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                                                                 2018/05/11発行

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        世界の最新トレンドとビジネスチャンス

        第110回

         

        急速に拡大する中国の現代版シルクロード「一帯一路」戦略

        (前編)

         

        浜田和幸

         

        ウェブで読む:http://foomii.com/00096/2018051110000045855

        EPUBダウンロード:http://foomii.com/00096-46376.epub

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        今や、世界のパワーバランスが大きく変貌を遂げようとしている。「世界の警察官」を豪語したアメリカが国際舞台から徐々に距離を置き「アメリカ・ファースト」に傾く中、中国による国際的な影響力の拡大が目覚ましい。

        その象徴的な動きが「一帯一路計画」であろう。

        中国には「要想富、先修路」ということわざがある。「豊かになりたければ、先ず道路を整備せよ」という意味だ。

        インフラ整備を通じて、自国内に限らず、世界に覇を唱えようとする「中国の夢」とも合致する。

        これまでのアメリカ主導の国際秩序を中国式に塗り替えようとする大胆な試みに他ならない。

         

         その背景には1970年代までの貧しい国を30年でアメリカと肩を並べるまでに経済発展を成し遂げたという自信が感じられる。日本では中国の台頭を「新たな脅威」と受け止め、警戒する向きもあるが、朝鮮半島の安定化に関しても中国の関与は無視できない。言うまでもなく、日本にとって中国は今や最大の通商貿易相手国となった。ここは冷静に中国の動きと、その意図を分析し、ウィンウィンの関係を目指す時である。

         

         昨年5月、北京では「歴史上、最も野心的な経済発展計画」と呼ばれる「一帯一路」構想を議論する国際サミットが開催された。「中国版マーシャルプラン」とも受け止められるのが、それより4年前に習近平国家主席が打ち出した「現代版シルクロード経済圏構想」を進化させようとするもの。

        その具体化を検討、協議するのが、昨年の国際サミットであった。

         

         この会議にはロシアのプーチン大統領はじめ29ヵ国の首脳が参加。アメリカや北朝鮮を含む130ヵ国から1500人が集うという、中国にとっては「最大の外交イベント」となった。

        日本からは自民党の二階幹事長が出席し、安倍総理の習近平主席宛の親書を持参。

        当時は北朝鮮が核・ミサイル開発を強行する姿勢を見せていたが、ピョンヤンに強い影響力をもつ中国との関係を重視していることをアピールした。

         

         鄧小平が打ち出した改革開放政策の結果、30年余りで世界第2の経済大国となった中国。習近平主席の肝いりでアジア・インフラ投資銀行(AIIB)等を立ち上げ、新興国を中心にインフラ整備に力を入れ、グローバルなスケールでの「仲間作り」に成果を上げ、存在感はゆるぎないものになってきた。本年5月にはフィリピンからだけで50万人の労働者を受け入れると発表したが、国内経済の拡大に伴う労働力不足を補うためでもある。

         

         しかも、「エコロジー文明」を標榜し、その趣旨を憲法にも明記するほどだ。

        この分野では日中の協力の可能性が高い。

        日本から学んだ新幹線技術を応用し、中国全土に高速鉄道網を整備した中国では、その流れを更に進化させ、風力自家発電で

        時速500キロの高速移動を可能にしつつある。翼を付けた

        高速鉄道であり、日本の協力の下、実験が加速している。

         

         そして、本年に入り、習近平は憲法を改正し、終身国家主席の座を維持することを可能にした。

        要は、西側諸国で見られる「レームダック化」から無縁な絶対的権力を手中に収めたといっても過言ではない。

        そうした国内の政治基盤を固めた上で、今や「一帯一路計画」を

        通じて、アジアとヨーロッパを結ぶ新たな物流インフラの建設に

        余念がない。

        実現すれば、世界人口の60%、そして世界経済の45%をカバーすることになる。この計画には国連はじめ、100を越える政府や国際機関が協力文書に既に署名をしている。

         

         また、中国の目指す「一帯一路」経済圏には中東やアフリカも含まれる。昨年、1500人のお供を連れて日本を訪問したサウジアラビアのサルマン国王だが、東京から北京に移動すると、

        中国との間で日本以上に経済、軍事の両面にわたる協力関係の強化に努めた。

        特に、新疆ウイグル自治区などにイスラム教徒を多数抱える中国にとってはサウジアラビアの持つ情報と影響力は是が非でも手に入れたいもの。

        既にテロ対策を専門にする特殊部隊の合同演習も始まった。現代版シルクロードの成功には周辺の治安維持が欠かせないからだ。

         

         一方、脱石油社会への変革を模索するサウジは「サウジ・ビジョン2030」を打ち出している。

        実は、この中期・長期計画にとって、習近平の「一帯一路」は補完効果が期待できるため、両国は50を越える協力プロジェクトに合意した。

         

         欧米諸国から人権問題に絡んでの批判を受けても、

        習近平は「どこ吹く風」と言わんばかりで、ユーモアたっぷりに

        切り返す。

        曰く「靴が合っているかどうかは、靴を履いている本人しか分からない」。

        厳しい批判にも、中国式の知恵を絡めた自信と迫力で対応する。

         

         独裁的な王室体制には内外から懸念の声も上がっているサウジとは共通点も多く、サルマン国王は習近平主席との間では日本で見せた以上の笑顔を振りまいていた。

        トランプ大統領の下で、「アメリカ第一主義」と銘打った孤立主義に走りそうなアメリカと対照的に、サウジアラビアも中国もこの「一帯一路」と「サウジ・ビジョン2030」を合体させることで、より開かれた通商貿易体制をアピールしようと試みている。

         

         昨年、北京で開催された「一帯一路」国際サミットを成功させるため、習近平指導部は準備に万全を期してきた。

        日本からは経団連の榊原会長はじめ、安倍総理の補佐官も二階氏に同行する形で参加。

        これまで日本企業はこの「一帯一路計画」には関心は寄せてきたものの、具体的な関与については「様子見」状態であった。

        しかし、前回のサミットをきっかけに流れが変わり始めた。

         

         

         

         そして、本年5月、東京で開催された日中韓首脳会談の折に実現した日中首脳会談では日中両国が第3国において共同プロジェクトを推進するためのフォーラムを官民合同で設立することが決まった。

        これこそ、「一帯一路計画」への日本の参加を後押しさせようとする政策に他ならない。

        アジアのみならず中東、ヨーロッパ、そしてアフリカにも経済圏を拡大しようとする中国の夢に、日本も遅まきながら与しようとする動きであろう。

        「日中一帯一路促進会」もスタートした。

         

        以下、次号「第111回」に続く!

         

         

         

         

         

                        

          

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        著者:浜田和幸

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