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        奥 義久 の 映画鑑賞記

        2019年11月

         

        *10月から私自身の評価を☆にしました。☆5つが満点です。(★は☆の1/2)

         

        2019/11/02  「マチネの終わりに」☆☆☆☆★

        芥川賞作家・平野啓一郎のラブストーリーの映画化。登場人物の心の葛藤を繊細に描いた名作を見事に映像化している。特に主人公蒔野聡史を演じた福山雅治と国際ジャーナリスト小峰洋子を演じた石田ゆり子は初共演ながらも息がピッタリで男と女のプラトニックな愛を感情豊かに演じている。東京・パリ・ニューヨークの景観も美しい。そして何より特筆すべきは、福山雅治のクラッシックギターの演奏、もともと歌手として弾き語りも出来る福山だが、普段演奏しているアコースティックギターとクラシックギターでは演奏方法が異なる。3カ月の猛特訓で吹き替えなしの名演奏を聞かせている。一方、石田ゆり子も英語とフランス語を流ちょうに話すまで訓練をしたている。最近の日本映画は高校生の恋愛ものが多かったが、本格的な大人の愛を語る作品が誕生したと思う。ここ2カ月は「蜜蜂と遠雷」「楽園」といった見ごたえのある日本映画が立て続けに上映されているが、間違いなく本年ベスト1の日本映画といえる。

         

        「IT イットTHE END☆☆☆☆

        スティーヴン・キングの人気小説を映画化した「IT/イット“それ”が見えたら、終わり。」2017年度に公開されるとホラー版「スタンド・バイ・ミー」と言われ、歴代のホラー映画の記録を塗り変えた。

        この続編が今作であり、連続児童失踪事件の犯人の“それ”の謎の正体があきらかになる。27年周期で起こる事件を解明していく。7人の少年の27年後を演じるのは、「X-MEN」シリーズのジェームズ・マカヴォイ、「ゼロ・ダーク・サーティ」のジェシカ・チャステイン等の演技派が競演している。もちろん前作の子役たちも顔を揃えている。ホラーというより、優れたエンターテインメント作品として評価出来る内容である。

         

        2019/11/03「第三夫人と髪飾り」☆☆☆★

        ベトナムの美しい自然を舞台にある一族の一夫多妻の世界を描く作品。水墨画のような河川と秘境、女たちのアオザイの美しさ等の映像が新進気鋭の女性監督により写しだされていく。なじみの少ないベトナムの俳優たちは誰も知らないが、好演しており上質な出来映えである。

         

        「スペインは呼んでいる」☆☆☆

        10月8日公開の先行ロードショーを観た。本作は2017年度作品だが、前作「イタリアは呼んでいる」のヒットにより購買価格が上がり、下がるのを待って購入したという。前作同様スティーヴ・ローガンとロブ・ブライドンのコンビが6日間のグルメ旅行をする。

        本作品でもレストランでの二人のウィトに飛んだ会話と大スターのモノマネはネイティブ並みの会話力を持っていないと本当の意味での面白さがわからないのが残念といえる。日本では大ヒット出来ない理由と思える。とはいえ、本作で紹介されるレストランは素晴らしい店ばかり。2019年ミュシュランのピプグルマンを獲得した“ノーラ・レスタウランテ”は予約客1000人待ちとのこと。バスク州にある“アサドール・エチュバリ”は2019年度世界のベストレストラン50で堂々3位の店(ミュシュラン一つ星)で日本人シェフ前田哲郎が活躍しており、世界で一番おいしい海老が食べれると言う。このような情報ドキュメンタリーとして考えれば

        二人の会話が楽しめなくとも見る価値はあると思う。

         

        2019/11/04「閉鎖病棟」☆☆☆★

        長野県のとある精神病院。そこに入院する人々には過去に忌まわしい出来事を抱えている。死刑執行から生き延びた秀丸、幻聴に悩むチュウさん、義理の父親からDVを受けていた由紀。三人は心を通わせて生きてきたが、ある日平穏な日常が壊される事件が起こる。秀丸を演じる笑福亭鶴瓶が一生一代の名演技を見せている。共演の綾野剛、小松菜奈の好演と名匠平山秀幸のきめの細かい演出が感動作を生み出した。同時期に「マチネの終わりに」が上映されていることから注目度が低くなっているが、こちらも必見の映画である。

         

        2019/11/09「永遠の門 ゴッホの見た未来☆☆☆★

        偉大なる画家ゴッホの半生を描いた作品。パリで全く評価されず南仏のアルルに移り住むが、町の人々には狂人扱いされる。孤独と苦悩の生涯をウィレム・デフォーがヴェネチア国際映画祭の最優秀男優賞に輝く名演を見せている。マッツ・ミケルセン、マチュー・アマルリック、オスカー・アイザックという個性派スターが脇を固めている。素晴らしい作品で玄人受けしても一般向けではない。

         

        「ひとよ」☆☆☆☆★

        家族の絆をテーマにした舞台劇を「孤老の血」で日本アカデミー賞12部門を受賞した白石和彌監督が映画化。監督自身が代表作という傑作が誕生した。今年は邦画の当たり年で、「凪待ち」「アルキメデスの大戦」「よこがお」「人間失格」「見えない目撃者」「蜜蜂と遠雷」「楽園」「マチネの終わりに」「閉鎖病棟」そして今作品を含めて良質な秀作が多く作られた。この作品と「マチネの終わりに」「凪待ち」BEST3といえる。(1番は「マチネの終わりに」)

        今作に話を戻すと子供たちを守るため父親を殺した母親が15年ぶりに戻ってくる。長男、次男、長女それぞれの思惑は?一度こわれた家族の絆は?骨太の作品で佐藤健、鈴木亮平、松岡菜優の三兄弟役と母親役の田中裕子熱演は見ごたえがある。

         

        2019/11/10「その瞬間、僕は泣きたくなった」☆☆☆

        EXEILE HIROがプロデュースするCINEMA FIGHTERS projectの第三回目の作品。1作品23分で新しい映画表現と音楽にチャレンジする。今回は三池崇史、行定勲も参加している。それぞれの作品のテーマに一貫性があるわけでもないので、なんとなく短編映画を楽しんだという感じで、可もなし不可もなし。

         

        「最初の晩餐」☆☆☆

        父の通夜に集まった家族が通夜ぶるまいの料理で父親との思いでがよみがえり、離れていた家族の心が一つになる物語。染谷将太、戸田恵梨香が姉弟、義理の兄に窪塚洋介、父に永瀬正敏、義理の母親に斉藤由貴という芸達者が競演している。シチュエーションは全く異なるが「ひとよ」と同じ家族再生がテーマだけに比較してしまう。残念ながら、「ひとよ」がメジャーで本作はマイナーになる。

         

        「ターミネーター ニュー・フェイト☆☆☆☆★

        「ターミネーター2」から28年、シリーズの正当な続編としてジェームズ・キャメロンがプロデューサーに復帰して、サラ・コナーとT800の新しい物語を作りだした。スカイネットを倒した未来は人間の愚かさから新たな機械の支配者との戦闘が激化していた。その戦闘の数年前に新型ターミネーターREV-9が現れる。続いて女戦士グレースが現れ、二人はメキシコ人女性ダニーを探しもとめる。ダニーこそが新たな審判の日を救うキーマンらしい。そしてREV-9との争いにサラとT-800も関わってくる。もちろんサラ役はリンダ・ハミルトン、T-800はアーノルド・シュワルツェネッガーが演じている。大変レベルの高いエンターテインメント作品である。

         

        2019/11/11「グレタ」☆☆☆★

        孤独な老婦人が死んだ娘の代わりに知り合った若い女性に異常な愛情で接する。仏の名女優イザベル・ユーペルが最恐の未亡人役を演じている。標的の女性フランシスが働く高級レストランの外に立つ姿はドキッとする怖さがある。この怖さは往年のミステリーサスペンスの神様と言われたアルフレッド・ヒッチコックの演出を感じさせる。サスペンスファンには待望の一作。フランシス役のクロエ・グレース・モレッツの熱演も素晴らしい。

         

        2019/11/12「マイ・フーリッシュ・ハート」☆☆☆★

        天才トランぺッターでジャズ界の大物、チェット・ベイカーは58歳の時にアムステルダムのホテルから転落死した。この最後の数日間を映画化し、死の真相に迫ろうとした異色作。ノワール調の画面はジャンキーに落ちたチェットの心の虚しさを表現している。

        名曲”マイ・ファニー・ヴァレンタイン“を歌うチェットをスティーヴ・ウォールが好演している。秀作だが、個人的にはこの暗すぎる映画は好きになれない。

         

        2019/11/18「ベル・カント とらわれのアリア☆☆☆☆

        16日~17日(土・日)は仕事の為映画を観る事ができなかった。代休の月曜日に先週末公開の作品の中で一番観たいと思った作品の劇場に足を運んだ。この作品「ベル・カント」はペルーで起きた日本大使公邸占拠事件をモデルにしたベストセラー小説の映画化である。長期におよぶ占拠事件は人質とテロリストの関係に微妙な変化がおきる。相反する立場にいながら次第に人と人の絆がうまれてくるが、政府のテロリスト対策は公邸襲撃という幕引きをする。憎むべきテロリストの惨殺に心が痛む感動作に仕上がっている。主演のオペラ歌手にジュリアン・ムーア、日本企業役員に渡辺謙。他にセバスチャン・コッホ、クリストファー・ランバート、加瀬亮が脇を固めている。特筆すべきは、オペラの吹替えに当代随一のソプラノ歌手ルネ・フレミングが参加している。

         

        「オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁☆☆☆★

        かつて“ヒマラヤの鬼”といわれた名クライマー・ジアンが指揮するヒマラヤ救助隊“チーム・ウィングス”は、デスゾーンに墜落した飛行機から機密文書の回収を依頼される。しかし、同行する捜査官2人は機密文書略奪を目的として捜査官になりすました男たちだった。壮大なヒマラヤを舞台にした日中合作のアクション・エンターテインメント作品。主人公ジアンに役所広司、ウィングスのメンバーで中国のチャン・ジンチュー、台湾のリン・ボーホン等の国際色豊かな役者が共演している。理屈抜きに楽しめる山岳アクションだが、同日に「ベル・カント」を鑑賞したため、映画の出来、日本人俳優の比較をしてしまい、本来なら評価すべき役所広司の演技やスペクタル・エンターテインメントとしての高評価が出来なかった。

         

        2019/11/20「ブライトバーン 恐怖の拡散者☆☆☆

        地球に不時着した宇宙船に乗っていた子供を農場主が育て、スー

        パーヒーローとして活躍すると言えば誰でもが知っている「スーパーマン」。この作品は宇宙から来た赤ん坊を育てるところまでは、同じだが、12歳の誕生日に自分の力を認識し、世界征服を夢見る悪魔になっていく少年ブランドンを描いている。母親トーリーは息子を信じ守ろうとするが、本心を知った時にトーリーは自ら決着をつけようと考える。映画は父母を殺したブランドンが悲劇の子供として生き残ったところで終わり、恐怖が継続することを暗示している。「スーパーマン」の生い立ちをアンチヒーローのホラー・サスペンスにする着想はユニークだが俳優陣の小粒さと2番せんじのアクションも含めてB級作品と感じる。次回作の出来に期待したい。

         

        2019/11/22「決算!忠臣蔵」☆☆☆★

        忠臣蔵映画で討ち入りシーンのない裏話の映画が誕生した。原作は小説「忠臣蔵の決算書」。討ち入りするには、お金がかかる。討ち入り計画の総てをお金の面から捉えたコメディ時代劇。お金に悩みながら敵をあざむくためと廓通いをする大石蔵之介を堤真一☆☆☆が熱演。元勘定方で討ち入り見積担当に岡村隆史、赤穂のメンバーに濱田岳、妻夫木聡、西村まさ彦、寺脇康文らが出演して、この奇想天外な忠臣蔵を盛り上げている。楽しめる時代劇。

         

        2019/11/23「エンド・オブ・ステイツ」☆☆☆☆

        「エンド・オブ・ホワイトハウス」「エンド・オブ・キングダム」に続く人気シリーズ第3作。今回は主人公マイク・バニングが大統領暗殺計画の犯人としてFBIに追われる展開となる。自ら潔白を証明するために一人で戦いに挑む事になる。大量のドローン爆弾の戦闘シーンからノンストップでアクションが続く作品は見ごたえたっぷり。マイク役はジェラルド・バトラーの代表作と言える

        はまり役、大統領役のモーガン・フリーマンも3作続けての登場で息もピッタリ。初参加の父親役ニック・ノルティの軽妙な演技も

        連続アクションの箸休め的存在でいい感じである。それにしても真犯人が最後まで大統領を狙うのは、いささかリアリティに欠ける。FBI捜査官を殺した後、逃亡して終わりで次回につなげる方が

        リアリティがあり、シリーズとしても楽しみが多いいのではないか?

         

        「わたしは光をにぎっている」☆☆★

        20歳の無口な女の子が東京に出てくるが、都会になじめず仕方なく手伝い始めた居候先の銭湯。少しづつ商店街の人々との交流も生まれて来る。都会の中で居場所を見つける若者の成長を描いた作品。良質な作品でモスクワ映画祭で高い評価を得た作品だが、映画のテンポが悪く、淡々と流れ過ぎで盛り上がりがない。人物の掘り下げ方も今一と思う。

         

        「ゾンビランド ダブルタップ☆☆☆

        2009年ゾンビ社会を生き抜く仲間を描いた作品の続編。ケンカ別れした妹をゾンビから守る為住まいのホワイトハウスからゾンビがウヨウヨする外に出た3人の活躍をハチャメチャなアクションで描いている。主演はウディ・ハレルソン、ジェシー・アイゼンバーク、エマ・ストーンだけに単なるゾンビ映画では終わらない。役者が揃うとB級作品もメジャーになれる見本のような映画。時間に余裕があれば映画館に足を運んでもいいでしょう。

         

        2019/11/24「ライフ・イットセルフ 未来に続く物語☆☆☆☆

        ニューヨークに住むデンプシー夫妻は幸せの絶頂期に妻が事故に遭う。臨月の妻のお腹の子は奇跡的に誕生するが、夫(父親)も妻の死から精神を病み自殺する。この事故の時の目撃者でスペインから旅行で来ていた少年ロドリゴ・ゴンザレスは20年後にニューヨークの大学に合格してデンプシー夫妻の子ディランと運命の出会いをする。ニューヨークとスペインに住む家族たちが運命に導かれ未来に続く出会いの感動の物語は、壮大な大河ドラマといえる。主演はオスカー・アイザック、オリヴィア・ワイルド、アネット・ベニング、アントニオ・バンデラスら実力派スターが競演。

        この作品を観ていると、つらい事があっても未来を信じて、頑張って行こうと思える。

         

        2019/11/28「アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール☆☆☆★

        盲目でありながら世界最高峰のテノール歌手となったアンドレア・ボチェッリの半生の映画化。アモス(アンドレア)には新鋭のトビー・セバスチャン、アモスを指導するマエストロにアントニオ・バンデラスが演じている。オペラシーンのはボチェッリ本人が

        吹替えをしているが、トビーの演技は本人が歌っていると感じさせる熱演。オペラ好きでもなくても楽しめる作品。

         

        2019/11/29「ドクター・スリープ」☆☆☆☆

        ベストセラー作家スティーヴン・キングの最高傑作「シャイニング」

        の40年後を描いた作品。大人になったダニーは超能力の少女アブラと出会い、児童連続失踪事件にまきこまれ、やがて40年前の惨劇のホテルへと向かう事になる。ダニー役はユアン・マクレガー、アブラにカイリー・カラン、敵対する不死のグループのリーダーには「ミッション・インポッシブル」の女スパイ役でブレイクしたレベッカ・ファーガソンが演じている。私の好きな女優として記載したレベッカは、今回の役で一皮むけた女優に進歩したと思える好演をして、主演のユアンを喰っている。今後の主演作も注目したい。

         

        2019/11/30「アナと雪の女王2」☆☆☆★

        雪の女王エルサの魔法の力の秘密を解き明かす旅に出るアナとエルサ。前作に比べると物語の内容が複雑になり、ファミリー向けアニメから大人向けのアニメになったと感じる。それだけに大人はこのファンタジー・ロマンを楽しめるが小さな子供には難解な作品となっている。ディズニーアニメの素晴らしさと最高の音楽は言うまでもないが☆が★になった評価は、そこにあります。

         

         

         

        制作協力企業

        • ACデザイン
        • 日本クラシックソムリエ協会
        • 草隆社
        •                 AOILO株式会社

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