46回
世界の注目と期待を集めるミャンマーの市場(後編)
浜田和幸
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2016年10月には、アメリカによる経済制裁も全て解除された。その結果、欧米諸国の金融機関がこぞってミャンマーへの進出を図るようになってきた。
当然のことながら、スーチー政権の下ではこうした国際金融機関の期待に応えるべく、国内の経済改革を加速させ、海外からの投資や技術移転を可能にする国内法の整備に余念がない。
経済特区も次々と選定され、海外企業の受入れに熱心な姿勢を示している。
こうした改革・開放政策にとって、スーチーさんの役割は極めて大きい。
外務大臣と国家の最高顧問を兼務するスーチーさんは相次いで外国を訪問している。
過去数か月の間に、中国、インド、日本、そしてイギリスやアメリカにも足を延ばし、自由で開かれた国家作りに協力を要請して回っている最中だ。
いずれの訪問先でも彼女は大歓迎を受け、確実に外交得点をあげていることは言うまでもないだろう。
これまでアジアでも最も貧しい国の座に甘んじていたミャンマーであるが、経済活動が活発になれば国内の民主化も確実に進展するに違いない。
土地の所有制に関しても整備が進んでいる。
これまで世界銀行が発表した「ビジネスの環境整備についての調査」を見ると、ミャンマーは世界190の国の中で170位という結果で、ほぼ最低ランクであり、「最もビジネスがしにくい国」とされてきた。
隣国のラオスや同じアジアのフィリピン、インドネシア、ベトナム等と比べても、はるかにビジネス環境が劣っていたわけだ。
ここにきてようやく、新たな国づくりの道が開かれたと言っても過言ではない。
早速、世界から多国籍企業が雪崩を打って進出し始めた。
先陣を切ったのはケンタッキー・フライド・チキンであった。
昨年、初めて第一号店をオープンさせたばかりだ。
その後を追うように、コカ・コーラやネスレ、そして大手石油会社のシェル等も拠点を開設している。
中でも通信ビジネスによる積極的な参入が際立っている。
ノルウェーやカタールの通信業者が急増するミャンマーの人口に焦点を合わせ、移動通信やインターネットサービスを提供し始めた。その結果、たった1年足らずで、インターネットの普及率は10%から25%に、移動通信は20%から60%へ急拡大を遂げた。
その安価な労働力を活用しようと、今や日本をはじめ、世界の製造業やサービス業がこぞって狙いを定めているのがミャンマーである。
かつて「世界の工場」と異名を取った中国が賃金や土地代の高騰により、ベトナムに拠点を奪われつつあるが、今後はミャンマーがベトナムに代わり、アジア、世界の製造業の中心に躍り出る可能性が高いと言えるだろう。
そうした動きを先読みし、教育や保険、医療から始まり、法務や会計サービスを専門とする海外企業も次々と進出を決めている。
人材育成は急務である。イギリスやシンガポール資本の教育機関が競い合うように大学や専門学校を開設。
日本からも様々な経済ミッションがミャンマーを訪ねている。
日本のIT企業も優秀な人材確保にしのぎを削っているようだ。
というのもミャンマー政府はITを活用した電子政府や行政サービスの効率化を目指しており、日本の経験や先端技術の導入に関心を示しているからと思われる。
ミャンマーでは既に「eビザ」と呼ばれる電子手続きによるビザの発給サービスが始まった。
国民性が真面目で日本との親和性が高いミャンマー。
これから日本との関係が益々強化されるに違いない。
ちなみに、最高指導者のスーチーさんは若い頃、京都大学に研究生としてしばらく滞在したこともあり、大変な知日派である。
特に和食が大好物で、中でもうどん好きで知られる。
日本社会の発展の歴史に詳しく、日本経済の歩みから教訓を得たいと考えているスーチーさん。
日本にとっては得難いパートナーだ。
これから日本企業がASEANの統合市場を開拓するにあたり、ミャンマーの果たす役割は益々大きくなるだろう。
次号「第47回」(12月16日発行)もどうぞお楽しみに!
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