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        第58回

        水と空気に秘められたパワーを活かした最新技術(後編)

         

        浜田和幸

         

        ウェブで読む:http://foomii.com/00096/2017031710000037797

        EPUBダウンロード:http://foomii.com/00096-38400.epub

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         こうした空気から水を造る機械の開発が盛んになってきた背景には何があるのだろうか。実に驚くべき事実であるが、「大気中には大量の水分が含まれており、その量たるや地球上のすべての河川に流れる水の量より8倍以上も多い」ということ。

        そのため、湿度が30%以下でも、このウォーター・ミルは十分水分を吸収し、飲み水に変えることができるという。

        全自動の湿度感知器がついているため夜明けの最も湿度の高い時期に効率的に水分を吸収できるようになっている。

         

         すでにアメリカ、イギリス、イタリア、オーストラリアでは販売が始まっている。

        日本でもすでに特許申請が認められているという。

        そこで、気になるお値段であるが、1機1200ドル。アメリカでは人気が高いというが、果たしてどこまで日本人の味覚に合った水を提供してくれるものか。

        日本ではペットボトルが普及しており、こうした造水機の需要はまだそれほど大きくはなさそうだ。

         

         とはいえ、アメリカのサンフランシスコ市ではペットボトルの使用を職員に対して禁止するという条例を可決したほどだ。

        水不足に対する対策の1つであるが、今後、日本にも波及しないとは限らないだろう。

         

         そうした傾向を踏まえ、カナダのウォーター・ミルに負けてはならじと、アメリカのエックス・ジエックス社も空気から飲料水を造る機械を完成させ、市場に売り出すことになった。1ガロンの水を作るのに10セントの電気代がかかるが、この機械も空気中の汚れやほこりをフィルターで除去し、浄化処置をした後に飲み水に変えることができるという。

         

         「あらゆる種類の空気から水を作り出し純粋で安全な水を生み出す」というのがうたい文句になっている。このエックス・ジエックスの販売戦略は一般の水道水が生物化学テロに襲われるといった非常事態を想定したものに他ならない。

        水道水が安全とはいえ、その水源地に有害物質が投入されたり、地震や災害で水道管が破裂するようなケースを想定し、空気中から必要な飲料水を確保しようという危機管理の発想である。日本には欠けている発想であろう。

         

         一方、アメリカやカナダに対抗するかのように、ドイツの研究機関においても空気中の水蒸気を利用した造水機の実用化が進みつつある。

        シュツットガルトにある「IGB」と呼ばれるバイオテクノロジーの研究所では「ラゴス・イノベーション」と呼ばれる民間企業と提携し、自動的に空気中から飲料水を生み出すメカニズムを開発した。

         砂漠地帯など乾燥地においても空気中から飲料水を確保することができるため、その実用化が期待されている。

        湖や川、あるいは地下水や水源地がまったくない場所であっても、この機械は水を生み出すことができる。IGBではすでにイスラエルのネゲブ砂漠で実験を繰り返している。

        この砂漠地帯では大気中の湿度が年平均して64%であるため

        1平方メートル四方の空間から11.5ミリリットルの水を安定的に確保することができるという。

         

         「必要は発明の母」というが、今や世界各国で水不足を克服するための新たな発明の競争が始まっている。

        インドシナ半島やサブサハラなどアフリカ大陸においても水資源をめぐる争いは激化の一途をたどっている。

        海水を淡水化する、あるいは汚染された水を浄化し再利用するといったこれまでの造水技術とは全く発想が異なるアプローチが注目を集めている。

        地球上のあらゆる場所に公平かつ潤沢に存在する空気。

        この無限の資源から水を造りだすという開発レースが始まったのである。

        水の豊かな日本においては、これまで思いつかなかったアイディアと言えるかもしれない。

         

         しかし、考えようによっては、これほど確実な水源地の確保につながる技術もないだろう。

        日本は海水の淡水化を可能にする膜技術では世界をリードしているものの、既存の技術の上に胡坐をかいていれば、こうした新しい技術革新の波に乗り遅れることにもなりかねない。

         

         かつて、イザヤ・ベンダサン氏が「日本人は水と安全はタダで手に入ると思い込んでいる」と指摘していたが、水を巡る争奪戦が過熱し始めた今日、我々は水を確保するためにはあらゆる可能性を探り続けねばなるまい。水資源獲得レースに終わりはないのである。水に恵まれている日本だが、地球温暖化の影響は免れない。これまでの常識に捕われない瑞々しい発想で、新たな技術開発に取り組む必要がありそうだ。

         

        次号「第59回」(324日発行)もどうぞお楽しみに!

         

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        著者:浜田和幸

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