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        ソムリエの追言  ㊴
        フロマージュでマリアージュ ~チーズとワインの美味しい関係~
        ________________________________________
        ワインを飲んでチーズを語ろう
        数ある料理との相性の中で、親しみやすくまた奥深いのがワインとチーズの組合せ。
        タイプや味わいによってその組合せは無限大に広がります。
        今回はそんな、ワインとチーズのお話です。
        
        チーズといえば、フランスではワインと共に紀元前から親しまれている食べ物の一つですが、注目すべきはその種類の多さ! その昔、フランスのシャルル・ド・ゴールが大統領就任後、「400種類もチーズを作っている国を、一つにまとめ上げるのは困難だ!」と言い、また第二次世界大戦中、ドイツに占領されたフランスについてイギリスのチャーチルは「400種類ものチーズを作った民族は決して滅びないだろう。」と語ったという逸話があります。
        
        フランスでは村の数だけチーズがあると言われ、それぞれがみんな自分の村のチーズが世界一だと主張して譲らないのです。こんな国を統治するのは、さぞかし大変な事でしょう。 日本の発酵食品のお味噌が全国で約100種類という事を考えると、その数の多さに驚きかされます。それだけチーズは、庶民の生活の根底に溶け込んでいるのです。
        
        
        AOC(Appellation d’Origine Controlee)から
        AOP(Appellation d'Origine Protegee)へ
        また日本ではあまり知られていませんが、フランス産のチーズにはワインと同じくAOC(原産地統制呼称)があります。伝統的な製法を守り質の高いチーズを消費者に分かりやすく伝える制度ですが、2008年にはフランス独自の制度であったAOCから、ヨーロッパ全体で共通の制度としてAOP(原産地名称保護)が誕生しました。
        

        EU諸国で共通の基準が設けられました。AOPへの道のりは険しく狭き門。フランス全土で作られる400種のうち、AOPを取得しているのは、わずかに46種類しかありません、全体の1割程度です。 AOPを取得するには、EUの原産地呼称委員会が定める非常に厳しい基準を満たさねばならず、生産地域はもちろん、家畜の飼育条件から搾乳方法、凝固方法、熟成方法と事細かく決められています。 
        
        
        チーズとワインの美味しい関係
        日本では、おつまみ感覚で単発的にワインやビールと共に食される事が多いのですが、フランスではチーズも立派なコース料理の一部。 メインデッシュが終わってデザートに移る前に供されます。 これには消化を助け、口の中に残った肉の臭みを消してくれる効果もあります。
        
        お店によっては、プラトー(大皿)やワゴンに沢山積まれたチーズを目の前で色々と説明しながら食べたい分量だけ切り分けてくれます。 せっかくなので、レストランでボトルを注文した際はメインデッシュで飲み干さずにチーズを食べる時のためにすこし残しておきたいところです、もしくはお酒が強い方はお代わりしましょう!飲みきれずに残ってしまったら、持って帰れば良いのです。 
        
        チーズとワインの組合せで不思議なのが、そのチーズが作られた生産地と同じ地方のワインがよく合う場合が多いという事。 
        地方のワインとチーズで有名な組合せを挙げれば、シャンパーニュ地方でつくられるシャウルス(Chaource)という白カビチーズとシャンパーニュ(Champagne)。 
        名前の由来は生産される街の名前からきています。街の紋章でもある、シャ(猫)とウルス(熊)がラベルには描かれ、”白いビロード”と表現される真っ白な雪に覆われたような美しいチーズは、少し芯の残る粉吹き芋のようなほくほくとした食感と、シャンパーニュの心地良い飲み口が絶妙のハーモニーを奏でます。 
        

        白カビで有名なカマンベールよりも深いこくがあるので、シャルドネ主体の繊細なタイプよりも、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエを主体とした力強いシャンパーニュの方が、このチーズにはよく合います。
        
        当店のシャンパーニュ・ジョヴェール・ジラルダン(成田空港内エールフランス航空ラウンジのワインに選ばれており、ファーストクラスの方達だけに提供されています。また、シンガポールエアラインのファーストクラスの機内でもラベルは違いますが中身が同じものが提供されています)との相性も抜群で、ジラルダンのしっかりとしたコクが、シャウルスの濃厚な味わいを良い意味で軽やかに、しかし余韻は2倍も3倍も長く美味しく感じさせてくれます。
        シャウルスをスーパーや百貨店などで見かけたら是非お試しください! 
        
        チーズの表面を塩水やマール(ワインを搾ったブドウカスから作られる蒸留酒)で洗って熟成を進めたものはウォッシュタイプ(Wash type)と呼ばれます。ブルゴーニュには、その名もズバリ”シャンベルタンの友達”という面白い名前のウォッシュチーズも存在します。
        
        ラミ・デュ・シャンベルタン(L'ami du Chambertin) いかにもフランス人らしいユーモア溢れる名前のこのチーズは、ブルゴーニュワインの銘壌地ジュブレ・シャンベルタン村で生産されています。マールで洗われた表面はオレンジ色に変色し、ぬるぬるしています。
        
        個性的で強烈な刺激臭を放っていますが、口にするととろけるような口当たりと甘いミルクの味、熟成したタンパク質の旨味が重なりあい、通好みの非常に濃厚なチーズです。ぜひとも、年代物のシャンべルタンと試してみたい組合せですね。 
        

        ただし、極端に産地との組合せや有名な(高級な)チーズとワインにこだわる必要はないと思います。スーパーで売っているモッツァレラチーズ(イタリア産)とトマト(千葉県産)のカプレーゼ。これにシャトー・ラモット・ロゼ(フランス産、こちらも成田空港内エールフランス航空のファーストクラス・ビジネスクラスラウンジで採用されていた本格派ロゼです)を合わせるのが、最近の私のお気に入りです、週一回は食べています。トマトの少し青臭い香りと鉄っぽいミネラル感、モッツァレラチーズのやわらかいコクとミルクの香りが、ラモット・ロゼの透明感とコクのある味わいにとてもよく合います。 産地はバラバラですが、手軽でお薦めです!!
        
        では、肝心のボルドーの赤ワインにはどんなチーズが合うのか!? 
        
        道上曰く、「美味いボルドーはどんなチーズにも合う!」との事ですが、 私個人的には、ハードやセミハードの凝縮したミルクの風味、熟成による濃厚な旨み、グルタミン酸の結晶(パルメザンなどのシャリシャリした白い部分)と合わせた時に、ワインから感じられる奥ゆかしい甘み、このなんとも言えない蠱惑的な魅力が一番の組合せだと思います。 
        
        フランスの南西部、スペインに程近いピレネー地方で作られるナポレオンという名のセミハードチーズ。名前の由来はボナポルトではなく、この地方にある「ナポレオンの鼻」と呼ばれる山に由来しています。 熟成による、深いコクと旨みのある味わい、羊乳特有の野性味あふれる独特の風味が特徴です。薄くスライスすると食感も心地良く、サラダや冷菜にも活用できます。 
        
        MICHIGAMIワインと合わせるなら心地良い酸味が特徴のシャトー・ラ・ジョンカード白ラベル、コクと樽の風味がある白ワイン、キュヴェ・スペシャルLがお薦めです。 またスイスのハードタイプで、アルプス山脈でのびのびと育った牛のミルクから作るシロネというチーズは、18ヶ月以上長期熟成されたハードチーズならではの、しっかりとした塩味とコク、熟成によるスパイシーさと心地良い苦味を感じられます。
        
        噛めば噛むほど旨みの余韻が残る。そしてこの余韻がまた、ワインとよく合うのです。 こちらはナポレオンよりも熟成が長くコクも強いので、ワインもより深みのあるジョンカード黒ラベル。または、ナッツのような香ばしい香りとぴりっとスパイシーな塩味は、先ほど紹介したシャンパーニュ・ジョヴェール・ジラルダンと見事にマッチします、この組合せはクセになります! 
        
        ワインもチーズも、ともに紀元前から人間と自然が造り上げた産物として人々に親しまれ、生産者の情熱と努力によって今日の名声を得てきました。遥か遠い昔の、自然と人間のドラマに想いを馳せながら、今夜はワインとチーズで乾杯! 
        
        
        道上の独り言
        ディナーに招待された時、たくさんチーズを食べるのは問題ありません。 
        しかし、場合によってチーズのおかわりはヨーロッパでは大変失礼にあたります。
        「今日の食事は量が少なかった。」という意味になるからです。
        
        
        
        

        【 道上 雄峰 】
        幼年時代フランス・ボルドーで育つ。 
        当時日本のワインが余りにもコストパフォーマンスが悪く憤りを感じ、自身での輸入販売を開始。
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