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        第77回

          狂人?それとも天才?金正恩の真の実力(前編)

                                      浜田和幸

         

        ウェブで読む:http://foomii.com/00096/2017081810000040661

        EPUBダウンロード:http://foomii.com/00096-41249.epub

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         北朝鮮の金正恩による「グアムへの弾道ミサイル発射も辞さない」という脅しに世界が釘付けになった。

        アメリカのトランプ大統領も、北朝鮮に対し「かつてないような炎と怒りをぶつける」とか「臨戦態勢にある」など強硬姿勢で応じた。いわば、双方とも「言葉のミサイル」をぶつけ合ったようなものだ。その都度、内外の株価は上下し、避難訓練に拍車がかかった。

         

         結果的には、金正恩が「アメリカの行動をもう少し見守る」と発言し、発射を控えたため、トランプ大統領も「金正恩は非常に賢明で、筋の通った選択をした」と態度を一変。当面、戦争の危機は避けられたようだ。とはいえ、その背景には北朝鮮の動きより、バージニア州で発生した白人至上主義者による暴挙への対応を優先させざるを得なくなったトランプ政権の「足元のふらつきぶり」が影響した観が否めない。

         

         そもそも、アメリカ軍は北朝鮮と戦争に臨むような準備をまったくしていなかった。8月21日から米韓合同軍事演習が実施されるが、これは以前から予定されていたもの。北朝鮮のグアム攻撃発言に対応したものではない。

        その意味では、トランプ大統領による「臨戦態勢」発言は口先だけの実態の伴わないものであった。第一、米空母のカール・ビンソンもロナルド・レーガンも6月に朝鮮半島近海から退去したままだ。

         

         要は、アメリカも北朝鮮も本音では戦争を望んでいないのである。では、「戦争も辞さない」とする過激な発言を双方が繰り返した背景は何なのか。この点を抑えておかなければ、米朝関係の表面的な対立志向に翻弄されるだけで終わってしまう。

        実は、北朝鮮の核ミサイル開発によって一番得をしているのは誰か、ということを冷静に判断する必要がある。

         

         もちろん、最も得をしているのは北朝鮮だ。アメリカへの抑止力を確保した上で、韓国や中国に対しても強い立場で交渉できるカードを手に入れたといえるからだ。北朝鮮のミサイルの脅威に対応するためアメリカは韓国にTHAADと呼ばれる高高度の迎撃ミサイルシステムを配備したが、今回の米朝間の応酬を経て、更に追加配備が計画されることになった。この迎撃ミサイルシステムは北朝鮮のミサイルにはまったく無力であることは軍事関係者の間では周知の事実であるにもかかわらずである。

         

         ではなぜ配備が進んでいるかといえば、中国国内の軍事的動きを把握する強力なレーダー機能がある上に、中国からのミサイルを打ち落とすことが可能となるからだ。アメリカは北朝鮮ではなく、中国の将来的な脅威に対応する目的でTHAADの配備を進めているわけだ。しかし、表向きは「狂気の金正恩が何をするか分からないため」と、北朝鮮をTHAAD配備の言い訳に利用しているに過ぎない。もちろん、アメリカの軍需産業にとっては実に美味しい話であり、トランプ政権万々歳である。

         しかも、注目すべきはTHAADの韓国内配備は北朝鮮にもメリットが大きい点だ。THAADの配備は中国にとってはかつてない脅威となっている。

        そのため、配備を容認し、追加配備にも前向きな韓国に対し、中国政府は猛反発。そのあおりを食って、中国内の韓国企業は次々と撤退を余儀なくされるようになった。また、韓国を訪問する中国人観光客は激減。中国と韓国の経済通商関係は悪化の一途である。韓国経済にとっては深刻な事態だ。

         結果的に中国との関係の冷え込む韓国は北朝鮮との関係改善に活路を見出さざるを得ない状況に追い込まれている。これこそ、金正恩が大陸間弾道弾(ICBM)の開発によりアメリカを脅し、韓国へのTHAAD配備を進めさせた理由である。その狙いは中国を韓国、アメリカから引き離すことに他ならない。そうすれば、中国は否応なく、北朝鮮を支援することになるはずだ。

         

         こうした深慮遠謀を企てているのが金正恩なのである。

        決して一部のメディアが伝えるような「狂人」ではないだろう。

        それどころか、アメリカの大統領をも手玉に取る「天才」といっても過言ではないかも知れない。

        そうした背景を日本もアメリカも理解しようとしていないだけだ。

        以下、次号「第78回」に続く!           

                         

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        著者:浜田和幸

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