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        第75回

         

        サウジアラビアの脱石油経済改革「ビジョン2030」と日本(前編)

         

        浜田和幸

         

        ウェブで読む:http://foomii.com/00096/2017080410400040410

        EPUBダウンロード:http://foomii.com/00096-41001.epub

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         中東の名主であるサウジアラビアが危機的状況を迎えている。原油安が長引いているため、国家収入のほぼ9割を原油輸出に依存してきたアラブ世界の大国にとって、未曾有の経済的危機が迫っているからだ。加えて、サルマン国王(81歳)の息子ムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(31歳)が皇太子に昇格。王家の内部での権力構造にも大きな変化が見え始めた。若き皇太子は従来の石油依存体質を打ち破り、「イノベーション国家」を目指すと宣言。

        その資金を調達するため、2018年には国営企業アラムコの株式上場を計画中だ。2兆ドルのIPOを目指すというが、果たして、目論見通りに進むものか。

         

         そうした構造改革を進める動きの背景にあるのは石油価格の低迷である。2016年9月にアルジェリアの首都アルジェで開催された「石油輸出国機構(OPEC)」の臨時総会では加盟14か国の原油生産量を日量3250万~3300万バレルに制限することで合意が得られた。事前の予測では、イランとサウジの対立があり、合意は難しいとみなされていたが、下落の続く原油価格のもたらす危機感が土壇場での合意形成に役立ったようだ。

        その結果、原油価格は1バレル47ドルにまで上昇。その後、しばらくは50ドルを超える勢いがあったが、アメリカ産のシェールガスの影響で、原油価格は再び下落傾向にある。

         

        とはいえ、そうした減産合意を加盟国がどのように分担するかは、容易に合意は得られそうにない。これまでもそうだったが、これからも、加盟国のみならず、非加盟国のロシアなどとの駆け引きが活発化することになるだろう。

        強気のイランは既に制裁前の2011年の原油輸出水準にまで戻っており、効果の薄い減産の大半はサウジがかぶることになりつつある。

         

        これまで世界最大の産油国のサウジアラビアは、自国のシェアを確保するために敢えて減産を避けてきた。特に、イランとの間で覇権争いが激化する兆しを見せていたため、サウジアラビアは国内経済をある程度は犠牲にする形で、減産という選択肢を避けてきたのである。また、それだけの体力があったのも事実だ。

        しかし、2014年夏には1バレル100ドル前後であった原油価格が、一時、30ドル台にまで値下がりしたことは、サウジアラビアの経済を想像以上に深刻な状況に追いやってしまった。

         

        その影響は、サウジアラビアの経済・社会に暗雲を投げかけるようになった。例えば、サウジアラビアの東部に位置する「サアド専門病院」では、従業員の給料未払い問題が発生。

        そのため、1200人を超える従業員たちが、職場放棄という強硬手段に訴えるという前代未聞の労働争議が発生した。

         

        サウジアラビアでは、労働組合は厳しく禁止されているため、これまでデモや座り込みなどの労働争議とは無縁であった。しかし、こうした経済危機を受け、外国の医者、例えば、イギリスやアメリカのドクターの間でも給料の支払いが滞ってしまったようだ。

        そのため、ドクターに限らず、看護婦や事務方のスタッフたちが出身の国籍を問わず、ソーシャルメディアを通じて、一致して行動をとることになったという。

         

        実は、この病院はサウジアラビアの大富豪、マアン・アル・サニーの所有するサアド・グループに属している。いわば、サウジアラビアの富を象徴する企業体である。そのような大企業がこうした現金不足に陥ったという事実は、事態の深刻さを想像させるに余りあるだろう。

         

        サウジアラビアの国民の8割は公務員。病院をはじめ、建設現場やサービス産業の至る所で、主として南アジアからの出稼ぎ労働者が仕事をこなしている。インドやパキスタン、バングラデッシュやフィリピンといった国々からの労働者が、3Kを含む国内のサービス産業の半分以上を請け負っているのが、サウジアラビアの現状である。

         

        しかし、こうした出稼ぎ労働者たちへの給料が支払われないという異常事態に直面し、彼らを派遣している国の大使館では、何とか自国民の生活を支援しようと食料やシェルターの提供に乗り出したほど。とはいえ、数十万の単位で働いている、こうした海外の労働者たちを出身国の大使館が面倒をみるといっても限界があろう。

         

        サウジアラビア最大の建設業者といえば、有名なビンラディン・グループである。この会社を筆頭に、他の建設会社も軒並み、この2年間は外国人労働者に賃金を支払えないという状況が続いているというから驚く。給料未払いのまま、本国に帰国する出稼ぎ労働者たちの不満は頂点に達している。これら南アジアの国々とサウジアラビアの関係が悪化し、更なるテロに結び付くような事態も懸念される。

         

        これまで、有り余る石油から得られる富を背景に、豊かな王国を築いてきたはずのサウジアラビアだ。とはいえ、隣国イエメンとの間で、終わりの見えない戦争状態に入ったことも災いし、石油の売り上げで蓄えた国家の資産も、非生産的な戦争のために使われ、国家財政を火の車にしてしまった。

         

        サウジアラビアはイエメンとの戦争を継続するため、アメリカをはじめ西側諸国から大量の武器や弾薬を輸入している。サウジによる空爆でイエメンでは1万人以上が死亡し、多数の負傷者が出ている。しかし、戦争終結の兆しは一向に見えてこない。イエメンにおける無政府状態は打開のメドが立たない。日本の駐イエメン大使もサウジアラビアに避難したままだ。

         

        イエメンとの戦争に関しては、国連の場においてもサウジアラビアは非人道的な空爆に関して非難を受けており、このままでは国際社会からも孤立しかねない状況だ。内憂外患の王国に活路は見いだせるのであろうか。

         

        サウジアラビアの株式市場では、このところ株価の下落が相次いでいる。こうした状況を受け、サウジアラビア政府は大臣をはじめ、国会議員にあたる諮問評議会議員の給料やボーナスを20%近く大幅に削減するという緊縮政策を始めざるを得なくなった。公務員の超過勤務手当や有休休暇にも制限が加えられ、国民向けの電気、水道、ガソリン代に関する補助もカットされることになった。

         

        何しろ、国家財政の赤字は年間1000億ドルを超えるまでに膨らんでいる。これまで税金とは無縁のサウジであったが、事ここに及んで、新たな徴税が検討されるようになってきた。いずれにせよ、このままではサウジの“突然死”もありうるという危機的状況といえよう。

         

        原油価格の下落によって、被害を受けているのはサウジアラビアに限らない。世界各国の油田開発業者や石油関連企業の間でも、経営不振や倒産に至るケースが増え始めた。既に20社近くが経営破たんに追い込まれた。そうした影響もあり、サウジアラビアでは国民の8割を占める公務員の間でも自国の将来に対する不安感が広がっている。国民の不安や不信感を払拭させよと、サウジアラビア政府は削減した配給を復活し始めた。

         

         

        以下、次号「第76回」(811日発行)に続く!

         

         

         

         

         

         

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        著者:浜田和幸

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