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                                                                 2018/06/01発行

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        世界の最新トレンドとビジネスチャンス

        第113回

         

        朝鮮半島の非核化交渉の裏で動き出した統一朝鮮囲い込み戦略:主役は中国とロシア(後編)

         

        浜田和幸

         

        ウェブで読む:http://foomii.com/00096/2018060110000046135

        EPUBダウンロード:http://foomii.com/00096-46652.epub

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        ところで、金正恩と2度にわたる事前交渉を行ったポンぺオ国務長官は「核を放棄すれば、経済的発展を支援する」と約束。北朝鮮の求める経済発展に欠かせないのが、未開発の地下資源であるが、そこに熱い目を向けているのも中国である。

         

        中国は2030年にはアメリカを経済面で凌駕するという国家目標を掲げる。その象徴的な原動力が「一帯一路計画」であろう。

        中国には「要想富、先修路」ということわざがある。

        「豊かになりたければ、先ず道路を整備せよ」という意味だ。

        インフラ整備を通じて、自国内に限らず、世界に覇を唱えようとする「中国の夢」とも合致する。これまでのアメリカ主導の国際秩序を中国式に塗り替えようとする大胆な試みに他ならない。

        その背景には1970年代まで貧しい国だったのに30年でアメリカと肩を並べるまでに経済発展を成し遂げたという自信と野心が感じられる。

        日本では中国の台頭を「新たな脅威」と受け止め、警戒する向きもあるが、朝鮮半島の非核化や安定化に関しても中国の関与は無視できない。

        言うまでもなく、日本にとって中国は今や最大の通商貿易相手国となった。ここは冷静に中国の動きと、その意図を分析し、ウィンウィンの関係を目指す時であろう。

         

        中国政府は本年5月にはフィリピンからだけで50万人の労働者を受け入れると発表したが、国内経済の拡大に伴う労働力不足を補うためでもある。

        それほど大きな国内市場を抱えているわけだ。

        しかも、「エコロジー文明」を標榜し、その趣旨を憲法にも明記した。

        この分野では日中の協力の可能性が高い。

        実際、日本から学んだ新幹線技術を応用し、中国全土に高速鉄道網を整備した中国。

        今では、その流れを進化させ、風力自家発電で時速500キロの高速移動を可能にしつつある。

        翼を付けた高速鉄道であり、日本の協力の下、実験が加速している。

         

         そして、先の19回党大会において、習近平は憲法を改正し、終身国家主席の座を維持することを可能にした。

        要は、西側諸国で見られる「レームダック化」から無縁な絶対的権力を手中に収めたといっても過言ではない。

        そうした国内の政治基盤を固めた上で、今や「一帯一路計画」を通じて、アジアとヨーロッパを結ぶ新たな物流インフラの建設に余念がない。

        実現すれば、世界人口の60%、そして世界経済の45%をカバーすることになる。この計画には国連はじめ、100を越える政府や国際機関が協力文書に既に署名をしている。

         

         また、中国の目指す「一帯一路」経済圏には中東やアフリカも含まれる。昨年、1500人のお供を連れて日本を訪問したサウジアラビアのサルマン国王だが、東京から北京に移動すると、中国との間で日本以上に経済、軍事の両面にわたる協力関係の強化に努めた。

         

         一方、脱石油社会への変革を模索するサウジは「サウジ・ビジョン2030」を打ち出している。この中期・長期計画にとって、習近平の「一帯一路」は補完効果が期待できるため、両国は50を越える協力プロジェクトに合意した。

        サウジアラビアは世界最大の石油会社アラムコの株式上場の準備に邁進する。

        2兆ドルの上場益を想定し、世界最大のメガシティ建設資金に投入する計画である。

        このプロジェクトに中国は食い込もうと必死にアプローチをかけている。

         

         ライバルの王子たちを汚職容疑で拘束し、資産を没収するなど、現在の独裁的な王室体制には内外から懸念の声も上がっているサウジとは共通点も多く、サルマン国王は習近平主席との間では日本で見せた以上の笑顔を振りまいていた。

        トランプ大統領の下で、「アメリカ第一主義」と銘打った孤立主義に走りそうなアメリカと対照的に、サウジアラビアも中国もこの「一帯一路」と「サウジ・ビジョン2030」を合体させることで、より開かれた通商貿易体制をアピールしようと試みている。

         

         

        本年5月、東京で開催された日中韓首脳会談の折に実現した日中首脳会談では日中両国が第3国において共同プロジェクトを推進するためのフォーラムを官民合同で設立することが決まった。

        これこそ、「一帯一路計画」への日本の参加を後押しさせようとする政策に他ならない。

        アジアのみならず中東、ヨーロッパ、そしてアフリカにも経済圏を拡大しようとする中国の夢に、日本も遅まきながら与しようとする動きであろう。

        民間サイドでも「日中一帯一路促進会」がスタートした。

         

         また、注目すべきはロシアと中国の蜜月関係だ。ロシアは「ユーラシア同盟」を提唱し、ロシアの極東やシベリア方面の開発に、中国も巻き込み、海外からかつてない規模での投資も呼び込もうと躍起になっている。

        プーチンは「ロシア極東は協力したい人々にすべて開放する」と語気を強める。言うまでもなく、ロシアの極東地域は中国との国境線地帯を中心に石油、天然ガス、石炭、木材が豊富に眠っている地域である。

        また、ロシアの漁業資源の7割を占めているわけで、まさに「資源の宝庫」そのものである。

         

         人や物資の移動に欠かせないのが鉄道や高速道路である。

        ロシアはヨーロッパ方面とシベリア極東を結び、更に南北朝鮮縦断鉄道やサハリン経由で北海道を結ぶ国際輸送回廊計画を提唱中である。

        今後20年で世界の物流風景は中ロを軸に大きく変貌を遂げるに違いない。

         

         しかも、プーチン大統領はシベリア鉄道を始め、あらゆる物流をAI化することで無人化を促進する「第4次産業革命」を実現する計画を温めている。

        中国の推進する「新シルクロード構想」はその発想を拡大、進化させようとするもの。

        当初、中国の「一帯一路計画」にはロシアが含まれていなかった。しかし、プーチン大統領の働きかけが功を奏し、中ロ合作の象徴的な事業が生まれつつある。

         

         当然のことながら、今後急成長が期待できる東南アジアや南アジアに対しても、陸のみならず海上輸送路の整備が望まれる。

        南シナ海での岩礁の埋め立てについても、中国の海洋シーレーンを牛耳ろうとする思惑が透けて見える。

        グローバルな輸送市場の急展開を想定し、中国とロシアが連携を図りつつ、インフラ整備や安全保障体制の確立に向けてチームワークを組み始めていることは注目に値しよう。

        中国にとって今や国内総生産の10%は海洋ビジネスから得られているのである。

         

         要は、プーチン大統領は、崩壊した旧ソビエト連邦を自らの手で蘇らせたい、との歴史的野望を秘めているのである。

        「ソ連崩壊は20世紀最悪の地政学的な悲劇だった」と主張して止まないプーチン。

        「ユーラシア同盟」の名の下で旧ソ連の復活を模索している。

        「中国の夢」と称して、4000年、時には5000年の歴史を背景に、中華思想を実現しようとする習近平の路線と共通する部分が多いのも当然であろう。

         

         実際、上海協力機構においては、中国とロシアが旧ソ連邦の中央アジア諸国を含め、テロ対策や安全保障の面から地域の安全と発展を進める動きに加え、ユーラシア同盟との連携も視野に入ってきている。

        インドやベトナム、モンゴルなども組み込み、合同の軍事演習や資源開発、インフラ整備プロジェクトが相次いで始まりだした。

         

         そうした中ロによる新たな経済圏構想を巧みに取り入れ、朝鮮半島を物流拠点に変身させようとするのが文大統領と金委員長の狙いであろう。

        残念ながら、こうした動きに日本は食い込むことができない状態が続いている。

        アメリカ頼みではなく、自前の対朝鮮半島政策が早急に求められる。

         

         

        次号「第114回」もどうぞお楽しみに!

         

         

         

         

         

         

                        

          

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        著者:浜田和幸

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