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        ソムリエの追言 95

        「今までのボックス入りワインが美味しくなかったのは何故?」

         

        グラスに注がれた色鮮やかな赤。 白地のパッケージには、 これでもかとアピールする大きさのグラスの写真が 映っています。

        初めて触れたバッグ・イン・ボックスは ホテルでのパーティでした。

        その色鮮やかな透明感とあいまって、 飲みやすさとバランスのとれた味わい。

        ワイン通以外なら、満足はしなくても 納得する味わいです。

         

         

        バッグ・イン・ボックスのワインが誕生してはや53年、半世紀を超えています。その誕生の目的は、気軽にワインを楽しめること。 気軽さとはやっぱり安く手に入ることが大事。

         

        そのためには、低コストで大量に生産することが必要。生産者と消費者の目的が一致するわけです。

        とにかく、アルコールがある前提で、ある程度の味わいであれば良い。 ヴィンテージや、細かい産地や、ブドウ品種、そんなもの名乗る必要がない。

        多くのブドウをより安く仕入れて、混ぜ合わせて 味の均一化を行なって、市場に出すことが使命なのです。

        それが、これまでの時代のニーズにも合っていたのです。

        ブドウが原料の工業製品的な面。 大量生産の機械的処理が当然になってきます。

         

        ワインは農産物であり、エネルギーの結晶なのです。

         

         

        太陽エネルギーと土壌のエネルギー。 その2つをもとにブドウの葉で植物のエネルギーがつくられ、蓄えられていく。 やがて、そのエネルギーはブドウの実となって、形になる。

         

        ワインの作り手は、そのブドウに人間のエネルギーを加えていく。 こうして時間とともに出来上がるのがワインです。コストを下げて、大量生産することはエネルギーを拡散することです。 トップ・ブランドのワインを造る生産者は、エネルギーを濃縮をさせて、より「美味しい」と評価されるワイン造りを目指します。

         

        美味しいワインが多いのは当然といえば当然。 サン・テミリオン地区のクロ・サンヴァンサンは、その銘壌地でありながら 収穫量を4年かけて落としてエネルギーを濃縮させて、 自分の理想とするワインつくりを目指したほどです。

         

        初期のバッグ・イン・ボックスを含む、大量消費用のワインは、 拡散させて薄まったエネルギーのワインで個性はなく、品質も基準を満たすだけのものにしか過ぎません。 目指しているものが全く違うのです。

         

        ワイン生産大国であり、消費大国であるフランスも 徐々にではありますが、ワインの消費量が減ってきているそうです。

         

        実は、「量から質」の転換がきているとも、分析されています。 ワインなら何でもいいという時代から、出来るだけ美味しいものを 楽しみたいというわけです。 エネルギーの薄まった水のようなワインから、よりワインらしいワインを 飲み始めているのです。

         

        バッグ・イン・ボックスは、1980年代からフランスに広がっていきました。 今では、バッグ・イン・ボックスを購入する人々の関心は、大容量販売による割安感よりも、 質の良いワインをグラス一杯、二杯味わいたいという関心に移ってきています。 その影響を反映させたのがヴィンテージ入りのワイン、 AOCの原産地入りのワインがバッグ・イン・ボックスなのです。

         

        そう、バッグ・イン・ボックスの為に造られた 大量消費用ワインではなく 美味しく、長期熟成もできる、エネルギーの濃縮したワインがバッグ・イン・ボックスに生まれ変わる時代になったのです!

         

        これからの日本でも、そういう時代に。

         

        「ワインのない食事など、太陽の出ない日のようなものだ」

        ブリヤ・サヴァラン【Brillat Savarin 1755~ 1826】

         

         

        新しい、「美味しい」バッグ・イン・ボックス があれば、 200年前のブリヤ・サヴァランの気持ちがわかるかも?

         

         

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