2019/08/02発行
世界の最新トレンドとビジネスチャンス
第171回
“人間中心”のAI戦略とブロックチェーンの可能性(後編)
浜田和幸
ウェブで読む:https://foomii.com/00096/2019090610000057696
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さて、昨今、話題沸騰気味のブロックチェーン技術
(分散台帳技術)の活用はどこまで進むのだろうか。
経済産業省の試算によれば、その市場規模は67兆円。
暗号通貨から信用創出の新形態へと応用範囲は広がりを見せている。トークン・エコノミー、追跡可能性の保証されたグローバル契約・決済システム、セキュリティの確保、スマート・エネルギー管理など、新たなビジネスチャンス到来への期待は高まる一方である。ブロックチェーン技術の活用によって、日本は「弱み」を「強み」に変えること
が可能になるに違いない。
とはいえ、「人間本来の能力の再発見」にこそ日本的なAI戦略の機軸を置くべきではないだろうか。
なぜなら、AIに全てが代替されるわけではないからだ。
一種の「AI万能ブーム」が世界を席巻しているかのように見受けられるが、過度な期待は命取りになりかねない。
AIやロボットが幅を利かす時代になればなるほど、人間関係や共感に基づくリアルなやり取りやコミュニケーションは重要性を増すことになるだろう。
いわゆる「母性資本主義の時代」と言われるゆえんであろう。
実は、2025年の大阪万博のメインテーマは
「命輝く未来社会のデザイン」である。
これは、日本政府の肝いりで進む、想像を超えた「ムーンショット・プロジェクト」(2050年までにサッカーのワールドカップ優勝チームに勝利する完全自立型ロボットチームを誕生させようというもの)と対極に位置する発想である。
発想を変えれば、「グーグル全盛時代の終わり」の近いことも視野に置く必要があるだろう。ビッグデータで解析し、
次の一手を見出すのは、あまりにも当たり前過ぎる思考方法と思われる。
データが大量にあれば、AIの機会学習の精度が高まること
は想像に難くない。
しかし、フェイクニュースのようなウソのデータが大量に出回るような状況下では、データの真贋を見分ける能力も欠かせない。
今後は、量は少なくとも、正確なデータを基に、いかに効率的な学習を加速させるかが問われるはずだ。
そのような問題意識から、数少ない「スモールデータ」で
学習効果や未来予測を高めることを目指すのが、日本の革新知能統合研究の真骨頂である。
恐らく、何でもグーグル検索に依存するような時代は長続きしないだろう。
無意味なデータや意図的に操作された情報をいくらビッグデータ解析やディープラーニングの対象にしたとしても、
創造的なアイディアや発明の原動力にはなりえない。ゴミ箱に捨てられたデータをいくら収集しても価値のある学習は不可能である。
大切なことは、人間本来の隠された、そして未開発の能力をいかに引き出すかに焦点を当てること。
無限の英知は60兆を超える人間の細胞に宿っているはずだ。過去を知り、未来を見通す素材もそこに眠っている。
そのパワーをほとんど活かさず、グーグル式のビッグデータに踊らされているのが今のわれわれの問題点ではなかろうか。
この分野では日本が世界を圧倒する可能性を秘めている。
日本を代表する理化学研究所ではそうした地道な研究に
長年向き合ってきているからだ。
アメリカや中国式の物量重視のAI戦略ではなく、限られた「きらりと光る」データの中から時代を動かす予兆を嗅ぎ分けることができるかどうか。
自然界と調和する人間中心のAI活用法での勝負をかけることこそ日本らしいアプローチといえるだろう。
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