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        第73回

        世界で広がる新たな戦争:失われる種子と食糧の多様性(前編)

                                     浜田和幸

         

        ウェブで読む:http://foomii.com/00096/2017072110100040128

        EPUBダウンロード:http://foomii.com/00096-40721.epub

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        このところ世界的に異常気象や人口増加の流れが加速した結果、食糧問題が深刻化するようになった。

        この食糧危機を克服する上で最も有効な手段として注目を集めているのが生産量が飛躍的に伸び、病害虫にも強く、少ない水でも収穫が期待できる遺伝子組換え(GM)種子である。

         

        この種の遺伝子組換え種子を長年に渡り研究開発し市場に投入してきた会社は欧米に多い。

        中でもモンサントはアメリカを代表するアグリビジネス企業であるが、現在も戦闘状況が継続しているイラクやアフガニスタンを舞台にし、「新たな種子戦争」に参戦しているのである。

        もっと直截に言えば、イラクやアフガニスタンの農民が育ててきた穀物や野菜の種子を使えないようにし、モンサントが開発した種子に全て置き換えさせようとする試みを進めているのである。

         

        こうしたアメリカの官民一体となった種子戦争に対して反旗を翻そうとしているのが中国である。

        2017年4月6日、7日の両日にわたってフロリダで開催された米中首脳会談はトランプ大統領によるシリアへのミサイル攻撃によって、これといった成果の打ち出せないまま終わった。

        しかし、初顔合わせとなった習近平主席とトランプ大統領の間では水面下でさまざまなテーマについて意見を戦わせていたのである。

         

        北朝鮮問題は当然のことながら、米中間の経済貿易上の不均衡問題も議論の遡上に上った。

        事前にトランプ大統領は自らのツイッターを介して「難しい交渉になるだろう」とつぶやいていた。

        中国政府は「アメリカと中国の対立が避けられないものではないことが立証された」と、持って回ったコメントを発表したものだ。

         

        実は、トランプ大統領を悩ます新たな種が蒔かれていたのである。それこそ「種子戦争の種」に他ならなかった。

        何かと言えば、米中首脳会談の直前、中国の国営企業である中国化工集団(ケムチャイナ)がアメリカのモンサントと並ぶ世界最大の種子メーカーであるスイスのシンジェンタの買収を発表したことである。

        この買収劇は中国企業による外国企業をターゲットにしたものとしては過去最大のもので、430億ドルという。

         

        最終的な買収が認められるかどうかは、中国、インド、メキシコの政府機関に加え、アメリカの国務省、国防総省、商務省など主要政府機関16か所が独禁法や国家安全保障の観点から審査を行ってからとされた。

        とはいえ、シンジェンタのマイケル・デマレ会長は「従業員、顧客、地域経済にとって最善の結果をもたらす」と買収効果をアピール。「各国の承認は間違いない」と自信を示していたが、その後、予想通りの結果となった。

         

        実際、シンジェンタの株価は2016年から20%以上の値上がりを見せている。

        しかし、トランプ大統領とすれば世界に広がる種子戦争において中国の後塵を拝することにもなりかねないため、買収阻止に動く可能性も否定できなかった。

        結果的には、中国の動きを食い止めることはできなった。

        今後、アメリカと中国がGM種子による世界制覇を狙う戦争を展開することになるだろう。

         

        フロリダでの米中首脳会談の隠された対立点こそが、この種子を巡る駆け引きであった。

        シリアへのミサイル攻撃は「トランプ大統領の強い意志の表れ」と受け止められているが、シリアを巡る争いには別の要素が隠されていることは知られていない。

        これこそが、種子戦争である。

        アサド政権が存続するにせよ、首のすげ替えがなされるにせよ、治安回復と社会の安定発展には食糧の確保が最優先課題となることは論を待たない。

         

        2012年からシリアの土壌に適した穀物や野菜の種がノルウェーのスバルバードに建設されている種子保存センターに送られている。

        これは戦争が終結した際、速やかに農業を再生させるためにシリアの土地に適した種子を保存しようとする国際プロジェクトであった。

         

        かつてシリアのアレッポに活動拠点を持っていた国際乾燥地農業研究センター(ICARDA)の事務局長アリ・アボウサバ氏の発案である。

        同国の農業大臣ジョン・デール氏も「シリアの復興に欠かせない資源だ」と言う。

        戦時下においてはシリアの種子保存施設はすべて破壊されてしまった。

        また、研究員も海外に脱出を余儀なくされている。

        戦争前には13万5000種類の小麦、大麦、豆類の種子が保存、管理されていた。

        それらが相次ぐ空爆や戦火の影響で失われつつある。

        そのため、戦争が終結したとしても、シリアの土着の食糧をどこまで復活させることができるのか、大いに疑問である。

        こうした状況が続けば、種子の多様性、即ち、食糧の多様性は失われることになる。

         

        そうした状況を想定し、モンサントやシンジェンタでは遺伝子組み換え種子の提供のチャンスをうかがっているわけだ。

        戦争で大儲けを狙うのは軍需産業だけではない。

        こうした種子産業も密かに好機到来を待っているのである。

        シリアにおいても新たな市場参入を目指す中国と先行してきたアメリカとの市場争奪戦が始まったと言っても過言ではない。

         

        種子戦争の戦線は拡大を遂げる一方である。

        例えば、アフガニスタンのケースを取り上げてみよう。

        アメリカ軍の特殊部隊は民生部門を立ち上げ、アフガニスタンの市民や農民に対する職業訓練や雇用の機会を提供している。

        アフガニスタンの農民の間では芥子の実の栽培が盛んであった。

        いわゆる麻薬の原料である。

         

        しかし、これは回り回ってアメリカに持ち込まれ、アメリカ社会を内部から腐らせる原因にもなっている。

        そこでアメリカの占領軍はアフガニスタンにおける芥子の実の栽培をやめさせるためにも穀物栽培に転換するように教育や必要な援助を行うことになった。

         

        アメリカ軍はそうした目的のために各地に農業訓練センターを立ち上げた。

        実際にはUSAIDと呼ばれる国際援助庁がこうした施設の運営にあたっている。

        とは言え、日常的な業務はアメリカのコンサル会社ケモニクスが担当。

        同社のドゥレイマン社長は「我々はアフガニスタンにおいて、農業ルネッサンスをもたらしつつある」と胸を張る。

        しかし、その実態はアフガニスタンからの搾取以外の何物でもない。

         

         

        以下、次号「第74回」(728日発行)に続く!

         

         

         

         

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        著者:浜田和幸

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