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第33回
異常気象の行方:地球は氷河期に再突入するのか?(前編)
浜田和幸
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このところ地球温暖化の影響が深刻化している。2016年は歴史上、最も気温が高まる年となった。年初からこの8月まで、毎月、平均気温がこれまでの最高を更新したのである。本年4月には170か国の代表が国連に集まり、世界初となる気候変動に関する合意書に署名。危機感は共有されているものの、具体的な対策は後手後手になっていると言わざるを得ない。
NASAのゴッダード宇宙研究所のシュミット所長に言わせれば、「地球温暖化は止めようがない」。「各国の首脳たちが気温上昇を1.5度以内に抑えようと合意したが、その目標達成は不可能だ」と断言している。このままでは、2030年までに産業革命以前と比べ、地球の温度は平均して1・5度以上上昇することは避けられそうにない雲行きだ。
とはいえ、地域間の格差は大きい。急激な温暖化が進む地域もあれば、逆に寒冷化に見舞われる地域もあるというわけだ。北極圏では氷が融けだす一方で、アメリカのフロリダ州では寒波に襲われるという両極端の現象が同時に発生している。国土の80%が氷で覆われているグリーンランドでは2012年の夏、ほぼ地表の90%以上で氷が融け出すという異常事態が観測されたという。しかし、南極圏では氷は安定しているのである。
いすれにせよ、異常気象の影響を防止するための様々な試みが展開されるようになってはいるが、その効果は限定的である。
温室効果ガスの排出権を扱う市場の創設やポスト京都議定書の枠組みにアメリカがカムバックせざるを得なくなりつつある。オバマ大統領は「緑のニューディール」政策を掲げ、代替エネルギー政策とそのビジネスモデル化に積極的に資金や人材を投入してきた。
こうした動きの背景には、地球環境の悪化という人類にとって未曽有の危機的状況が迫っているとの認識が芽生えてきたことは間違いないだろう。日本でも熱帯地方のような暑い夏と大雪が降る冬場が交互に現れ、四季から二季へと季節が大変化しているとの見方も出ているほどだ。確かにこれまでの常識が覆されるような異常気象である。
そんななか、最近、一部の科学者の間では「地球温暖化が進むと、その先にはミニ氷河期の到来が待ち構えている」と言った議論が急浮上してきた。実際、地球温暖化をもたらしているはずの原因の一つである太陽に関しても、その活動が200年ぶりの低水準に落ち込んでいるというではないか。
デンマークの太陽黒点数データセンターによれば、「黒点の多さを表す“相対数”が2008年には過去100年の間で史上2番目に少ない状況であった」という。2009年に入り、さらに黒点の数は減少を続けており、最近のデータを見ると、何と1810年以来という記録的な低水準にまで落ち込んだとみられる。
ちなみに、太陽活動は約11年周期で活発になったり、静かになったりというパターンを繰り返している(ソーラーサイクル)。その指標となるのが黒点である。黒点の周辺では爆発現象が多く起こっており、黒点が多いほど太陽の活動は活発ということになる。
加えて、太陽の活動には数百年の周期でより大きな変動も観測されている。例えば、17世紀から18世紀にかけての約70年間においては、黒点がほぼ消えてしまい、結果的にヨーロッパではイギリスのテームズ川が凍るなどミニ氷河期に突入したのである。
東京大学の宇宙線研究所の宮原ひろ子特任助教授曰く「ここ1000年に限ってみても太陽活動の極小期が5回あり、前回は1800年ごろであった。歴史的にみれば、そろそろ次の極小期に入ってもおかしくない」。いわば、地球がミニ氷河期に再突入する可能性が出始めたというわけだ。
NASAの専門家らで構成する「太陽活動周期予測パネル」では現在の低活動期を「ソーラーサイクル24」と名付けている。そして太陽の活動が1928年以来で最低に達するのが2013年の5月と予想されたものである。その予測の通り、太陽の活動は停滞しており、人間の排出する二酸化炭素による温暖化の影響を上回る規模で地球全体の冷却化が進む可能性もあるというわけだ。
宇宙飛行士で気象学者でもあるフィリップ・チャップマン博士によれば、「これから数年のうちに起きようとしていることは200年前のミニ氷河期よりはるかに深刻だ。太陽の黒点から判断し、地球はかつてない冷却期に突入するだろう」とのこと。
モンタナ大学で開かれた国際太陽活動検討会議に参加した100名近くの科学者たちは、最近の現象と過去の氷河期との関連性を議論し、今回は1650年から1700年まで続いたミニ氷河期との共通点が顕著であるとの結論に達した模様である。
以下、次号に続く!