第66回
東京オリンピックで開花するか?数々の新技術の芽(後編)
浜田和幸
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また、別の視点になるが、アメリカのCIAでは「2024年に人類や地球環境を大きく揺るがすような金融パニックが発生する可能性」を指摘している。国防総省とは一線を画す形で、CIAも地球が直面する未曾有の挑戦にどう備えるか警鐘を鳴らしていると言えよう。
そうした中、2020年の開催が決定したのが東京オリンピック・パラリンピックである。どのような記録が生まれるものか。また、その記録を達成するために各国のスポーツ選手たちがどのような人体改造計画の成果を背負って競技に挑むのか、大いに注目されるところである。
ところで、安倍総理が2020年の東京オリンピック招致のために世界に向けて「アンダー・コントロール」発言をしたことは今でも多くの人々が記憶していることであろう。何かと言えば、福島で発生した原発事故がもたらす放射能汚染が東京をはじめオリンピックの競技会場で選手や観客に影響をもたらすのではないか、との懸念の声を払拭するための総理発言のことだ。
果たして、安倍総理が世界に約束したような安全な環境が国内で整っているものかどうか。福島の原発事故現場からは依然として高濃度の放射線汚染物質が漏れ続けており、安全な処分方法も確立されず、最終処分場も決まらないまま蓄積されている。台風や集中豪雨により、そうした危険な汚染物質が河川や海に流出し続けているではないか。土壌汚染や大気汚染に関しても、その実態が十分解明されたとは言い難い。
こうした懸念が解消されないまま、東京オリンピックが2020年には開催されようとしている。とても福島発の原発危機がコントロール下にあるとは思えないのが重大な問題点である。爆発的に増え続けている汚染水のタンクや高濃度汚染土の山。除染の技術も開発されないまま、処理施設の建設も受け入れ先も決まらない。アメリカのウィリアム・ぺリー元国防長官に言わせれば、「世界は核兵器や放射能汚染の危険性を分かっていないようだ。人類文明の未来が危機に曝されていることを肝に銘じなければならない」。
思えば、安倍首相の祖父に当たる岸信介元総理も1964年の東京オリンピックの開催に大きな役割を果たした存在であった。岸にとってはオリンピックの成功は日本の国際社会への復帰に欠かせない条件であったからだ。当初、新幹線の動力源としても原子力が想定されていたほどである。その推進役であった岸元首相が日本の原子力エネルギー開発を経済面で実行しながら、安全保障の面では将来的に核大国化の道を目指したことは忘れられつつある。
アメリカは太平洋戦争を繰り返さないためにも、日本が石炭や石油に依存しないエネルギーの自立を可能にさせる必要があると考えたようだ。そうした意図を秘め、岸元総理を動かし、原子力発電の導入を後押しした。実は、1964年の東京オリンピックを境に経済再生を果たした日本は、その余勢を駆って、未来のクリーンエネルギー源としての原子力利用へと舵を切ったのである。
それゆえ、日本はアメリカのGEとウェスティングハウスの原発を次々と導入することになった。GE製の福島原発が稼働したのは1971年のこと。この40年の耐久年数を越えた福島のGE製の原子炉が問題を起こした背景は実に複雑である。GEのエンジニアからは操業中止と廃炉の必要性が既に指摘されていたからだ。地震や津波ばかりが原因とはいえないのである。
二度目となる2020年の東京オリンピックの開催にあたり、日本の電力会社や原子力産業にとっては、安全な環境を整備することは至上命題である。東京オリンピックを成功させることで、是が非でも世界に向けて安全な原発稼働を印象付け、滞っている海外への売り込みも加速させ、そして将来の核開発につながる研究も継続しようというわけだ。
既に、日本独自の核兵器開発に欠かせない技術の蓄積や必要な量のプルトニウムの備蓄も進められている。福島原発事故の陰で何が起こっていたのだろうか。世界の目は広島、長崎の原爆投下を経験した日本が核兵器にどう向き合うのか注目しているのである。
人間のもつ可能性を最大限に競い合う場であるはずのオリンピック。そのスポーツと文化の祭典での裏側では、代理戦争とも揶揄されるような人体改造計画や将来のエネルギー危機に対する切り札としての原子力開発の競争が静かに継続されているのである。更に、その裏では、常に核兵器開発に関する情報が漏れ続けている。「歴史は繰り返す」。その教訓を忘れず、目前の現実から目を反らすわけにはいかない。
とはいえ、間近に迫りつつある2020年の東京オリンピックに向け、日本企業や研究者たちは「オリンピックの歴史を塗り替える技術」の導入に余念がない。
1964年には新幹線で世界を魅了したが、今回はマグレブがデビューを待っている。既に上海では導入が進み、空港と市内を時速500キロで結び、旅行者には好評だ。しかし、東京では時速600キロを超えるマグレブが登場する。間違いなく世界最速の地上移動手段である。
また、多言語対応の無人タクシー(ロボットタクシー)の導入も確実視されている。競技に参加する選手や観客を目的地に素早く運んでくれる。トヨタや日産が先鞭を付けており、国内の道路交通法も2017年には改正される見通しで、スマホでロボットタクシーを呼ぶサービスも各地で着々と実験成果が上がっている。
更には、開会式の聖火の点灯セレモニーにはトヨタが開発した「スカイドライブ」と呼ばれる“空飛ぶ自動車”が観客を驚かす予定だ。これまで欧米や中国の自動車メーカーが実験を繰り返してきた空飛ぶ自動車であるが、ここにきて日本が一歩先んじることになる。2018年には開発を終え、実用化のデビューがオリンピックの開会式という仕掛けである。
加えて、オリンピックの開会式を人工的な流星群で飾るという計画も密かに進んでいる。これは日本の宇宙開発ベンチャー企業が極小衛星を大気圏外に打ち上げ、特殊な化学物質を使って再突入する際に多彩な流星を発生させるというもの。宇宙から東京オリンピックに華を添えようという構想である。
そうした華々しい演出と同時に、海の藻類からバイオ燃料を生み出すなど、原子力に代わるグリーンエネルギー開発にも拍車がかかっている。二酸化炭素の排出量を70%以上削減できるという。こうした新たな技術開発の展示場として2020年の東京オリンピックが成功すれば、まさにオリンピックの歴史が変わるきっかけになるだろう。
次号「第67回」(6月2日発行)もどうぞお楽しみに!
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