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        第63回

         

         中国の進める現代版シルクロード戦略「一帯一路」

        サミットの行方(前編)

         

        浜田和幸

         

        ウェブで読む:http://foomii.com/00096/2017042817000038629

        EPUBダウンロード:http://foomii.com/00096-39231.epub

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         来る5月14、15の両日、北京で「一帯一路」サミットが開催される。この会議にはロシアのプーチン大統領はじめ28ヵ国の首脳が参加する予定である。日本からは自民党の二階幹事長が出席し、安倍総理の習近平国家主席宛の親書を持参する方向で検討中だ。北朝鮮が核・ミサイル開発を強行するなか、ピョンヤンに強い影響力をもつ中国との関係を重視していることをアピールする狙いも込められているに違いない。

         

         30年余りの改革開放政策の結果、GDPで世界第2の経済大国となった中国。習近平主席の肝いりでアジア・インフラ投資銀行(AIIB)等を立ち上げ、新興国を中心にインフラ整備に力を入れ、グローバルなスケールでの「仲間作り」に成果を上げ、存在感はゆるぎないものになっている。そして、今では現代版シルクロードと呼ばれる「一帯一路計画」を掲げ、アジアとヨーロッパを結ぶ新たな物流インフラの建設に余念がない。この計画には国連はじめ、100を越える政府や国際機関が協力文書に既に署名をしている。

         

         先に1500人のお供を連れて日本を訪問したサウジアラビアのサルマン国王だが、東京から北京に移動。中国との間では日本以上に経済、軍事の両面にわたる協力関係の強化に努めたようだ。特に、新疆ウイグル自治区などにイスラム教徒を多数抱える中国にとってはサウジアラビアの持つ情報と影響力は是が非でも手に入れたいもの。既にテロ対策を専門にする特殊部隊の合同演習も始まった。現代版シルクロードの成功には周辺の治安維持が欠かせないからだ。

         

         また、日本以上に石油を輸入してくれる中国はサウジにとっては大事なお得意様に違いない。脱石油社会への変革を模索するサウジは「サウジ・ビジョン2030」を打ち出している。実は、この中期・長期計画にとって、習近平の「一帯一路」は補完効果が期待できるため、両国は50を越える協力プロジェクトに合意したのである。中国企業はすでに145億ドルの投資を行っている。

         

         欧米諸国から人権問題に絡んでの批判を受けても、習近平は「どこ吹く風」と言わんばかりで、ユーモアたっぷりに切り返す。曰く「靴が合っているかどうかは、靴を履いている本人しか分からない」。厳しい批判にも、中国式の知恵を絡めた自信と迫力で対応する。

         

         独裁的な王室体制には内外から懸念の声も上がっているサウジとは共通点も多く、サルマン国王は習近平主席との間では日本で見せた以上の笑顔を振りまいていた。

         

         安倍晋三総理との短時間の会見の際には、不機嫌そうな顔を見せることの多い習近平主席だが、サルマン国王とは大いに意気投合したようだ。トランプ大統領の下で、「アメリカ第一主義」と銘打った孤立主義に走りそうなアメリカと対照的にサウジアラビアも中国もこの「一帯一路」と「サウジ・ビジョン2030」を合体させることで、より開かれた通商貿易体制をアピールしようと試みているようだ。

         

         5月に北京で開催される「一帯一路」サミットを成功させ、アジアとヨーロッパをつなぐ新たな経済圏を構築しようと目論む中国である。習近平指導部はこのイベントを本年最大の外交イベントと位置付け、準備に余念がないようだ。日本からは経団連の榊原会長も二階氏に同行する形で参加するという。これまで日本企業はこの一帯一路計画には関心は寄せてきたものの、具体的な関与については「様子見」状態であった。今回のサミットをきっかけに流れが変わることになるのかどうか、大いに見ものである。

         

         また、注目すべきはロシアと中国の蜜月関係だ。実は、中ロの政治的関係の深化や国民レベルでの交流の拡大は安全保障の分野にも広がりを見せている。2015年以降、地中海はもとより、ウラジオストック周辺の日本海においても、中国とロシアの共同軍事演習の機会が増えているからだ。その背景には、習近平とプーチンという2人の指導者の強い軍事力信奉傾向と、アメリカ主導の戦後体制に挑戦し、新たな政治、経済の仕組みを形成しようとする強い意志が隠されている。

         

         そのため、特に中国は日本やアメリカが主たる出資者となって誕生させたアジア開発銀行(ADB)や、戦後世界の金融体制を形成してきた世界銀行や国際通貨基金(IMF)に代わる、アジア・インフラ投資銀行(AIIB)の影響力拡大に余念がない。加えて、陸や海のシルクロード計画にも着手。サウジアラビアのサルマン国王は中国の後、インド洋のモルディブを訪問したが、ここでも中国と協力してシーレーン防衛の拠点を構築する計画が進められている。

         

         はたまた中国は「サイバー空間におけるシルクロード」計画も提唱しているほどである。これらも「シルクロード」という歴史的遺産に新たな時代に相応しい価値を吹き込もうとする中国的なアプローチに他ならない。

         

         他方、ロシアは「ユーラシア同盟」を提唱し、ロシアの極東やシベリア方面の開発に、中国も巻き込み、海外からかつてない規模での投資も呼び込もうと躍起になっている。プーチンは「ロシア極東は協力したい人々にすべて開放する」と語気を強める。実はロシアの極東地域は中国との国境線地帯を中心に石油、天然ガス、石炭、木材が豊富に眠っている地域である。また、ロシアの漁業資源の7割を占めているわけで、まさに「資源の宝庫」そのものである。

         

         但し、それだけ資源には恵まれているが、開発に従事する人がいないのが悩ましいところであろう。何しろ、極東地域の人口はロシア全体の5%以下で、常に労働力が不足している。国内の他の地域からも優遇策で労働力を確保しようと工夫をしているが、思うような成果は得られていない。そのため、中国、モンゴル、韓国、北朝鮮といった国々にも働きかけを強め、労働力の確保に必死で取り組んでいるわけだ。

         

         人や物資の移動に欠かせないのが鉄道や高速道路である。ロシアはヨーロッパ方面とシベリア極東を結び、更に南北朝鮮縦断鉄道やサハリン経由で北海道を結ぶ国際輸送回廊計画を提唱中である。今後20年で世界の物流風景は中ロを軸に大きく変貌を遂げるに違いない。しかも。プーチン大統領はシベリア鉄道を始め、あらゆる物流をAI化することで無人化を促進する「第4次産業革命」を実現すると訴えている。中国の推進する「新シルクロード構想」はその発想を拡大、進化」させようとするもの。

         

         当然のことながら、今後急成長が期待できる東南アジアや南アジアに対しても、陸のみならず海上輸送路の整備が望まれる。南シナ海での岩礁の埋め立てについても、中国の海洋シーレーンを牛耳ろうとする思惑が透けて見える。グローバルな輸送市場の急展開を想定し、中国とロシアが連携を図りつつ、インフラ整備や安全保障体制の確立に向けてチームワークを組み始めていることは注目に値しよう。

        以下、次号「第64回」(512日発行)に続く!

         

         

         

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