高指導者が直接会うのは初めてのこと。もちろん、前言撤回の常習犯ともいわれるトランプ大統領である。突然、会談をキャンセルし、先制攻撃という選択肢に切り替える可能性は否定できない。その点は、要注意である。

         

         言うまでもなく、金正恩は世界の国家指導者の中で最年少である。とはいえ、その生年月日ははっきりしない。しかし、年齢や生年月日がはっきりしないのは金正恩だけではない。国家の政策として北朝鮮では自国の最高指導者の生年月日を極秘扱いしてきているのである。神秘のベールで覆うことで、まさに神格化を進めようとの意思が感じられる。

         幼いころから皇帝のような特殊な環境で育てられたため、自らがリスクを取ることには躊躇をしないという性格が身についているようだ。国家の最高指導者に就任してからも核開発やミサイルの発射実験など世界の批判を浴びながらも一向に動じる気配を見せてこなかった。韓国はじめ、中国、ロシアといった周辺国やアメリカ、イギリスの支援を得ることで、豊富な地下資源を開発することに成功すれば、北朝鮮は急成長することが期待される。

         

         このことを若き指導者、金正恩は十分認識しているようだ。なぜなら、権力の座に着くやいなや、「経済と軍事の対等化」宣言を発しているからである。それまでの軍事最優先の路線から経済発展を同じく最重視する姿勢を打ち出した。国内の農民に対しても自由度を増す政策を発表。収穫物の最低3割、場合によっては4割から6割を手元に残すことが認められるようになったという。

         工場や商店に対しても収益を上げた額に応じて報奨金を出すことを決定。生産性の向上を最優先する意向に他ならない。経済特区の数も当初の25カ所から今や500か所近くに拡大するなど、矢継ぎ早に父親時代を塗り替える政策に邁進している。とはいえ、こうした経済政策もこのところ行き詰まってしまった感は強いが。

         日本は北朝鮮の内政はもとより、アメリカをはじめとする国際社会の動きを冷静にとらえ、北朝鮮に対する戦略を練り直す必要があるだろう。というのも、トランプ大統領が関心を寄せている北朝鮮の地下資源に関するデータを一番熱心に収集していたのは日本であるからだ。朝鮮統治時代に遡るが、日本政府は民間の資源開発企業を動かし、中国との国境地帯を中心に現地調査と試掘を重ね、足で稼いだ地下資源データを蓄積しているのである。まさに「虎の子」のデータといえよう。

         中国、ロシアをはじめ、アメリカやイギリスも、北朝鮮の眠れる地下資源に引き付けられている。しかし、彼らに先んじて北朝鮮一帯の地下資源に注目し、将来の開発に先手を打ってきたのが日本だった。そうした先見の明と最新鋭の掘削技術を武器に、トランプ大統領の面子も保ちつつ、同国の経済発展に道筋を付ければ、懸案の拉致問題の解決にも結び付くだろう。そうした観点で北朝鮮の現状を見れば、今こそ、非核化を実現し、平和条約交渉を進めるチャンス到来といえるだろう。

         

        次号「第106回」もどうぞお楽しみに!             

          

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        著者:浜田和幸

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