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        ソムリエの追言 96

        「空気の力はワインを変える!?~エアレーション~ 」

         

        「ズズズズーーーッ」

        あっちでもこっちでも大きな音が。

        ここは蕎麦屋でしょうか?

        いいえ、ワインの試飲会場です。

         

         

        ワインを口に含んだ状態で、口先をすぼめて空気を吸い込み

        口の中でワインと空気を混ぜ合わせる音なのです。

        ワインは音を立てて飲んだ方が、美味しくなるのでしょうか?

         

        エアレーション

        横文字にするとなんでも恰好良く聞こえてしまうものですが、要するにエアレーションとは、冒頭の「ズズズズーッ」という作業の事です。広い意味で言えば、ワインと空気を触れさせる行為全般を指します。難しい事のように感じるかもしれませんが、たとえばグラスに注がれたワインを軽く回してみるのも、立派なエアレーションの一つです。

         

        コルクを抜いたワインの香りが、時間の経過とともに随分と変化したという経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか?エアレーションは、口の中でワインと吸い込んだ空気を混ぜ合わせて、酸素による変化を短時間で確認するための荒業なのです。

         

        空気に馴染ませると若いワインでは、ツンと鼻につくアルコール臭が飛んで、本来の果実味に溢れた香りが広がります。

        味わいも、角がとれて落ち着いた印象に変わっていきます。

         

        また、古いワインでは、独特の還元臭※という匂いがでていて、

        ワイン自体の香りは、いわば寝起きの状態にあります。香りの広がりが感じられず、勢いがないのです。

        ※還元臭・・・金属の様な香り、錆びた香り、極端に強くなると、

        血なまぐさいと感じる事もあります。

         

        エアレーションは、そんな還元臭をとってあげて、生き生きと元気なワインにしているのです。

         

        人間で言えば朝のジョギングみたいな感じでしょうか。

        ジョギングをすると、寝ぼけていた頭も体も、活性化されますよね?

         

        最高のエアレーション

        ただ、普段ジョギングをしない人がいきなり10km走り込むと疲れてバテしまうように、やりすぎは逆効果が出てしまう事もあります。その人の体力(ワインのタイプ)や生活習慣(保存状態)に応じて、適度なエアレーションをしてあげることで、ワインも本来の良い香りを放ってくれるのです。

         

        ワインによって、どれくらい空気と馴染ませると香りが開いて美味しくなるのか。それぞれのタイプに差があるため、特に初めて飲む銘柄のワインでは戸惑ってしまいます。

         

        MICHIGAMIワインでは、シャトー・ラ・ジョンカードを中心に、

        前もってコルクを開けておく時間の目安を紹介しています。

        果実の酸味が特徴的な、比較的飲みやすいジョンカード白ラベル2014年は栓を抜いて15分ぐらいで香りが開き始め、3時間後ぐらいから香りはゆっくりと弱まっていきます。

        逆に果実の凝縮感の強い骨太な味わいのジョンカード赤ラベルになると、 ヴィンテージによっては1時間以上置いても香りが開いてこない事もあります。

        ゆっくりと時間をかけて目覚めた赤ラベルの複雑な香りには、強い新樽の木の香りに負けないパワフルな果実香、円熟した芳しさ、何とも言い表せない魅力が詰まっています。

        一日ぐらいは平気でピークを保ち続けるので、その体力にはいつも驚かされます。

         

         

        やりすぎは禁物?

        グラスをぐるぐる回すスワリングは、香りがグラスの中に立ちこもるので、香りを嗅ぎやすい反面、ワインにとっては短距離走を何本も走らされるようなものです。

         

         

        ソムリエがテイスティングで何度も回したりエアレーションをするのは、わざとワインの酸化を促して、栓を開けてからどれくらいで

        美味しくなって、どれくらいで味が落ちてくるのかを見るためです。

         

        また、口の中では空気に触れさせると同時に、吸った空気が鼻から抜ける時の戻り香を確認しているのです。

        試飲会場で何百本もあるワインを全部飲んで戻り香を確認していたら、いくらお酒に強い人でもチェックしきれませんし、後半は酔っ払ってしまって仕事になりませんからね。

         

        これらの飲み方は、ワインを短時間で知るためにしている作業で、

        決して美味しく楽しく飲むためではないのです。見た目にもあまりエレガントではありませんので、レストランなどでは、せいぜい2、3回軽く回す程度にとどめておきましょう。

         

        素晴らしいディナーのひと時は、短距離走ではなくウォーキングのように、長くゆっくりとうつろいゆく香りの変化も楽しみたいものです。

         

         

        道上の独り言

        口の中にワインを含み 空気を吸い込む aérationともoxygenerとも言いますが、この光景はワイン生産者が良く遣る事でフランスで一般にソムリエは遣りません。

        30分後、1時間後の状態を予測する、と言うことですが

        ワインテイステイングで見る光景は僕は知ってるぞ!と、

        フランス人になめられたくない為のはったりです。

        何ともこっけいな光景です。

         

        口に物が入っている時に「口を開ける」、「音を立てる」、西洋人が最も嫌う事です。

         

        よく、貧乏揺すりの如く グラスを回す方がいますが、1回廻せば後は変わりません。

         

         

         

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