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         2020年1月10日発行

        世界の最新トレンドとビジネスチャンス

        第187回

         海洋資源大国・日本の新たな船出(前編)

        浜田和幸

         

        ウェブで読む:https://foomii.com/00096/2020011010000062528

        ──────────────────────────

         わが国は国土面積の大きさで言えば、世界第66位の

        38万平方キロメートルに過ぎない。

        しかし、排他的経済水域という視点で見れば、日本の海域面積は国土の約12倍に当たる405万平方キロメートルにも達する。これは世界第6位の「海洋大国」であることを

        意味している。「資源小国」と言われて久しいが、

        危機をチャンスに変える意味でも、ここらで視点や発想を大きく転換させる時ではないか。令和という新時代は

        「海洋資源大国」の新たな船出を待っている。

         

        わが国は現在、2011年の東日本大震災が引き起こした原発事故の影響もあり、深刻なエネルギー危機ともいえる厳しい状況にある。代替エネルギー源として石油、

        石炭、天然ガスなどの輸入を拡大させざるを得ないが、

        エネルギー価格の高騰は日本企業の国際競争力を弱めている。しかも、日本がエネルギーを依存する中東情勢は緊迫化する一方である。

         

        2020年年明け早々にはアメリカがイランの国民的英雄と目される革命防衛隊のスレイマニ司令官を空爆で殺害したため、報復を叫ぶイランとの間でいつ戦争が勃発してもおかしくない状況が発生。既にそうした事態を織り込んだ原油価格の高騰が見られる。安倍首相は新年初の年頭記者会見で、「アメリカとイランの和平に向けた仲介役を果たしたい」との希望を明らかにしたが、その実現は難しい。それやこれやで、日本政府はエネルギー政策を白紙から見直す必要に迫られている。

         

        一方、視野を世界に広げれば、地球環境問題の解決に向けての取り組みも避けては通れない情勢だ。要は、世界的なエネルギー問題や食糧問題等が人類共通の課題として我々の前途に大きく立ちはだかっているのである。「リング・オブ・ファイアー」と言われるように、世界各地で火山噴火や巨大な地震、津波など自然災害の嵐が吹き荒れている。途上国を中心に人口爆発は収まらず、食糧や水の奪い合いも日常化するようになった。

         

        こうした問題を創造的な観点から解決し、国際社会の安定化に貢献するためにも、海洋資源を最大限に活用することは、わが国にとって当然、目指すべき方向性と言えるだろう。わが国には、長い歴史を通じて養ってきた「海と共に生きる」知恵と高い技術力が備わっている。日本人独自の経験と未来を切り開く技術的なアイディアを組み合わせ、人類すべてに対し、「海からの贈り物」を提供することが持続的な経済社会発展の基本となるに違いない。

         

        なぜなら、「海と太陽の恵み」から、人類は自らの生存にとって欠かせないあらゆるものを生み出すことができるからだ。であるならば、我々はこれまで培ってきた自然界との調和を重視する生き様、そしていわゆる「物質循環」に価値を見出すライフスタイルを、これからの時代のビジネスモデルとなるように進化させねばならない。

        次世代に資源をバトンタッチするためにも、無限に近い

        エネルギーを秘めた海洋と太陽の力を活用しない手はない。再生可能エネルギーとしては、太陽光や風力を源とする発電は急速に利用が進んでいるが、海洋資源の活用はこれからだ。

         

        では、具体的な「海からの贈り物」として、注目すべき価値の源泉とは何であろうか。一般的には、海洋資源として認知度が高いのは石油、天然ガス、メタンハイドレード等である。しかし、これらの海底資源の開発には莫大な資金と国際的な争奪戦という高いハードルが横たわっている。

         

        その点、日本にとって今後の循環型エネルギー社会の

        構築を模索する上で極めて有望と思われる海洋資源の一つは“藻類”である。というのも、地球上に存在するあらゆる創生物は藻類が行う光合成によって二酸化炭素を資源として固定化することで得られるからだ。

        言い換えれば、こうした過程で誕生する資源は「永遠に枯れることのない資源」に他ならない。その意味では、物質循環の象徴的な存在と言えるだろう。

        現在、各国で様々な研究開発が進められているが、今後、実用化、産業化が期待できる分野としては、次のような可能性が指摘されている。

        すなわち、藻類を原料としたバイオ燃料等、エネルギー資源、あるいはバイオケミカル資源としての活用である。そして、藻類に凝縮されたレアアースの回収や医薬品への活用など高付加価値資源化の可能性も無視できない。

        また、藻類そのものを食糧、飼料、肥料として活用する

        方法も研究が進む。

         

        ほんの一例だが、ロシアの極東方面ではそれまで廃棄物として見向きもされなかったワカメが健康にプラスということで、ロシア人の大好物であるチョコレートに混ぜた新商品が誕生し、人気を博している。これは日本人の発想からヒントを得たものである。加えて、海洋環境の悪化傾向に対して、藻類の持つ浄化作用を活かした水産資源の

        保護、育成活動への応用なども検討されている。

         

        更には、最近注目を集めているのは、フコイダンである。これはコンブ、ワカメ、モズクなどの粘質物に多く含まれる食物繊維で、1996年の日本ガン学会で制がん作用が報告されたため、健康食品として一躍脚光を浴びるようになった。いまだ、科学的、臨床的なデータは限られているようだが、この「海からの恵み」フコイダンには「肝機能を改善する」「血圧の上昇を抑える」「抗菌作用がある」「アレルギー体質を改善できる」「コレステロールを下げる」などの効果も期待が高いところである。

         

        要は、藻類一つをとっても実に多様な可能性を秘めた創生物であるということだ。このような藻類パワーを活かした新産業の育成は単にエネルギー産業や資源の有効活用にとどまらず、わが国が世界に誇る高い技術力の蓄積を持つ農業や水産業、そして医療の分野と融合させることで、これまでにない海洋産業として大きな雇用を生み出す源泉となる。

         

        こうした発想で海洋資源の利用範囲を広げていくことは「海洋国家・日本」にとって極めて重要な意味を持つに違いない。わが国にとって幸いなことに、洋上風力発電や海洋温度差発電、あるいは潮流発電等から得られる自然エネルギー源と組み合わせれば、より実用性の高い海洋資源戦略の要(かなめ)となるはずだ。

         

         

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        著者:浜田和幸

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